制服に守られている僕達の特権

鈴音の、今はまだ膨らみのないお腹を見つめてみる。
私と同じ制服を纏ってお腹に手を添える、まるで聖母マリアのような表情の鈴音。
この身体に、鈴音と赤ちゃん、二人分の命があるなんて信じられない。

「おじさんとおばさんには」

「もうね、話してるの」

「彼と二人で?」

「うん。お母さんは、命より大事なことなんて無いって。お父さんは当然殴りそうな勢いで彼にブチ切れてた。お母さんが鈴音のお腹に障るからやめてください!って怒鳴り返しててさ。お父さんはなんにも悪くないのに、私を産んだお母さんを見てたら、ああ…母親だなあなんて思ったりしてね」

遠い昔のことを話しているみたいに懐かしむような表情で目を細めて俯く鈴音。
まるで自分が死ぬ瞬間みたいに、鈴音の今日一日の行動が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。

「赤ちゃんを守るために体育も見学したんだね」

「そうだよ」

「先生は?」

「先週。両親と一緒に学校に報告に来たの。担任と二年生に関わってる先生達、みんな知ってるよ」

「もしかして保健の先生も?」

「うん。だから休ませてもらったの」

そうか。事実を知っていて、鈴音が本当に大丈夫じゃなさそうな時にはそばに居てあげてと言ったのかと腑に落ちた。

「退学するって…言ったの」

「うん」

「休学じゃだめなの」

「私はね、本当は。本当に、周りが思ってくれているほど完璧じゃないの。休学して復学して、育児との両立を立派に全うできる人もいる。でも私にはできないって思った。完璧な親なんて居ないのかもしれないけど、私は私ができる限りの全力でこの命と向き合おうって、自分を知ってるからこそ決断したの」

「そっか。いつ?」

「キリよく終業式で」

「もうだね。突然過ぎるなぁ。運動会、クラスリレー負けちゃうよ」

「そっちの心配?」

「高校生の大事な行事なんてそんなもんなの。ねぇ、何ヶ月?」

「もう三ヶ月だって。春にはここに居てくれてたのね。全然気づかなかった」

鈴音のお腹から鈴音の体温は感じるけれど、やっぱりそれ以上の鼓動なんて感じない。
全部が嘘だと言われたらそうかと思えるほどに。