「わたしは、しゅごしんさまのおことばをそのままおつたえすることしかできません。へいかが“せんたく”されないのであれば、それでもよいとおもいます。しゅごしんさまは、いまこうしているあいだも、へいかの“こたえ”をきいておられますので」
「っ……」
どんなに私を睨んでも、怒っても、殴られたって。
王様の“選んだこと”は全部守護神様と精霊様たちに見られてる。
母様も、王妃様も、王様が連れてきた騎士たちも。
『どうやら国を守るために命をかけて試練を受けることも、したくはないようですわね』
『情けないデース』
「しゅご、守護神がここにいるのであれば、考え直していただきたい! そもそも、今はそのような場合ではないのです! すでに国境を守る辺境伯は破れ、国内に侵入されている! ここで踏ん張り、追い返すために守護神様の国を守るお力――加護が必要なのですよ! その加護を、今すぐ私にお与えくだされば……私はずぐ、この話をしている間も惜しいのです! どうかお願いいたします! 守護神様!」
精霊様たちが顔を見合わせる。
ジュジュ様が『ものは言いようね』と目を細めた。
まあ、確かに。
なんかいろいろなこと言ってるけど要するに『試練は受けたくないから加護だけちょーだい』だよね?
ローゼクリス様が頰に手を当てながら『そもそもの話をするのなら、国交を蔑ろにするからじゃなくて?』とおっしゃっております。
それはまあ、そうなんだろうけれど……。
こっこうって国同士が仲良くしましょうねって話し合うことだよね?
でもその担当の人が母様のお父様? だっけ?
病気になっちゃって、それが難しくなって、それなら別の人を選んで国交を続けられるようにしなかったのは王様なのでは?
そういうこと、だよね?
母様もそんなようなこと言ってた。
『そうよ! イリヤは賢いわね! その通り! ……そういう方面を五公爵家に丸投げしていたのよ、この王は』
『まあ、そのための五公爵家とも言えマース。しかし、外交の公爵が体調不良で出られないようになったら後釜を指示するのもまた王の役割デース。それをしなかったのデース。やはり王として実力が足りていませんネー』
『王太子に選ばれなかった時点で自分の能力、人望不足を自覚すべきだったのですけれどね。それを理解する能力もなかったのですね』
私知ってる。
三人の精霊様の王様への言葉。
しんらつ、っていうんでしょ?
こくひょう? の方が正しい?
どっちにしても印象最悪なんだなぁ。
「あ」
顔を上げて黒い兎さん――守護神様を見た時、守護神様は王様の方を見てからゆっくりと目を閉じた。
なんだか諦めたかのようだ。
『イリヤ、国王に伝えてちょうだい! 守護神が”もういい。わかった。お前は試練を受けないと選択したと了解した”と』
「わかりました」
仕方ない。
私としても、そう見えた。
ジュジュ様に言われたことをそのまま伝えると、王様は顔色を青くする。
そのまま、なぜか私を睨みつけた。
なんで!
私関係ない!
「陛下!」
王妃様がつんざくような声を上げる。
その声色、完全に陛下を非難する声。
王様としてはやっぱり試練を受けずに加護をもらいたいようで、まだなんかもごもご言っている。
いやあ、無理でしょうよ。
「いたしかたありませんわね。ともかく、グレン王子はこのまま我が家でお預かりいたしますわ。そういう約束でしたもの。荷物はあればのちのち届けてくださいませ。さ、イリヤ、王子をお連れして帰りましょう」
「ま、待ちなさい! 陛下が守護神様のご加護を受けられない今、グレンしか守護神様の加護を使えないのよ! 敵に動きがあったら――」
「王妃様、文句を言う相手はわたくしでもイリヤでも、ましてグレン王子でもないでしょう?」
グレン王子と帰れる!
嬉しくてグレン王子に駆け寄ると、グレン王子も困惑の中に期待を滲ませた表情で私を見上げた。
包帯で巻かれた手を掴み、「いっしょにかえろう!」と言うとまた涙が滲み始める。
グレン王子は、結構泣き虫だなぁ。
「陛下、少なくともグレン王子は守護神様の加護を使うには魔力が安定しておりません。王族として育った以上、魔力が不安定な時期に魔道具や魔法を使う危険性は当然しっかりと学んでおられますね? わたくしとルイシス、イリヤは予定通りにアジュール公爵の代理として国交に出向きます。グレン王子にも同行していただきましょう。幼い殿下が一緒であれば、他国の王家もその健気さに心打たれてくださるはずですわ」
「……くっ……」
「トリア、グレン王子をお連れして」
「かしこまりました」
トリアは母様の侍女。
グレン王子が座る車椅子の後ろに回り込み、私に微笑みかける。
うん……うん! 帰ろう……!
父様と、ブロッサ兄様と離れるのは本当に本当に嫌だけど……グレン王子が一緒なら、外国に行っても私頑張れる気がする。
母様とルイシス兄様も一緒だし、外国に行けばアルド兄様も待っているから。
「――っならば、守護神よ……! グレンの血肉、魔力すべてを捧げる……! 国の守護神ならば国を護る力を見せよ! 敵をこの国から追い出し、我が政権の安定を!」
「陛下、なにを――!」
「っ!」
王様が突然そう叫び、グレン王子の首を掴む。
トリアが咄嗟にグレン王子の体に後ろから覆いかぶさろうとしたが、それを突き飛ばしてもう片手で。
そのまま持ち上げて宙に浮かす。
私、そんなことされたら届かない!
