優希の吐露した言葉が、美優の胸の奥に深く、重く突き刺さる。
今まで美優がそうだったように。美優もかつて、伊澄先生との間にあった『完璧な世界』を信じていた、あの頃。
けれど、そんな美しいだけの完璧な世界なんてどこにも存在しないのだと、あまりにも残酷な形で分からされた。深く傷ついて、それでも必死に立ち上がって。自分が今、本当に求めているものが何なのか、向かうべき先がどこなのかは、まだ何も見えてはいないけれど。
(でも……優希くんといると……)
頑なに、硬く閉ざし続けていた美優の心のドアが、彼の言葉によって、今、静かに開きつつあるのを感じていた。
優希はゆっくりと手を伸ばし、美優の頬に愛おしそうに片手を添えた。水族館の青い光が、彼の真剣な眼差しをまっすぐに映し出している。
「俺は、はなから美優が完璧だなんて思ってないよ。美優だって傷ついたり、悲しかったり、嬉しかったりするだろ?」
優希の声は、どこまでも優しく、そして確信に満ちていた。
「他の誰かが言う『完璧な人間』なんかじゃない。感情がないなんて、絶対に嘘だよ。……俺たちはこれから先、どう足掻いたって不完全な生き物なんだ。でもね、それが、人間の綺麗な在り方なんだよ」
その瞬間、美優の中で何かが静かに弾けた。
今まで付き合ってきた男の子たちは、みんな美優に都合のいい『理想』を押し付け、思い通りにならないと冷たいと責めて去っていった。けれど、優希は違う。彼は、美優の不完全さも、傷も、臆病なところも、その全てを隠さずにいる「そのままの美優」を、初めて丸ごと受け入れてくれている。
「優希くん……」
視界がじわじわと滲んでいく。
初めて心から救われたような感覚に包まれながら、美優は優希の瞳を、ただじっと見つめ返していた。



