転生したらHP10000だった。


「イリヤ嬢、[武]の精霊タタング様のご加護を得て、今回助力してくださったと聞きしましたが……タタング様はイリヤ嬢の味方でありカルヴァ王国の味方ということではない、のですよね? そのあたりを勘違いしたくはないので、はっきりさせたいのですが」
「えっと――」
 
 通信を終えるとエドレッド様が話しかけてくる。
 なんでそんなものをはっきりさせたがるのだろうと思うが、タタング様が頭上に現れて『そなたの身を守るためにもはっきり明言させるべきだな』と言う。
 なんかそういうものらしい。
 でも、確かに。
 多分、さっきの白い壁で……敵とはいえ……いっぱい死んでいるよね。
 
『そうだ。おれがそなたに協力を要請した。おれはアグレドとブロードの侵略行為を前々から不快に思っていた。今回青龍の領域を無断で侵してまでこの国に侵攻してきた故、一線を越えたものとして介入をしたのだ。此度のおれの介入は、神の裁きと思え。当然、おれはカルヴァ王国の味方ではない。おれはアグレドとブロードの敵である』
「タタング様は、カルヴァ王国の味方ではなくてアグレドとブロードの敵、だそうです。なんかずっと他国への侵略には怒ってたんだけれど、今回は青龍様の領地を利用したので一線超えたから神の裁きだってことでした」
「なるほど。そうだったのか」
『特にアグレドは北西の国々を王の我欲で呑み込んだ。滅ぼされた国々の守護神たちは、カルヴァ王国の守護神に比べれば国土も小さく弱かった。それでも守護神という神を殺したことに変わりはない。我ら星の精霊は弱き神々の無念を聞き届け、アグレドとアグレドに組するブロードへその罪への罰を下さねばならぬ。イリヤ、そなたは我らの姿を見て、声を聴くことができる。故に協力を頼んだのだ。――と、いうことにすればよい』
「えっと……はい」
 
 うんうん。
 私がタタング様に加護をいただいたのは産まれた時。
 でも、それは内緒だからそういうことにしておけってことね。
 ジュジュ様にもローゼクリス様にも言われたしなー。
 私のことを心配して隠しておけってことみたいだから、精霊様の言う通りにするよ。
 
「という感じらしいです」
「そうですか。では神々も精霊様たちも元々アグレドとブロードには思うところがあったのですね。そして今回の件は奴らが積み重ねてきた悪行への裁きである、と。タタング様に我々から願いを申すのは、嫌がられるでしょうか?」
『不快である。おれは貴様ら人間の争いに介入したわけではない』
「不快だそうです」
『そうでございますね。無礼なことを申しました。申し訳ありません』
 
 エドレッド様、私の頭上に向かって頭を下げている。
 まるでタタング様がそこにいるってわかっているみたい。
 
「ではイリヤ嬢はタタング様と協力関係なのですね」
「ええと……はい、そんな感じです!」
「わかりました。しかし、それでは今後イリヤ嬢はタタング様のご意向で他国の戦争にも加担されるのですか?」
「え!?」
 
 それって私が他の国に行って、タタング様の言われるがまま他の国の戦争でもタタング様の加護を使うのかってこと!?
 そ、それは――し、しなきゃダメなの?
 
『そんなことはする必要はない。そなたへの加護はそなたが生まれた時に、女神ローゼクリス様がそなたへの慈悲で与えてほしいと懇願し、俺もそれを受け取ってそなたへ与えたもの。そなたがそうしたいというのであれば、おれも力を貸すのは吝かではない。しかし、そなたが我ら精霊の加護を悪しきことに利用する、というのであればその時は加護を取り上げる』
「そ、そんなことしないです!」
『それならばそなたの好きなように生きればよい』
「あの、あの、イリヤが加護を悪いことに使うっていうの、よくわからないです。こういう使い方はダメだよって、教えてほしいです!」
「私が、ですか?」
『無論、おれ以外の精霊もそうするだろう。人間の常識はその騎士に聞けばよい』
「あ」
 
 そうだ、途中から声に全部出ていた。
 エドレッド様が困惑している。
 なんて返したらいいんだろう、と思っていると、それをどう取ったのかエドレッド様は目を細めて微笑む。
 
「かしこまりました。イリヤ嬢がタタング様のご加護を悪しきことに使わぬよう、一人の騎士として導けるよう尽力いたしましょう。なんなりとご相談ください」
「あ……え、えっと……は、はい! あの、そ、それなら……よろしくお願いします!」
 
 なぜかエドレッド様の側にいた騎士さんたちも私に向かって頭を下げる。
 よくわからにけれど、エドレッド様に聞けば私が怒られることはない、ってこと、だ、よ、ね?
 タタング様も笑顔で頷いているから、これでもよかった、のかなぁ?
 
『ああ。そなたは人間なのだから、人間の味方が増えるのはよいことであろう?』
 
 ……確かに。
 
「騎士団長! 外の状況を確認してまいりました!」
「少し待て。イリヤ嬢、最後の確認です」
「え? は、はい」
「次の戦い(・・・・)で、イリヤ嬢とタタング様は我らに助力をしてくださいますか?」
 
 え? ……次の……戦い?
 さっきので終わりじゃないの……!?
 
「ま、また、来るんですか……?」
「来ます。イリヤ嬢、残念ながら戦争とは一度だけの戦闘で終わるものではないのです。アグレドとブロードが我が国への侵攻を諦めざるおえぬほどに疲弊したり、アグレドの王が侵攻を諦めるという意思決定をしない限り終わらないのですよ。だからこそ、侵略戦争と言うのは厄介なのです。こちらから終わらせるには、こちらから攻撃を仕掛けなければなりません。戦争は始めるよりも、終わらせる方が難しい。ここより先は政治なのです」
「政治……」