顔を真っ赤にしてそっぽを向く美優の反応が、相良にとってはたまらなく愛おしく、そして楽しいのだろう。
「今さら気が付いた?」
相良はクスッと含み笑いを漏らしながら、さらに顔を近づけて囁いた。
「俺は姫野のためだったら、意地悪にもなるし、優しくもなれるよ?」
その言葉が、美優の耳の奥に甘く溶けていく。美優の心の中は、今までにないほど激しくザワザワと波立っていた。彼の言葉の意図を測りかねて、けれど胸の鼓動はどんどん大きくなっていく。
すると相良は、からかうような声音から一転、ひどく熱のこもった眼差しを美優に向けた。
「姫野が俺の事で、色々な表情を見せてくれてると思うと嬉しいよ」
そう言いながら、相良はそっと手を伸ばした。壊れ物を扱うような、驚くほど優しい手つきで、美優の柔らかい頬に指先を触れる。
「っ……」
美優の身体がピクリと敏感に反応した。
触れられた頬から、じんわりと熱が広がっていく。心臓の音が少しずつ、だけど確実に早くなっていく。美優はその確かな高鳴りから、必死に気づかないふりをした。気付いてしまえば、本当に彼に溺れてしまいそうで怖かった。
「……相良くん、私っ……」
上目遣いで相良を見つめ、少し恥ずかしそうに声を絞り出す。そんな彼女の様子を、相良は満足そうに見つめていた。
「はは、照れてる?」
相良は嬉しそうに笑うと、名残惜しそうに、ゆっくりと美優の頬から手を離した。そして、ふと思いついたかのように、悪戯っぽい光を瞳に宿して美優を見た。
「っていうか、せっかく付き合ってるんだし――今度は下の名前で呼ぶ練習しよっか」
唐突に切り出された新しい提案に、美優は再び小さく息を呑んだ。



