竜籠――もっとも賢い小型の竜ブレインドラゴン。
フルーツを好み、野菜も食べる。
魔獣ではなく、動物。
青龍様の眷属なんだって。
小型といっても竜なので、五メートルくらいある。
大きな籠を背負ってもらい、飛んで上空を移動する。
なのでまあ、結構速い。
ボックス馬車と違って車くらいの速さなので、屋根や壁がないタイプはとても、寒い。
のだけれど、グレンはボックス馬車のような狭さと移動するものだと症状が出てしまうので、私たちが今まで乗ってきた竜籠は東屋みたいな壁なし。
まあ、うん。寒い。
でもグレンが怖いから仕方ない。
スピードを落としてもらっている。
で、オルヴァーニュ公爵家で購入して、この二年一緒に旅をしてきた我が家の竜籠の竜、タニシ。
黄色い鱗と青い大きな瞳と大きなお口。可愛い。
もっちりしたお腹。短い手足。可愛い。
竜というか翼の生えたトカゲみたい。可愛い。
グレンと一緒にお世話をしたら、この二年で一回り大きくなった。可愛い。
グレンもタニシには簡単に笑顔を見せる。
これがペットセラピー。
そして、今回の移動はニーングルグ女王国の[転移陣]を使わせてもらえることになったから、カルヴァ王国に帰ったあとの移動方法として一緒に連れて行く。
それを伝えに行ったら『あたち、カルヴァ王国まで飛べるよ?』とちょっと不満そうにされた。
うんうん、そうだね。
タニシならニーングルグ女王国からカルヴァ王国まで飛べるよね。
横断して最短距離なら二日くらいで行けそうだよね。
大陸中央は雪山で、気温が一瞬でバナナが凍りつくくらい寒いらしいから、りょーくーきんしくいき、なんだって。
なんかめっちゃ寒くて竜籠で上空飛んだら凍死するぐらい寒いらしいよ。
竜は寒さにめちゃくちゃ弱いから、大陸中央の雪山に近づくだけで嫌がっていうことを聞かなくなる。
今回ニーングルグ女王国の[転移陣]を使わせてもらえるから、国境や関所を使わなくて済む。
「あ。ねえねえ、サリィ」
「はい、なんでしょうか。お嬢様。なにかわからないところがありましたか?」
「えっと。課題の方じゃなくて……明日のこと。ニーングルグ女王国の[転移陣]って、すごく便利だし……その……悪いことに使われたりしないの……?」
「まあ! 素晴らしいところに気づかれましたね! さすがお嬢様ですわ!」
明日、この国を出るけど日課のお勉強は今日もやる。
お夕飯のあと自室で一時間くらい。
それもこれもよく眠るため。
頭を使わないと、HPが高すぎて頭を疲れさせないと寝れないのだ。
で、サリィに聞いた[転移陣]のすごいところ。
基本的に守護神様が他の国からの[転移]を遮断してくれるから悪いことを考えて[転移]しようとしても拒んでくれるよ!
[転移陣]は動かせないよ! でっかいからね!
[転移陣]は各国にあるよ! 基本的に大きさに比例してめっちゃ魔力を食うからすっごく国の王様の許可もいるし大量の物資や軍を移動させるのは無理らしいよ! 贅沢に偉い人の移動用!
今回はマキアラング女王様が厚意で事前に魔力を貯めておいてくれたんだって。
でも、それでも魔力器っていう魔力を貯めておく魔道具は100%じゃなくて、10%。
私たちと竜籠のタニシ、荷物をカルヴァ王国まで飛ぶのに10%でもちょっと多いくらいなんだって。
それなのに大量の物資や軍は移動できないの? って聞いたらサリィに「守護神様の匙加減ですね」とのこと。
[転移陣]は守護神様の管轄魔法だから、魔力量も転送する内容も守護神様が認めたりしなければ送れないこともあるんだって。
今回は私たちが帰るだけだから、守護神様も魔力をオマケしてくれたんだろうって。
「イリヤお嬢様の加護も、恐らくニーングルグ女王国の守護神様には加味されているでしょうね」
「ああ、そうなんだぁ」
「そんな他人事のような……」
最近全然三人の精霊様に会わないんだもの。
気がついたら朝起きると宙にいることもある。
でも翌日にはいなくなっていたり、数日一緒にいて遊んだり。
結構気まぐれなんだよね。
この国の守護神様はお城に住んでいて、その分霊の”精霊”様がマキアラング女王様の頭の上にいる。
前世で食べた甘いおせんべいのおばあちゃんみたいな精霊様が浮いてて可愛いんだ~。
話をすると小さな頃のマキアラング女王様のお転婆エピソードをずっと喋っている。
守護神様の中でもお喋りな方なのよ~って言ってた。
ちなみにマキアラング女王様ご自身は精霊や神様を”視る”体質ではないから、ご自分の頭上に守護神様が浮いているって言った時そりゃあもうびっくりしてたんだよね。
そして幼少期エピソードを話していると教えたら、顔を真っ赤にしていつものハキハキした姿からは想像もつかないほど可愛くモジモジしてた。
しかも話してくるのはお転婆エピソードばっかりだもん、余計だよねぇ。
「さて、そろそろおやすみになりましょう。明日は比較的早いですから」
「うん。……でも、やっぱりちょっと寂しいね」
「そうでございますね。半年以上過ごしましたから、無理もありません。しかし、やっとご実家に帰れるのですから」
「うん。そうだね」
この国に来て貸してもらったお屋敷の、私の部屋。
勉強道具をしまうのも、使っている机じゃなくて鞄にしまう。
明日はこの鞄を持って、お城へ行く。
さようならなんだよねぇ。
