「おはっ!シュウのツイ見た?」
「見た見た!マジ、眼福。朝から見れたし、今日は生きてける……わ…」
「どした?」
「あれ!シュウと高良くん!」
「え!マジだ……!イケメン二人と同じ高校なの、幸せ〜」
何か話していた女子たちが、こちらをチラチラと見る。原因は多分、こいつ。
「柊、久しぶりの学校だけど、大丈夫?」
呑気に話しかけてくるこの男、梅野高良(うめのたから)。生まれた時から一緒にいる、僕の幼馴染。
「うん。久しぶりって言っても、一週間ぶりだし大丈夫だよ」
「そう?何かあったらすぐ呼んでよ?心配だから」
「心配?何が?」
「モデルやってるんだよ?柊を狙う輩がいるかも」
僕は高校生でもあるが、モデルの仕事もしている。
高校一年の時、高良と渋谷で遊んでいたら、二人ともスカウトされた。高良は断っていたが、僕は押しに弱くてモデルになってしまった。
「そんな人いないよ……しかもモデルって、服を見せてるんだよ?僕を見てるんじゃないからね。まぁ…僕は高良の方が心配だけど」
高良は、昔からドジな僕のことを気にかけてくれる。
だが、高良は自分の心配をしたほうがいい。
「俺?……どんなことが?」
「んー…なんか、女の子たちが失神しちゃうんじゃないかなって」
「失神……柊が?」
「女の子たちを!」
高良は、自身の顔の良さをわかっていない。過去にメロメロになる男がいたくらいだ。
「じゃあ、お昼に迎えに行くからね」
「いや、今日は僕から行く」
「そう?わかった。待ってるね」
184cmの僕よりも背が高くて、顔がいい高良は廊下を歩くだけで、周囲の目を奪う。
いつも前を歩く高良を、後ろから見ていたらわかる。周りの生徒たちが、高良のことを二度見しているのが。
僕をクラスまで送ってくれた高良は、「じゃあまた」と言って自分のクラスへ向かう。
「あ…高良」
「どうした?」
すぐに止まって振り向いてくれる高良は、やはり優しい。彼女ができたら、いわゆる"スパダリ"になるだろう。
「今日と明日はオフだから、どっちか暇だったら遊ぼ」
「あー…」
高良はスマホを取り出して、予定を確認する。スマホケースは五年前の誕生日に、僕がプレゼントした物を使ってくれている。
「大丈夫だよ。どっちも遊ぼ」
「どっちもは、迷惑になるでしょ?高良も友達いるだろうし…」
「いや。暇だったから、大丈夫」
「そう?……なら、遊ぼ」
「うん。昼にね」
高良を見送って、席に着く。
「よぉ〜元気だった?一週間ぶりか。ツイ見たよ」
「元気元気。ツイ見てくれてありがとね。服、シルエットいいよね」
声をかけてくれたのは、花宮麻実(はなみやあさみ)。中学から一緒で、高良とも仲良くしている。服が好きらしく、僕よりも服に詳しい。
「そういえば、これ。今日貰ったやつ。柊先輩に渡してくださいって、後輩から」
「あぁ…よく知らない子とは付き合えないけど、返事しないとかな?」
「いや、この子は返事なくてもいいって言ってたよ」
僕がいない間に、高良や麻実に手紙を渡して告白してくる女の子がいる。
モデルでもあるため、気持ちには応えられないが、渡してくれた気持ちには応えたい。
「高良からは、受け取った?」
「いや……何も」
「マジか。昼にでも渡すのかな」
「多分、夜にでも渡してくれるよ。あれから渡してくれるようになったし」
「ならいいけどな」
以前、高良は受け取った僕宛ての手紙を、勝手に捨てていたことがある。
高良曰く、
「柊は頑張ってモデルやってるのに、外見だけで好きって言うの嫌だった」
ということらしい。僕がやめるように言ったら、ちゃんと渡してくれるようになった。
「あ!今日、小テストだけど大丈夫か?」
「え……ダメかもしれない」
「あはは!そうだよな。とりあえず、これな」
そう言って、麻実はいつも通りまとめプリントを見せてくれる。
