昼休みになり、美優と萌華は購買で買ったパンを片手に、いつもの屋上へと向かった。
フェンス越しに心地よい風が吹き抜ける。萌華は自分のメロンパンにかじりつくと、すぐに待ちきれないといった様子で美優に詰め寄ってきた。
「で? 白状しなさい、美優ちゃーん」
探るような、けれど好奇心に満ちた目で迫ってくる。美優は仕方がないなと苦笑いしながら、図書室で相良に助けられたこと、資料室でのハプニング、そして放課後の教室で彼から告白された一連の経緯を、包み隠さず話した。
それを聞いた萌華は、持っていたパンを落としそうになるほど目を見開いた。そして、次の瞬間には顔をこれ以上ないほどキラキラと輝かせ、屋上の真ん中ではしゃぎだした。
「何それ、何それーっ!? ってことは、相良くん最初から美優狙いだったってことじゃん! キャー!! 何その少女漫画みたいな展開! 最高すぎるんだけど!」
「ちょっと萌華、はしゃぎすぎ。声が大きいってば」
周囲を気にして小さく笑う美優。けれど、萌華の興奮は全く収まる気配がない。萌華は急にピタリと動きを止めると、今度はじとーっとした生温かい視線を美優に向けてきた。
「で? 美優は結局、相良くんのことどう思ってるのよ?」
確信に迫る親友の問いかけ。美優は一瞬だけ視線を泳がせ、少し困ったように指先で自分の頬をポリポリとかいた。
「……え? 私? うーん、まだよくわからないんだよね」
いつもの冷徹な突き放しではない、どこか歯切れの悪い美優の返答。
それを見た萌華は、天を仰いで大げさにため息をついた。
「何それ! 相良くんが可哀想すぎるんだけど! もー、そんなに格好良くて優しい男の子、他にいないよ!? 早く好きになっちゃいなよ!」
ヤケクソ気味に両手を振り回して急かす萌華の姿が、美優にはなんだかおかしくて、自然と声を出して笑ってしまう。
「はは、萌華は無茶苦茶すぎだよ」
笑いながら、美優はそっと胸に手を当てた。
「俺が姫野のこと、これから先嫌いになるなんてこと、絶対にないから」と、夕暮れの教室で真っ直ぐに見つめてきた相良の瞳が、再び鮮烈に脳裏をよぎる。
これまでの男子たちのように、自分の容姿とステータスだけに群がってきた人たちとは、やっぱり何かが決定的に違う。
彼の前では、自分を必死に守ってきた仮面が、驚くほど簡単に剥がされてしまう。それが少しだけ怖くて、でも、どうしようもないくらいに温かかった。
(……でも、相良くんとだったら)
中学時代の傷に怯えて、誰のことも好きにならないと心を閉ざしていた美優。
けれど、あの太陽のように真っ直ぐな相良と向き合っていく未来なら、そんなに悪くないかもしれない――。
雲一つない青空を見上げながら、美優の凍りついていた心には、少しずつ変化が起き始めていた。



