―――世の中に、"完璧"な存在なんて無いに等しい。
少なくとも、私、姫野 美優は心の底からそう思っている。
たとえば、どんなに美しく咲き誇る花だって、いつかは無惨に枯れて土に還る。もしもその花が、葉と同じただの緑色をしていたら、虫や蝶だって蜜を吸いに行こうとはしないはずだ。綺麗に着飾って、甘い匂いを振りまくから、みんな騙されて群がる。
それだけのこと。
テレビの向こうで微笑むあの有名女優だって、裏では不倫のスキャンダルでてんてこまい。
国民の信頼を一身に背負っていたはずの議員だって、次の日には不祥事のニュースで街中をもちきりにさせている。
人間なんて、みんな"不完全"の塊だ。
いくら血の滲むような努力をしたって、いくら高価な服で綺麗に着飾ってみせたって、剥がせば必ず、醜い欠点や嘘が隠されている。
そんな風に世界を冷めた目で見つめる私は、捻くれているだろうか。
それとも、ただ冷めているだけだろうか。
でも、私だって最初からこんな風だったわけじゃない。
「これから」が、そうなってしまっただけだ。
どれほど時代を席巻し、多くの人に愛された大人気小説の単行本ですら、時が経てばページは茶色く色褪せ、本棚の隅で埃を被る古い本に変わってしまう。
私の心も、あの本と同じ。



