「えぇっ!?……また別れたの!?」
昼休みのガヤガヤとした喧騒を切り裂いて、三波 萌華のすっ頓狂な声が教室に響き渡った。
クラスメイトたちの視線が一瞬こちらに集まる。
だけど、当の本事者である私は、澄ました顔でスマホの画面をスクロールしたまま、「うん」とだけ生返事を返した。
萌華は、その丸くてキラキラした瞳をこれでもかというくらいに見開いて、私の顔をじっと覗き込んでくる。
あまりにも動じていない私の表情をしばらく呆然と見つめた後、彼女は盛大なため息をついて、自分の机に突っ伏した。
「いや、反応薄っす!嘘でしょ!?」
「そんな大声出さなくても聞こえてるよ、萌華」
「美優ちゃーん?これ、自分の話題だよ?なんかないの?こう、ギブアンドテイクみたいな感情の起伏は!?」
机に顎を乗せ、恨めしそうな目を向けてくる親友に、私はクスりと小さく笑った。
チョコレートブラウンのワンレンボブが揺れて、金色のインナーカラーが陽の光を弾く。
「んー?それ、言葉の使い方合ってる?」
「合ってるとかどうでもいいの! ……はぁ、あんたさ、いつか刺されるよ。マジで」
心底呆れ果てたというように首を振る萌華。
私は窓の外、遠くの青空を見つめながら、トントンと指先で頬杖をついた。
「んー。でも、振られたのは私の方だからなぁ…」
そうなのだ。私は自分から人を振ったことがない。いつも、告白されて、なんとなく付き合って、そして最後は決まって相手から「もう無理」と三行半を突きつけられる。
「てかさ、それよ!美優って顔もスタイルも最高だし、成績優秀でスポーツ万能で、学年の男子から死ぬほどモテモテなわけじゃん?なのに、なんで付き合うと毎回毎回振られんのよ……。意味わかんないんだけど!?」
萌華はお手上げとばかりに、両手を大げさにひらひらと振ってみせる。
(そんなの、私だって知りたがってまーす)
私は心の中で、ぺろっと可愛いらしくベロを出した。
もちろん、本当の理由は薄々気づいている。私の心が、いつだって上の空だからだ。
誰と付き合っても、私の心の中の「特別席」には、数年前に失恋した伊澄先生の影が居座り続けている。相手の男の子がどれだけ熱い言葉をくれても、私の心は1ミリも動いていないのだ。
器だけの恋。それに気づいた男子たちは、みんな寂しそうな、あるいは憤慨した顔をして、私の元を去っていくのだ。
「まぁ、私には恋愛の才能がないんだよ、きっと」
スマホをスカートのポケットにしまい、他人事のように微笑む。
どうせ、恋なんて、いつだって不完全な紛い物。
そんな風に思っていた。



