不完全な僕達は。【完結】



柔らかな日差しが、公園の並木の間からきらきらと降り注いでいた。
 心地よい風が通り抜ける木陰のベンチに、相良と美優は並んで腰掛けている。二人の手には、先ほど近くのスタンドで買ったばかりのアイスクリームが握られていた。

「あーうま!チョコレート最高〜。……あ、姫野は?」

 相良は口元に少しだけ茶色いアイスをつけながら、隣に座る美優の顔を覗き込んできた。
 その無邪気な笑顔に、美優は自分の手元にある爽やかな薄緑色のアイスを少し持ち上げて見せる。

「私はチョコミント。美味しいよ」

 ふふ、と美優が優しく微笑むと、相良は意外そうな顔をして美優のアイスをじっと見つめた。

「ミントかぁ……。ね、一口ちょうだい」

 そう言うが早いか、相良は美優の方へ体を寄せ、小さく口を開けて待機し始めた。まるで雛鳥のようなその仕草に、美優は思わず目を丸くする。

「え?!」

 驚きのあまり、美優は大きく目を見開いた。自分のスプーンで、そのまま相良に食べさせるということなのだろうか。予期せぬ状況に頭が真っ白になる美優を見て、相良はいたずらっぽく、楽しそうに声を上げて笑った。

「はは、ここは姫野が食べさせてよ」

 冗談めかした口調ではあったけれど、その瞳はまっすぐに美優を捉えていて、どこか本気を含んでいるようにも見えた。
 途端に、美優の胸がドクンと大きく跳ねる。なんだか急に猛烈に恥ずかしくなって、相良の顔をまともに見られなくなってしまった。

「もう……」

 美優は小さく呟きながら、恥ずかしさを隠すように少しだけ視線を斜め下へとそらした。けれど、差し出されたスプーンを持つ手は拒むことをせず、ゆっくりと、慎重に相良の口元へと運ばれていく。
 近づくにつれて、自分の心臓の音がどんどん大きくなっていくのが分かった。じわじわと顔に熱がこもり、耳のあたりまで熱くなっていくのを感じる。

 きれいに整った相良の唇が開き、美優の差し出したチョコミントのアイスをそっと迎え入れた。

「うまー!」

 相良は目を輝かせ、大満足といった様子で声を上げた。そして、少しだけ耳を赤くしながら、照れくさそうに頭を掻いて笑う。

「やっぱり、姫野からもらったアイスは格別にうまいね」

 そう言ってはにかむ相良の笑顔があまりにも眩しくて、美優はさらに赤くなった顔を隠すように、残りのチョコミントアイスを一気に口へと運んだ。冷たいはずのアイスなのに、胸の奥はいつまでも温かい熱に包まれていた。