「ありがとうございます…!なんか、お礼しようか?」
「そうだな……今度遊ぼーぜ!」
「え、そんなのでいいの?てか、彼女とかいるんじゃ?」
「そんなのじゃないから!久しぶりに遊べるし、明(彼女)とは別の日にデートしてるから大丈夫なの」
確かに、モデルを始めてから高良とはよく遊ぶが、麻実とはあまり遊んでいない気がする。
「そっか…じゃあ、今日の放課後は?明日でもいいし。高良もいるけど」
「休みなの?部活オフだし今日がいい!明日は部活だから」
麻実は少し残念そうに言った。感情表現豊かな部分は、麻実のお母さんに似ている。
「確かに。麻実も部活なくて良かったよ。でも、明日って土曜でしょ?部活、大変だね…」
「そうなんだよ!大会近いからって、顧問がコート抑えたの」
麻実はサッカー部のエースだ。一番上手いから、嫌でも練習は参加しなければいけない。
「でも、麻実上手だし、顧問の先生も期待してるんじゃない?久しぶりに全国大会行けそうでさ」
「だからって……明との時間が無さすぎる!」
「はいはい。惚気はいいですからね〜」
──キーンコーンカーンコーン…
「あ…授業始まるな。小テスト、幸運を祈る」
「うん…」
***
「柊は高良と飯?」
「うん。高良の迎え行かなきゃ」
「そっか。手紙のこと言えよ」
「ちゃんと言うよ。後でね」
高良のクラスは、僕のクラスの隣。迎えに行くという距離でもないが、どちらかが迎えに行くのは決まりみたいなものだ。
高良のクラスを覗くと、高良はたくさんの女の子に囲まれていた。
(やっぱり…)
高良を迎えに行くと、いつも囲まれている。こういう時は、僕が助けなければいけない。
「高良〜お昼食べよ」
声をかけると、高良は勢いよく立ち上がり、向かってくる。
僕の腕を掴むと、
「走れ!」
と言うので、足が勝手に動く。走りながら振り向くと、女の子たちが「待って!」と呼びかけている。だが、高良は気にもせず走り、保健室に向かう。
「はぁはぁ…」
「急に走ってごめん。大丈夫?」
「うん…はぁはぁ……僕って運動不足だね」
「まぁ、忙しいし仕方ないよ。保健室入ろ」
「え、いいの?保健室の先生、いないって」
僕は、保健室に掛けられているホワイトボードに、"不在"の文字が書かれているのを指さす。
「あぁ、この時間は先生いないけど、使っていいんだよ。許可も貰ってるし」
高良は平然と保健室の扉を開き、僕を招き入れる。
「え、そうなの?許可なんて貰えるんだ」
「うん。いつもここでご飯食べてる。女の子たちがすごいから」
「学校側も、配慮してくれてるんだね。よかった」
「いや、俺じゃなくて柊に配慮しないとじゃない?」
高良は慣れたように、保健室の一番奥にあるベッドに腰を下ろす。
「なんで?」
「なんでって……柊はモデルだよ?自覚あるの?さっきだって、ほとんど柊を狙った女子が来てたんだし」
「ごめん…僕のせいで」
「あ…別に、柊が悪いんじゃないよ……おいで」
僕がしょんぼりすると、高良は優しく引き寄せて頭を撫でてくれる。
「本当に、柊はモテモテだから学校には、柊専用の教室作った方がいいと思う」
「ふふ…僕専用かぁ。なら、高良もだね。高良専用の教室」
「あはは…元気出た?」
僕の笑い声を聞いて安心したのか、高良は僕の顔を覗き込む。
「うん。元気だよ。ご飯、食べよ?」
「うん、食べよ!」
高良の隣に座って、弁当を広げて食べ始める。
「柊、今日遊んだら泊まってく?」
「あ、そうだ。今日の放課後は、麻実も一緒に遊んでもいい?」
断られたら、麻実に謝らないといけない。というか、そもそも二人に、交流があるのかわからない。
「麻実も一緒?まぁ…いいけど」
「良かった〜。今日の小テスト、助けてもらったからさ。お礼に何かするって言ったら、久しぶりに遊ぼって」
「そっか。久しぶりだね。三人で遊ぶの」
「うん!楽しみ〜」
