転生したらHP10000だった。


「タタング様はわたくしの身を案じてくださいましたのね。なんてお優しいのかしら。ありがとうございます。ですが、わたくしの身はお父様が常に気を配ってくださるから、本当に大丈夫なのですわよ。ですが、いただいた加護はありがたく使わせていただきますわ」
「はい。ぜひお使いください。ステータスを確認すれば、使い方はわかるとおっしゃっております。身体強化魔法とのことですよ」
「わかりましたわ。では、まず状況を確認してきますから、イリヤ様はテントの中でお待ち――」

 肩に手を置かれ、テントの方に向かされそうなのだけれどその前にテントがいっぱいあるこの場所を囲うように作られていた丸太の柵が太い黒いものに貫かれる。
 そしてなにか、落ちてきた。

「見てはいけません!」
「えっ」

 カルレットさんが私の顔を胸に押しつける。
 あ、厚い! 分厚い! うう、く、苦しい……!

「ッ――」
「…………」

 苦しいけれど……カルレットさんの詰まる息の音。
 落ちてきたものって、まさか……。

『魔獣……! しかも、四神領に出るような巨大な……! これは、人工的に作った魔獣だな。アグレドめ……!』
「人工的に作った魔獣……!?」
「ご存じだったのですね。そうですわ、アグレドとブロードは撤退して自分たちが劣勢と見ると人工魔獣を放つのです。人工魔獣はとても大きく、凶暴ですの。倒すのにこちらが疲弊してしまいます。物資も、これで無駄に使わざるおえません。被害も、増えますし……」
「しゅ、守護壁は……」
「人工魔獣が暴れているのは”国境の外”なのです。この辺りは国内ですが、光線攻撃などは届くことがあります。守護壁が守るのは魔力のない平民の村が中心ですから……」
「そんな……」

 いつの間にかカルレットさんに抱えられ、テントの中に戻されていた。
 カルレットさんは笑顔を浮かべて「でも大丈夫ですわ。人工魔獣の対処は初めてではありません!」と言う。
 まさか……行くの?
 カルレットさん……!

「わ、私が……! 私も……!」
「いけません! 先ほどの戦いでタタング様のご加護を使われたのでしょう? それでなくともイリヤ様はまだ魔力選定を終えていないのですよ!? 今度こそ魔力暴走をしたらいかがしますの!?」
「で、でも!」
「カルレットさん、こちらですか?」

 顔を上げて、テントの入口を見る。
 誰? 女の人の声なのだけれど。

『なっ!? この娘以外にも女人がいるのか!?』
「失礼いたします」
「巫女さんだ!?」
「はい。女神神社所属の巫女、エアリと申します」

 ぺこり、と頭を下げる薄いピンク色の長髪。
 青い瞳の美少女!
 タタング様が頭の上でまた『こんなうら若き乙女がなぜ二人もいる!?』と叫んでいる。
 そ、そうだねー、なんで女の人がいるんだろうー?
 あれ、でも、この人は苗字を名乗ってない、な?

「彼女は女神神社から派遣された治癒師ですの。女神ブロントズウェール様に仕える巫女」
「あなたがタタング様にご加護を賜ったイリヤ様ですのね? 先ほどの戦闘での助力、ありがとうございます。おかげでけが人も少なく済みましたわ」
「あの、初めまして。でも、あの」
「言いたいことはわかりますわ。ですがわたしたちは待つしかありません。ですが、わたしは怪我人を治癒にいかねばなりません。カルレットさんとともにイリヤ様のお世話をさせていただくつもりでしたが、少しお待ちくださってもよろしいですか?」

 シンプルな杖を持ち上げ、小首を傾げるエアリさん。
 なんという美少女。
 白と赤の巫女のお着物が本当によくお似合い。
 待てよ……? 巫女さん?

「あの、私の魔力選定をできたりしませんか!?」
「え? え? 魔力選定……!? な、なにをおっしゃっておりますの……!?」
「イリヤ様!? 無理ですわ、まだ十歳になっておられないでしょう!? 魔力選定は魔力が安定して初めてできますのよ!?」
「私の魔力が安定したら! またさっきの白い壁のアーツ魔法が使えますよね!?」

 タタング様を見上げると、少しだけ目を細めて見下ろされる。
 一歳くらい……ううん、半年くらいオマケでなんとかならない?
 人工魔獣なんて白い壁で追い返して、アグレドとブロードの軍が撤退したところでまた勝手に暴れてもらえばいい!

『ふっ。それは面白いな』

 ですよね!?
 自分たちで作ったなら、自分たちで処理したらいいの!

『おれは反対しない。実際誕生日前に魔力選定した貴族はいたはずだ』
「そうなんですか!? じゃあ、やっぱり私もやりたいです、魔力選定! お願いしますエアリさん! 女神神社の人なら、魔力選定できますよね!?」
「で、できなくもないですが……」
「危険で――」
「魔法を使うのではないです、カルレットさん! 魔力を選定してもらうのです! 私の誕生日、あと半年くらいだからもうできると思うんです! タタング様もそういう例はあったって言ってます!」
「……そ、そのようなことできますの?」
「確かに、誕生日の数週間前に選定される貴族の方もおります。誕生日当日はパーティーでできないからと。ですが誕生日の前に選定を行うと、魔力量が減ってしまうのではないか、と言われています。平均が10ほどなのに、誕生日前の選定で”確定”させてしまった方は総じて魔力量が一桁ですから……」
「それではやはりアーツ魔法を使うなど無理ですわ! イリヤ様、考え直してくださいませ!」