転生したらHP10000だった。


 なんかみんな元気になった。
 やっぱり騎士団長さんのかけ声って騎士の人たちには特別なものなんだなぁ。
 というか――あの白い壁はどこまで行ってしまったの?
 もしかして、あの壁帰ってこない感じ?
 じゃあどこまで行っちゃったの?
 あの壁に連れて行かれた人たちどうなっちゃったのかな……?
 やっぱり、し、し、死んだ、よね?
 
『敵に慈悲など見せるものではない。奴らは侵略者である。そなただけではなく、そなたの家族も国民も、この場で戦う騎士たちも国に連れて帰って玩具のように弄ぶ。まだ幼いそなたには残酷すぎて話せぬほどに、人を同じ人だとは思わぬ所業。そんな相手を同じ人間だと思う必要はない。地面をよく見なさい』
「え?」
 
 振り返る。
 地面? と不思議に思っていたら、赤い鎧の騎士たちが、地面に転がっている同じ鎧を着ている人たちの腕と足を抱えて移動していく。
 えっと……えっと……あれは……あれは……っ。
 
『そう、死体だ。敵に殺され殉死した者たちだ。殺すつもりで襲ってくるのだから、この国の騎士たちも殺し返す。だから戦争をは愚かなものであり、醜い。あの騎士の家族たちは悲しむ。そしてアグレドとブロードを恨むだろう。アグレドとブロードの王たちがまだこの国を攻めるとすれば、またアグレドとブロードの騎士はこの国に攻め込まねばならぬ。わかるか、イリヤ。これが戦争だ。守るということは、退けること。あるいは殺し返すこと。よく見なさい、イリヤ。次は動いている騎士たちの顔を』
 
 タタング様の言うことに従う。
 立って歩く騎士たちの顔を見る。
 肩を組んで笑い合い、安心したように怪我人に手を貸す。
 騎士団長に回りに集まり、真剣に話し合う人たち。
 仲間の遺体を沈痛な面持ちで運ぶ人たち。
 タタング様の言うことが少しわかる。
 ああ、生きてるんだ。
 
『あれがそなたが守った者たちだ。そなたが戦うことを決めなければ、今ここで生きている者たちも間に合わなかっただろう。そしてこの地の他にもう一つ。青龍領から通って国境を侵す部隊がある。そちらはこちらよりも数千兵力が少ないが、そなたが来たことで戦況が落ち着いたこちらとは違いまだ侵攻を受けている』
「じゃ、じゃあ、そっちも助けに行かないと!」
『今からでは間に合わぬ。少なくとも我々は無理だ。そなたとおれはニーングルグ女王国の転移陣を借りてここに移動してきたが、魔力の安定せぬ年齢のそなたは転移魔法を使えぬ』
「そんな……じゃあ、どうしたら――」
「イリヤ嬢、本陣に来てはくれないか。君がこの場に来た状況を聞きたい」
「あ、エドレッド様! あの、あの……!」
 
 多くの騎士を連れてエドレッド様が近づいてきた。
 ナイスタイミング!
 タタング様に言われたことを話すと、青龍領と隣接する砦が襲われている件はご存じだった。
 そしてそちらへ近隣の部隊が集合している。
 カルヴァ王国の守護壁があるので、突破は時間がかかるはず、とのこと。
 でも……。
 
『この地の守護壁が破壊されているのを見るに、敵はこの二年の間にアーツ魔法の使い手を見つけ出し、投入しているのだろう。青龍領の砦も別のアーツ魔法の使い手により守護壁が破壊され、侵攻を受けているはず。イリヤ、そなたの兄は間に合わぬか? 通信魔法で連絡を取れぬか聞いてみるとよい』
「通信魔法?」
「通信魔法ですか? ああ、ご家族に連絡ですか。少々お待ちください。それならなおのこと本陣へ」
 
 そう言われて案内される本陣。
 めっちゃでっかいテントが、本陣らしいよ。
 大きなテント、いっぱいあるところは戦場から数十メートル後方にあったんだけれど、そりゃあもういっぱい人がいる。
 その中でもひときわでっかいテントが本陣なんだってさ。
 で、その本陣の中に鏡がおいてある。
 重厚っていうんだっけ?
 装飾品がいっぱいついている、めっちゃ重そうな鏡。
 
「通信用の魔道具です。見ての通り非常に重量のある鏡なので本陣にしか設置できておりませんで」
「えっと、家族、母様と話したいです。母様とグレンが一緒にいると思うので、えっと、あれ? でもアルド兄様はニーングルグ女王国にいるから……でも、もう母様と合流しているかもだし……えーとえーと」
「アルド殿が戻られたのですか!?」
「は、はい。『金の大槌』を雇えたので、連れて来てくれる話だったのです。手続きがあるから、一緒には来れなかったのですが」
 
 アルド兄様と『金の大槌』のことを話すと騎士団長と他の騎士たちからまた大きな歓声が上がる。
 おおおおお、という野太い歓声で、思わず方がビクッとなった。
 
「アルド殿と『金の大槌』! 援軍として加わってくださるのですね!?」
「は、はい。それにニーングルグ女王国から救援物資も……」
『オオオオオオオオオ!!』
 
 も、ものすごく喜んでいる!
 あの、あの、嬉しいのはいいのだけれど、今はもう一ヵ所の砦に救援を――。
 
「なるほど、それならば先に城へ連絡を入れ、次にオルヴァーニュ公爵夫人へ繋げよう。イリヤ嬢がいるのならば個人にも繋げることができるだろう。そのあとニーングルグ女王国へアルド殿と『金の大槌』を青龍領近くの砦へ派遣してもらえるよう連絡を入れる。すぐに魔力を!」
「はっ」