高良は笑顔で答えてくれたので、一安心だ。
「明日は、二人だけだよね?」
「うん。麻実は部活だって。大変だよな〜サッカー部」
「部活か……大変だな。明日はどうする?何かしたいことあるの?」
高良は僕と遊ぶ時、いつも僕がしたいことを優先してくれる。たまには、高良のやりたいことを一緒にしたい。
「高良はしたいことないの?高良のしたいこと、一緒にしたい」
「………………いや…柊のしたいことが、俺のしたいことかな〜」
「えー…それじゃあ、なんかフェアじゃないよ」
「いいや?それが俺のしたいことだから、フェアだよ」
僕は高良が無理をしてないか窺うが、無理している時の笑顔ではない。
「無理してるなら、言ってよ?」
「無理してないよ。柊がやりたいこと言って」
「……久しぶりに、甘いもの食べたい」
モデル雑誌の撮影で、最近は食事制限をしていた。そのため、久しぶりに食べたいものを食べるのだ。
だが、甘いものなんて、子供っぽい気がして少し恥ずかしい。
「甘いもの……?珍しいね」
「…うん」
恥ずかしくて、隣にある高良の腕に顔面を埋める。
「………変わらないね。俺に甘えるの、好きでしょ?」
「いや、別に好きじゃない。ちょうどいい腕があったから」
僕は下に妹と弟がいるため、長男として甘えるのが下手だ。今だって、変なプライドが邪魔をして、ちゃんと甘えきれない。
「ほんと、甘えるのが好きなのを認めないとこも、変わらないね。」
何も言わないでいると、高良が「コレ見て」とスマホの画面を見せてくる。
「カフェ……え、家でいいよ?女の子の中に並ぶの、嫌でしょ?」
「ご褒美なんでしょ?食事制限、頑張ってたもんね」
「うん。ご褒美……一緒に行って、食べてくれるの?」
別に、一人で行こうと思えば行けるが、高良と一緒に過ごす時間を削ってまでは、行きたいとは思えない。
だけど、高良は人混みが得意ではない。嫌なら行かなくてもいい。
「行こっか。甘いもの、俺も久しぶりに食べたいから」
「ほんと?いいの?」
「うん、もちろん!他には何かしたいことないの?」
「えっとね〜…」
***
そこから僕は高良に甘えて、次々とやりたいことを挙げていった。
認めたくないが、僕は高良に甘えるのが大好きだ。
「じゃあ、明日は朝イチでカフェ行って、映画見て、昼食って、帰ってゲームね」
「うん。結局、僕がやりたいことばっかりになっちゃったね」
「俺も甘いの食べたかったし、映画見たかったし、柊とゲームしたいからいいの」
──キーンコーンカーンコーン…
「予鈴だし、戻ろっか」
「うん」
高良と一緒にクラスまで戻ると、女の子たちが「みつけた!」と言わんばかりに僕たちを囲む。
「どこ行ってたの?」
「話したかったのにぃ!」
「シュウくんって、今日の放課後空いてる?」
次々に放たれる言葉に、答える隙がなくて困ってしまう。高良を見るが、困っているような表情だ。
「柊〜!高良〜!」
声がして振り返ると、麻実が声をかけてくれた。
「女子〜まるでライオンの狩りだぞ?」
「うるさいわよ!麻実はボールと仲良くしてなさいよ!」
「あ!言ったな!」
麻実と女の子たちが言い争ってる中、高良に腕を引かれて女の子の群れから抜け出す。
「助かった…麻実、ナイス」
「本当に、良かったね。麻実いなかったら、教室戻れなかった」
時計を見ると、あと一分ほどで授業が始まる。僕は足早に
「また放課後!」
と言い残して、席に着く。
チャイムと同時に戻ってきた麻実が、僕の前の席に座って、話しかけてくる。
「な、大丈夫だった?」
「ほんとありがと。今日なんか奢る」
「マジ?助けた甲斐あったわ。てか、手紙のこと聞いたか?」
「あ…忘れてた」
今言われるまで、手紙の存在など忘れていた。放課後、ちゃんと聞かないとだ。
「今日、高良の家泊まるから、夜に聞くよ」
「泊まんのか……まぁ、気をつけろよ」
