「ん? どうかした?」
美優の小さな呟きに反応して、優希が不思議そうに振り返った。
美優は小さく瞳を揺らしながら、水槽の青い光に照らされる優希をじっと見つめる。そして、付き合い始めてからずっと、胸の奥で燻っていた一番大きな疑問を、思い切って言葉にした。
「優希くんはさ……、何で私を選んでくれたの?」
「え……?」
予想外の質問だったのか、優希は少しだけ目を見開いた。それから、頭上の魚たちを見上げるようにして少し考え込み、やがて困ったような、だけどひどく愛おしそうな笑顔を浮かべた。
「んー、そうだなぁ……今は訳あって、ちゃんとは言えないんだけど……。でも、俺はずっと、美優に惹かれてたんだ」
「ずっと……?」
優希の真っ直ぐな言葉を受け止めながら、美優は初めて、誰にも言えなかった自分の胸の内をゆっくりと開き始めた。
「私ね、……噂とかで知ってるかと思うんだけど…今まで付き合ってきた男の子たちに、すぐに振られたり別れたりしてて……。感情がないとか、冷たいとか、色々言われてきたの」
水族館の喧騒が、今の二人の間だけは遠くへ消えていくようだった。美優はぎゅっと自分の手を握りしめ、言葉を紡ぐ。
「優希くんは、クラスで人気だし、誰にでも優しい。頭もいいし、スポーツもできて……私から見たら、完璧に近い存在だと思うの。そんな優希くんに、私は何もしてあげられないし、側にいてもいいのかなって……。だから、何で私なんだろうって、ずっと思ってて――」
自信のなさから震えそうになる声を必死に堪えながら、必死に自分の想いを伝えていた、その時だった。
「っ……わ、!」
言葉の途中で、美優の身体が強い力で引き寄せられた。
気づいた時には、優希の逞しい腕の中にすっぽりと収まり、彼の胸に顔を埋める形でぎゅっと抱きしめられていた。
お互いの体温が、服を通してダイレクトに伝わってくる。優希の大きな手が美優の背中に回され、まるで彼女の不安を全て包み込むかのように、優しく、だけど決して離さないという強い意志を込めて、その身体を強く抱きしめていた。



