転生したらHP10000だった。


『[ヘルスチャージ]と我が加護、【生命の盾】を使え。おれも手伝う。そなたが望むように協力しよう』
「はい!」
「イリヤ? いったいどうしたの――」

 母様とルイシス兄様、グレンが不思議そうにこちらを見る。
 声に出ていた。
 精霊様を見ること、声を聞くことは体質とか才能? なんだっけ?
 その時、魔法陣が光り輝く。
 今までにないほどに、天井に届くほどの光。
 その時、タタング様が手を伸ばす。

「母様、兄様、グレン。心配しないでね」
「「「え?」」」

 怖い気持ちは、もちろんある。
 でも、私は前世を乗り越えるって決めているし、グレンがみんなに大事にされる、愛される王様になるように頑張るって決めた。
 だから私、戦う。
 タタング様が一緒にいるから大丈夫な気持ちも大きい。
 光に包まれ、体が浮遊する感じ。
 でも、あったかい。
 目を閉じて、一瞬の間。
 足が地面に着く。
 ざり、と土の感触。
 目をゆっくりと開けて、前を見る。
 守護神様の守護壁が砕かれているのが見えた。
 怒号と、物凄い振動。
 騎士が三色の鎧をそれぞれ纏って剣を振るう。
 赤い鎧はカルヴァ王国の――。

「右翼! 押し返せ!」

 あの声、聞き覚えがある。
 エドレッド・ジザックス様だ。
 カルヴァ王国騎士団第一騎士団団長さん!
 カルレットさんのお父様。
 間違いない、ここは戦場だ!
 そして緑と灰色の鎧の人たちがアグレドとブロードの蛮族!

『手のひらを敵に向けなさい』
「はい!」
『繰り返して』

 タタング様が杖のようなものをエドレッド様の方へ向ける。
 あっちになにかするのか。
 言われた通り手を向ける。
 意外というか、目の前の敵に夢中になって、誰も私の存在に気がつかない。
 命がけで戦ってるんだからそれはそうか。
 この場所は戦場。
 小さな、武器も持たない私なんているはずがないって思われる。
 私は私の守るべきものを守るし、戦うんだ。
 私はもう前世のように弱くない。
 戦う力がある。
 精霊様の加護がある!

『生命(いのち)よ。女神に愛されて生まれた我が生命よ』
「生命(いのち)よ。女神に愛されて生まれた我が生命よ」
『聞き届け。声を。我が声を。そして護りたまえ』
「聞き届け。声を。我が声を。そして護りたまえ」

 手のひらが熱い。
 これは、まさか魔法ではないよね?
 私、まだ魔法使っちゃダメなのだけれど。

『武神タタングの加護よ、顕現せよ』
「武神タタングの加護よ、けんげんせよ」

 難しい言葉きた。
 でも、ちゃんと言えたはず。
 あれ? これやっぱり魔法?
 アーツ魔法じゃない?
 私使って大丈夫!?

『【生命の盾(シールド・オブ・ライフ)】!』
「【生命の盾(シールド・オブ・ライフ)】!」

 まあでも、タタング様がなんも言わないならいいかぁ、と信じてすべてを復唱した。
 そしてすべてを言い終えると、目の前……ではなく背後に何十メートルと続く高く白い壁がズン、ズンズンと生えてくる。
 なにこれ? なにこれ?
 どうなるの? どうなるのこれ!?
 さすがにこれだけ広範囲かつ巨大な壁がいきなり現れたら、戦っていた騎士たちが次第にこちらに気がついて振り返る。
 凝視して、戦いが止まった。
 マジでどうするのこのあと!?

『押せ!』
「はい!」

 衝動的に返事をして、一度肘を曲げてから勢いよく押し出すように手を突き出す。
 すると、背後にあった巨大な白い壁が私をスッと通り過ぎて前へ移動し始めた。
 しかも、その移動速度!
 は、速すぎない!?
 このままじゃ全員弾かれるんじゃ……。

「な、なんだ!? 壁が迫ってくるぞ!?」
「なんだかよくわからんが、守護神の守護壁とは別の壁だ」
「た、退避、退避!」
「魔法師部隊、あの壁を破壊しろ!」

 戦場が目に見えて大混乱なんだが!?
 大丈夫なのこれ!?
 と、思っていたらあっという間に赤い鎧の人以外――アグレドとブロードの国の鎧の人が壁に押し出され、吹っ飛ばされていく。
 え、え、え、ええええええ〜〜〜〜〜!?
 そのまま壁で押し返される騎士たちはなすがまま。
 あれ、し、し、死なない?
 し、死ぬよね?
 あんな勢いであの人数が全部押し返されたら……人が、積み重なって……し、死ぬよね?
 あばばばばばばばば……!

「な、なんだあの壁は……」
「守護神様の、守護壁なのか?」
「あ、あ、あ、あ……」
「あれは!? イリヤ嬢!?」

 あばあばとしていると、私の存在にやっと気づいたエドレッド騎士団長が駆け寄ってきた。
 こ、これ謝った方がいい?
 私のこれ、魔法?
 アーツ魔法だよね?
 え? 大丈夫?

「なぜここにあなたが!?」
「あの、あの、ほ、ほ、星の精霊様のお一人の……[武]の精霊様、タタング様が……お力を貸してくださるって……だから……」
「精霊様が!?」

 これはどこまで言えばいいの!?
 混乱しているとタタング様が『復唱せよ』と私を見下ろす。

「えっと、[武]の精霊タタング様が、アグレドとブロードのことが、嫌いで許せないから……精霊様の声を聞き、姿が見える私に、その、お力を貸してくださるとのことで……」
「な、なんと! [武]の精霊様が……!? 我々の味方をしてくださるのか!?」
「えっと……は、はい。アグレドとブロードの暴挙を、もう許せない、と」

 と、言うとエドレッド様驚愕の表情。
 しかし、すぐに肩を震わせる。
 な、な、なんだ?

「聞いたか、皆の者! [武]の精霊タタング様が我らの味方をしてくださるとお告げをくださった! 今の白き壁もタタング様からのご加護! もはや我らに負けるようそはない!」
『うおおおおおおおおおおおおおおお!』