「見た見た!マジ、眼福。朝から見れたし、今日は生きてける……わ…」
「どした?」
「あれ!シュウと高良くん!」
「え!マジだ……!イケメン二人と同じ高校なの、幸せ〜」
何か話していた女子たちが、こちらをチラチラと見る。原因は多分、こいつ。
「柊、久しぶりの学校だけど、大丈夫?」
呑気に話しかけてくるこの男、梅野高良(うめのたから)。生まれた時から一緒にいる、僕の幼馴染。
「うん。久しぶりって言っても、一週間ぶりだし大丈夫だよ」
「そう?何かあったらすぐ呼んでよ?心配だから」
「心配?何が?」
「モデルやってるんだよ?柊を狙う輩がいるかも」
僕は高校生でもあるが、モデルの仕事もしている。
高校一年の時、高良と渋谷で遊んでいたら、二人ともスカウトされた。高良は断っていたが、僕は押しに弱くてモデルになってしまった。
「そんな人いないよ……しかもモデルって、服を見せてるんだよ?僕を見てるんじゃないからね。まぁ…僕は高良の方が心配だけど」
高良は、昔からドジな僕のことを気にかけてくれる。
だが、高良は自分の心配をしたほうがいい。
「俺?……どんなことが?」
「んー…なんか、女の子たちが失神しちゃうんじゃないかなって」
「失神……柊が?」
「女の子たちを!」
高良は、自身の顔の良さをわかっていない。過去にメロメロになる男がいたくらいだ。
「じゃあ、お昼に迎えに行くからね」
「いや、今日は僕から行く」
「そう?わかった。待ってるね」
184cmの僕よりも背が高くて、顔がいい高良は廊下を歩くだけで、周囲の目を奪う。
いつも前を歩く高良を、後ろから見ていたらわかる。周りの生徒たちが、高良のことを二度見しているのが。
僕をクラスまで送ってくれた高良は、「じゃあまた」と言って自分のクラスへ向かう。
「あ…高良」
「どうした?」
すぐに止まって振り向いてくれる高良は、やはり優しい。彼女ができたら、いわゆる"スパダリ"になるだろう。
「今日と明日はオフだから、どっちか暇だったら遊ぼ」
「あー…」
高良はスマホを取り出して、予定を確認する。スマホケースは五年前の誕生日に、僕がプレゼントした物を使ってくれている。
「大丈夫だよ。どっちも遊ぼ」
「どっちもは、迷惑になるでしょ?高良も友達いるだろうし…」
「いや。暇だったから、大丈夫」
「そう?……なら、遊ぼ」
「うん。昼にね」
高良を見送って、席に着く。
「よぉ〜元気だった?一週間ぶりか。ツイ見たよ」
「元気元気。ツイ見てくれてありがとね。服、シルエットいいよね」
声をかけてくれたのは、花宮麻実(はなみやあさみ)。中学から一緒で、高良とも仲良くしている。服が好きらしく、僕よりも服に詳しい。
「そういえば、これ。今日貰ったやつ。柊先輩に渡してくださいって、後輩から」
「あぁ…よく知らない子とは付き合えないけど、返事しないとかな?」
「いや、この子は返事なくてもいいって言ってたよ」
僕がいない間に、高良や麻実に手紙を渡して告白してくる女の子がいる。
モデルでもあるため、気持ちには応えられないが、渡してくれた気持ちには応えたい。
「高良からは、受け取った?」
「いや……何も」
「マジか。昼にでも渡すのかな」
「多分、夜にでも渡してくれるよ。あれから渡してくれるようになったし」
「ならいいけどな」
以前、高良は受け取った僕宛ての手紙を、勝手に捨てていたことがある。
高良曰く、
「柊は頑張ってモデルやってるのに、外見だけで好きって言うの嫌だった」
ということらしい。僕がやめるように言ったら、ちゃんと渡してくれるようになった。
「あ!今日、小テストだけど大丈夫か?」
「え……ダメかもしれない」
「あはは!そうだよな。とりあえず、これな」
そう言って、麻実はいつも通りまとめプリントを見せてくれる。
「ありがとうございます…!なんか、お礼しようか?」
