「キーンコーンカーンコーン……」
放課後を告げるチャイナが鳴り響くと、教室は一気に賑やかさを取り戻した。
美優が机の上の教科書を鞄にしまっていると、目の前にすっと人影が立つ。見上げると、そこには彼氏になったばかりの相良が立っていた。
「姫野、一緒に帰ろ」
相良は、夕暮れ時の教室に映えるような爽やかな笑顔を浮かべて声をかけてきた。突然の誘いに、美優は動きを止める。
(相良くんと、一緒に……?そっか!あーでも萌華がいるけどどうしよう…)
どう返事をしていいか分からず美優が戸惑っていると、隣の席から凄まじい視線を感じた。
親友の萌華だった。
萌華はこれ以上ないほど目をキラキラと輝かせ、美優に向かって親指をぐっと立てると、バッチリとウインクを決めてみせた。その表情は「大チャンス到来!」と雄弁に物語っている。
「私、これから委員会があるから! 二人とも、放課後デートしてきなよ!」
萌華はそれだけを勢いよく言い残すと、美優が引き留める隙も与えずに教室を飛び去っていった。
一人残された美優は、呆気にとられながらも思わず苦笑いしてしまう。そして、少し恥ずかしさを隠しながら、待たせてしまっている相良を見上げた。
「……じゃあ、帰ろっか。相良くん」
美優が少しはにかんで笑うと、相良の表情がぱっと明るくなった。
校門を出て、オレンジ色に染まり始めた通学路を二人で並んで歩く。いつもより少しゆっくりとした歩調の中、相良が楽しそうに美優を覗き込んできた。
「ね、せっかくだし、どこかで甘い物でも食べにいこうよ」
「えっ……」
予想していなかった提案に、美優は少し目を見開いた。驚きとともに、胸の奥がトクンと小さく跳ねる。相良の真っ直ぐな視線に気恥ずかしさを覚えながらも、美優は小さく頷いた。
「うん、そうだね。いこう」
嬉しさを隠しきれない美優の返事に、相良はさらに優しい笑顔を浮かべるのだった。



