転生したらHP10000だった。


「兄様! お願いがあるの!!」
『な、なんだ!? イ、イリヤ!? 空中に可愛い!!』
『落ち着け! これは通信魔道具だ! しかし、通信魔道具なんて軍が所有しているもんだぞ? カルヴァ王国の公爵家っていうのは通信魔道具を所持できるほど金持ちなのか?』
「あ、モーリスさん」
 
 わあ~、何年ぶりだろう!
 すっごく久しぶりな気がする~!
 元気~? と手を振ると『おう、元気だぜ』と手を振り返してくれた。
 
『通信魔道具!? そんなものうちにはありませんでしたよ!? だから今までも手紙でやり取りしていたのに』
『じゃあ、まさか騎士団の施設にいるのかい? なんだって嬢ちゃんがそんな場所に……』
「話すとややこしいかもしれないのですが……」
 
 [武]の精霊タタング様が私に加護を与えてくださり、カルヴァ王国を守るのに加護を使えと言ってくださった。
 って、ことにする。
 だって精霊様に加護を与えてもらえるのって、すっごく珍しいって聞いたから。
 アルド兄様もモーリスさんも私が精霊様の加護を持っているのはもう知っているが、四人の(・・・)精霊様から加護をいただいているのは知らない。
 これは隠しておくように、ジュジュ様とローゼクリス様に言われたからね~。
 新たにタタング様から加護をいただいた”てい”で話をしないと、またびっくりされちゃう。
 アルド兄様の胃が痛いって言われちゃうから。
 
『新たにタタング様からご加護を!? な、な、な、なにがどうしてそうなったんだ!?』
 
 って、思ったけれどもどうあがいてもびっくりさせちゃったなぁ。
 でも、アルド兄様には私が精霊様を見たり声を聴いたりできるっていうのは知っている。
 
「イリヤ、精霊様や守護神様の声とか聞こえるし姿見えるから、タタング様にアグレドとブロードのが気に入らないからカルヴァ王国の味方になってくれるっていう感じのことを言われたの!」
『なんと……』
『そ、そんなことがあるのか? 星の精霊様がそこまで特定の国々を嫌うなんて……』
『フン、当然だろうな』
 
 なんかかっこい声がした。
 アルド兄様の後ろに、金髪ストレート碧眼のめっちゃイケメンが立っていた。
 モーリスさんも筋骨隆々だけれど、この人もなかなかのムキムキ。
 でも、耳が長い。
 絵本で読んだ。
 多分、この人エルフだ!
『金の大槌』はエルフの人がリーダーだから、エルフが多いって聞いたことがあるけれど……。
 
『そんなことよりもわざわざ通信魔道具で連絡してきた理由があるのではないか? 言ってみろ、娘』
『お、おい、クルツ! いくら小さなお嬢さんでアルドの妹さんだからって一応公爵令嬢だぞ!』
『イリヤ、すまない! この人はクルツ・ウォン・アルダそんといって……』
「わかんないけど大丈夫! グレンが守護神様の力を使ってくれたから、大丈夫だと思うけれどどうなってるのかまではわからないから兄様たちに見に行ってほしいの! え? あ、はい! ――えっと、えっと、アグレドとブロードの軍が青龍領を通って、隣接していたカルヴァ王国の砦が襲われてるんだって。守護神様の力が発動しているから、戦況はマシにはなってると思うの。でも、ちゃんと安全になってるかはわからないから兄様たちに加勢に行ってほしい! って、タタング様が言ってる!」
 
 私、説明下手!
 でもタタング様が頭の上で少し順序立ててくれたから……これなら伝わる?
 あれ? なんか説明いっぱい同じこと言った?
 伝わればよくない?
 
『青龍領から……!? 青龍領の人たちはそれを許したのか!? いや、まさか無許可で通った? いったいどうやって……』
『それも含めて調べた方がいいだろう。砦の騎士たちと合流し、アグレドとブロードの軍を蹴散らせばよいのだな?』
「はい! 終わったら状況の整理をしたいので、砦の通信魔道具で連絡をくださいって言ってます!」
『わかった』
『ま、待ってください! イリヤは今どこにいるの? 大丈夫なの!? まさか戦場にいるとか言わないよね!? そこはどこなの!? ルイシス兄様は――』
「じゃあアルド兄様、よろしくね!」
 
 ブチっと通信を切る。
 用件は伝えたし、なんか偉い人っぽいエルフの人が了解してくれたから大丈夫なんじゃない?
 それにしてもー、アルド兄様、うるさーーーい。
 私のことを心配してくれるのは嬉しいけれど、大丈夫なんだからー、もー。
 というか最近思うんだけれどうちの兄様たちタイプの違うシスコンというやつなのでは?
 アルド兄様は過保護。
 ルイシス兄様は『イリヤに相応しくなるよう、お兄ちゃんがグレン王子はちゃんと教育しておくからね』って言ってるし。
 グレンは兄様に習って音楽も得意な子になったけど、別に私に相応しくなくてもいい。
 私が育てるし。
 ブロッサ兄様は届く手紙十五枚くらい私への心配しか書いてないし。
 妙だな……?
 私そんなに頼りないのか……?
 確かにあんまり賢い方ではないと思うけれども……。
 精霊様からの加護もあるし、HP10000もあるのに、なんで兄様たちはこんなに私を心配するのだろう?
 精霊様の加護があるから? 逆に?
 頼りないのだろうけれど……毎日槍の訓練もランニングも欠かさずやってるのになー。
 やっぱり足りないのかなー?
 筋肉とおっぱいが。