「そうだな……今度遊ぼーぜ!」
「え、そんなのでいいの?てか、彼女とかいるんじゃ?」
「そんなのじゃないから!久しぶりに遊べるし、明(彼女)とは別の日にデートしてるから大丈夫なの」
確かに、モデルを始めてから高良とはよく遊ぶが、麻実とはあまり遊んでいない気がする。
「そっか…じゃあ、今日の放課後は?明日でもいいし。高良もいるけど」
「休みなの?部活オフだし今日がいい!明日は部活だから」
麻実は少し残念そうに言った。感情表現豊かな部分は、麻実のお母さんに似ている。
「確かに。麻実も部活なくて良かったよ。でも、明日って土曜でしょ?部活、大変だね…」
「そうなんだよ!大会近いからって、顧問がコート抑えたの」
麻実はサッカー部のエースだ。一番上手いから、嫌でも練習は参加しなければいけない。
「でも、麻実上手だし、顧問の先生も期待してるんじゃない?久しぶりに全国大会行けそうでさ」
「だからって……明との時間が無さすぎる!」
「はいはい。惚気はいいですからね〜」
──キーンコーンカーンコーン…
「あ…授業始まるな。小テスト、幸運を祈る」
「うん…」
***
「柊は高良と飯?」
「うん。高良の迎え行かなきゃ」
「そっか。手紙のこと言えよ」
「ちゃんと言うよ。後でね」
高良のクラスは、僕のクラスの隣。迎えに行くという距離でもないが、どちらかが迎えに行くのは決まりみたいなものだ。
高良のクラスを覗くと、高良はたくさんの女の子に囲まれていた。
(やっぱり…)
高良を迎えに行くと、いつも囲まれている。こういう時は、僕が助けなければいけない。
「高良〜お昼食べよ」
声をかけると、高良は勢いよく立ち上がり、向かってくる。
僕の腕を掴むと、
「走れ!」
と言うので、足が勝手に動く。走りながら振り向くと、女の子たちが「待って!」と呼びかけている。だが、高良は気にもせず走り、保健室に向かう。
「はぁはぁ…」
「急に走ってごめん。大丈夫?」
「うん…はぁはぁ……僕って運動不足だね」
「まぁ、忙しいし仕方ないよ。保健室入ろ」
「え、いいの?保健室の先生、いないって」
僕は、保健室に掛けられているホワイトボードに、"不在"の文字が書かれているのを指さす。
「あぁ、この時間は先生いないけど、使っていいんだよ。許可も貰ってるし」
高良は平然と保健室の扉を開き、僕を招き入れる。
「え、そうなの?許可なんて貰えるんだ」
「うん。いつもここでご飯食べてる。女の子たちがすごいから」
「学校側も、配慮してくれてるんだね。よかった」
「いや、俺じゃなくて柊に配慮しないとじゃない?」
高良は慣れたように、保健室の一番奥にあるベッドに腰を下ろす。
「なんで?」
「なんでって……柊はモデルだよ?自覚あるの?さっきだって、ほとんど柊を狙った女子が来てたんだし」
「ごめん…僕のせいで」
「あ…別に、柊が悪いんじゃないよ……おいで」
僕がしょんぼりすると、高良は優しく引き寄せて頭を撫でてくれる。
「本当に、柊はモテモテだから学校には、柊専用の教室作った方がいいと思う」
「ふふ…僕専用かぁ。なら、高良もだね。高良専用の教室」
「あはは…元気出た?」
僕の笑い声を聞いて安心したのか、高良は僕の顔を覗き込む。
「うん。元気だよ。ご飯、食べよ?」
「うん、食べよ!」
高良の隣に座って、弁当を広げて食べ始める。
「柊、今日遊んだら泊まってく?」
「あ、そうだ。今日の放課後は、麻実も一緒に遊んでもいい?」
断られたら、麻実に謝らないといけない。というか、そもそも二人に、交流があるのかわからない。
「麻実も一緒?まぁ…いいけど」
「良かった〜。今日の小テスト、助けてもらったからさ。お礼に何かするって言ったら、久しぶりに遊ぼって」
「そっか。久しぶりだね。三人で遊ぶの」
「うん!楽しみ〜」
