"相良 優希"―――。それが、美優の目の前で意地悪に微笑む彼の名前だ。
これまでも付き合っていた男子達の中で、色々な会話を重ねてきたはずだった。けれど、いざ彼の名前を下の名前で呼ぶとなると、なんだかどうしてもぎこちなくなってしまいそうで、美優は口を結んでしまう。
相良は、そんな美優の分かりやすい戸惑いを見逃さなかった。さらに楽しそうな笑みを深めると、美優の目をじっと覗き込んでくる。
「ね、俺の名前呼んでみて? ――“美優”」
「っ……!」
不意に、低く甘い声で自分の名前を呼ばれ、美優の瞳が激しく揺れた。心臓が跳ね上がるような衝撃に、胸の奥がキュッと締め付けられる。
「えっと……」
美優は視線を泳がせながら、少し恥ずかしそうに小声で呟いた。言葉に詰まる美優に対し、相良は「ん?」と、わざとらしく首をかしげて次の言葉を促してくる。
(な、なんか……相良くん、やっぱりすっごく意地悪じゃない……!?)
完全に彼のペースに巻き込まれている。そう自覚しながらも、美優の心臓はソワソワと落ち着きないリズムを刻み続けていた。しかしここで逃げ出すわけにもいかない。
美優はぎゅっと拳を握りしめ、真っ赤な顔のまま、意を決して小さな声を絞り出した。
「ゆ、優希くん……?」
言い終えた瞬間、恥ずかしさのあまり破裂しそうになりながら、美優は上目遣いで優希の反応を窺った。



