相良は終始にこにこと楽しそうに笑っていて、その表情を見つめるたびに、美優の胸の奥が小さく高鳴った。
(あれ……、私なんだか、楽しいって思ってる……?)
先日付き合ったばかりの人気な彼は、今は自分の目の前で笑っている。その事実に今さら気づき、湧き上がるドキドキをごまかすように、美優は小さく首を横に振って冷たいアイスを口に運んだ。
すると、相良が会話の途中でちらりと美優の顔を見た。その視線が、美優の唇のあたりでぴたりと止まる。
「ん? どうしたの? 相良くん」
不思議に思った美優が、スプーンをくわえたまま小首をかしげる。
相良は何も言わず、少しだけ目線を下げた。そして、美優が息を呑む暇もないほど自然に顔を近づけると、美優の口の端を――ペロッと、熱い舌先でなめとった。
「え……っ」
いきなりの出来事に、美優は大きな目を見開いたまま、完全に身体が固まってしまう。至近距離で見つめ合う形になり、頭の中が真っ白になった。
そんな美優の反応を特等席で眺めながら、相良は自分の唇をペロッと動かし、満足げにニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「ん? アイスついてたから」
悪びれもせず、むしろ楽しそうにそう告げる相良。対する美優は、視線が激しく揺れ、動揺を隠しきれない。あまりの衝撃に言葉を失い、固まり続けていると、相良はふっと表情を緩めて声をあげた。
「ははっ、姫野、もしかしてキスされるかと思った?」
楽しげに肩を揺らして笑う相良を見て、美優は一気に顔へ熱が上がってくるのを感じた。耳まで真っ赤になっていくのが自分でもよく分かる。
「っ……」
これ以上彼の顔を見ていられなくなり、美優は勢いよく顔を逸らした。せっかくのアイスの冷たさも、今の熱さを冷ます役には立ちそうにない。
「っ、相良くんて……何だか意地悪だね」
消え入りそうな声で、精一杯の抗議を口にした。