高良は笑顔で答えてくれたので、一安心だ。
「明日は、二人だけだよね?」
「うん。麻実は部活だって。大変だよな〜サッカー部」
「部活か……大変だな。明日はどうする?何かしたいことあるの?」
高良は僕と遊ぶ時、いつも僕がしたいことを優先してくれる。たまには、高良のやりたいことを一緒にしたい。
「高良はしたいことないの?高良のしたいこと、一緒にしたい」
「………………いや…柊のしたいことが、俺のしたいことかな〜」
「えー…それじゃあ、なんかフェアじゃないよ」
「いいや?それが俺のしたいことだから、フェアだよ」
僕は高良が無理をしてないか窺うが、無理している時の笑顔ではない。
「無理してるなら、言ってよ?」
「無理してないよ。柊がやりたいこと言って」
「……久しぶりに、甘いもの食べたい」
モデル雑誌の撮影で、最近は食事制限をしていた。そのため、久しぶりに食べたいものを食べるのだ。
だが、甘いものなんて、子供っぽい気がして少し恥ずかしい。
「甘いもの……?珍しいね」
「…うん」
恥ずかしくて、隣にある高良の腕に顔面を埋める。
「………変わらないね。俺に甘えるの、好きでしょ?」
「いや、別に好きじゃない。ちょうどいい腕があったから」
僕は下に妹と弟がいるため、長男として甘えるのが下手だ。今だって、変なプライドが邪魔をして、ちゃんと甘えきれない。
「ほんと、甘えるのが好きなのを認めないとこも、変わらないね。」
何も言わないでいると、高良が「コレ見て」とスマホの画面を見せてくる。
「カフェ……え、家でいいよ?女の子の中に並ぶの、嫌でしょ?」
「ご褒美なんでしょ?食事制限、頑張ってたもんね」
「うん。ご褒美……一緒に行って、食べてくれるの?」
別に、一人で行こうと思えば行けるが、高良と一緒に過ごす時間を削ってまでは、行きたいとは思えない。
だけど、高良は人混みが得意ではない。嫌なら行かなくてもいい。
「行こっか。甘いもの、俺も久しぶりに食べたいから」
「ほんと?いいの?」
「うん、もちろん!他には何かしたいことないの?」
「えっとね〜…」
***
そこから僕は高良に甘えて、次々とやりたいことを挙げていった。
認めたくないが、僕は高良に甘えるのが大好きだ。
「じゃあ、明日は朝イチでカフェ行って、映画見て、昼食って、帰ってゲームね」
「うん。結局、僕がやりたいことばっかりになっちゃったね」
「俺も甘いの食べたかったし、映画見たかったし、柊とゲームしたいからいいの」
──キーンコーンカーンコーン…
「予鈴だし、戻ろっか」
「うん」
高良と一緒にクラスまで戻ると、女の子たちが「みつけた!」と言わんばかりに僕たちを囲む。
「どこ行ってたの?」
「話したかったのにぃ!」
「シュウくんって、今日の放課後空いてる?」
次々に放たれる言葉に、答える隙がなくて困ってしまう。高良を見るが、困っているような表情だ。
「柊〜!高良〜!」
声がして振り返ると、麻実が声をかけてくれた。
「女子〜まるでライオンの狩りだぞ?」
「うるさいわよ!麻実はボールと仲良くしてなさいよ!」
「あ!言ったな!」
麻実と女の子たちが言い争ってる中、高良に腕を引かれて女の子の群れから抜け出す。
「助かった…麻実、ナイス」
「本当に、良かったね。麻実いなかったら、教室戻れなかった」
時計を見ると、あと一分ほどで授業が始まる。僕は足早に
「また放課後!」
と言い残して、席に着く。
チャイムと同時に戻ってきた麻実が、僕の前の席に座って、話しかけてくる。
「な、大丈夫だった?」
「ほんとありがと。今日なんか奢る」
「マジ?助けた甲斐あったわ。てか、手紙のこと聞いたか?」
「あ…忘れてた」
今言われるまで、手紙の存在など忘れていた。放課後、ちゃんと聞かないとだ。
「今日、高良の家泊まるから、夜に聞くよ」
「泊まんのか……まぁ、気をつけろよ」

