あの大胆で甘酸っぱい校外学習から一夜が明け、またいつもの賑やかな日常がやってきた。
昼休み。教室の陽だまりの中で、萌華はスマートフォンの画面を指で滑らせながら、声を弾ませてはしゃいでいた。
「これいーじゃん! あー、ここのパフェほんとおいしかったよねー!」
画面に映っているのは、校外学習の自由行動のときに萌華たちが食べた色鮮やかなスイーツの写真だ。美優もその隣で、楽しそうに笑う親友の姿を見つめながらニコッと微笑んだ。
「うん、本当に楽しかったね」
萌華が見せてくれる写メを覗き込み、二人で和やかに笑い合っていた、その時だった。
「何々? 何の写真見てんの?」
背後から、聞き慣れた爽やかな声が降ってきた。
振り返ると、そこにはいつの間にか二人の席へとやってきた優希が、悪戯っぽく目を細めて立っていた。
「あ、っ……!」
不意の登場に、美優の心臓がドクンと大きく跳ね上がる。水族館での記憶が、鮮烈に脳裏をよぎった。
「あ、えっと……校外学習の写真を、見てたの」
美優は激しい動揺を隠すように、少しよそよそしい声を出してしまう。どうしても優希の顔をまっすぐ見ることができず、泳いだ視線をスマートフォンの画面へと落とした。
そんな美優の分かりやすすぎる反応を見て、優希は少しニヤリと不敵に笑った。そして、いとおしそうに目を細めると、美優の頭の上にぽんと手を置いた。
「はは、何照れてんだよ。可愛いすぎか」
そう言って、優希は美優の髪をくしゃっと優しく撫で回す。
彼の大きな手のひらから伝わる確かな体温に、美優の顔は一気に沸騰した。
「あ、ちょっと……! 優希くんっ」
髪を直しながら、耳まで真っ赤にして抗議する美優。
そんな二人の甘い空気を特等席で眺めていた萌華は、わざとらしくため息をつくと、肘をついてジロジロと二人を見つめた。
「ちょっとぉ、私の目の前でいちゃつかないでくれますー?」
ニヤニヤとした笑みを浮かべ、容赦なくいじってくる親友。その言葉が決定打となり、美優の恥ずかしさは限界を迎えた。
「い、いちゃついてないから……っ! もう、ちょっとジュース買ってくる!」
美優は真っ赤になった顔を隠すように立ち上がると、萌華と優希から逃げるように、大慌てで教室を飛び出していった。
「あ、え、ちょっと待ってよ美優!」
突然の猛ダッシュに、優希は一瞬きょとんと目を見開いて驚いたものの、すぐに楽しげな苦笑いを浮かべて美優の後を追いかけた。
慌ただしく閉まった教室のドアの向こう、二人の足音が廊下に響いていく。
それを見送った萌華は、「もー、ごちそうさまなんだから〜!」と呆れつつも、嬉しそうにパフェの写真を眺め直すのだった。



