つまり、あのーーーーーー……私、規格外。……ぽい。
とても普通ではない。
というか前代未聞。
今までの、歴代『星の精霊』様の加護持ちでも四人から与えられた人はいなかったから。
そういう前例もなければ、常識ではない。
だからさすがに、それは隠しておきなさい、とのこと。
おかしいってことなら、仕方ない。
そこは母様たちの意見に従おうと思う。
この世界に生まれて六年だもん。
まだまだこの世界の常識について、私は疎い。
知識がないから、勉強はしているけれど……もっと考えられるようにならなければ。
母様にも「イリヤはいっぱい勉強しているから、貴族の交渉術を学べば一気に賢い子女になれるわ」って言ってた。
そんな淑女になりたい。
なんでも守れる、女の子になりたい。
グレン王子のことも――。
◇◆◇◆◇
翌日、王妃様に呼ばれて登城すると、グレン王子が王妃様とともにお庭で待っていた。
お茶会形式での『条件の話し合い』が行われる。
私はグレン王子が生きていてホッとした。
なんか、会う度にグレン王子が生きている、って安心している気がする。
「御機嫌よう、王妃様。今日は返答をお聞かせ願えるのよね?」
「あら、性急ね。淑女らしくなくてよ」
「今は一分一秒でも時間が惜しいのです。わかっておいででしょう? 王妃様のご実家からも、わたくしに『ニーングルグ女王国ならば伝手があるから』とご紹介をいただいておりますの。旅立つ準備ももうほとんど終わっていますわ。オーヴェン公爵家は外交ができませんものね。……もちろん、あなたのご実家の親類の方々の避難先の確保も、頼まれておりますのよ……聞いておられるでしょう?」
王妃様が無言になって目を背ける。
母様、他の公爵家の人たちからすごく頼られているみたい。
って、そうじゃなくて!
今日はしっかりと母様の“話術”を学ばなきゃ!
貴族子女たるもの、言葉の裏側に含まれている意味をちゃんと覚えなきゃいけない。
……まだ難しいけれど……。
母様が席に着くと、王妃様は険しい表情でお茶を一口。
なんか、すごくピリピリしている……怖い。
『妊娠中だから具合が悪いのかしら?』
『そんな感じですわね』
『それにしても空気悪いデース』
王妃様、にんしんちゅうなんだ。
にんしんって、ええと……お腹に赤ちゃんがいること、だよね。
前世の母も、多分、妹を産んでいた、し。
『そうよ。最悪、そのことを盾にしてグレン王子を国から連れ出しましょう』
『あんまりよくない方法ですわ。命を盾にするなんて』
『ま、仕方ないデース』
ジュジュ様は相変わらず押せ押せな感じだけれど、ローゼクリス様は慎重派。
ロクサーナ様は中立なのかな?
グレン王子の方を見ると、不安そう。
私と目が合うと、困り顔。
安心させてあげたくて微笑むと、ほんの少し目を見開く。
やっぱり、まだ声は出ないんだなぁ。
早く声が出るといいね、グレン王子。
「単刀直入に言うけれど、グレンを連れて行ってもらっても構わないわ。その代わり、次の王太子はわたくしが産む子にします。それを飲み込み、『星の精霊』の加護を持つイリヤにはわたくしの子の婚約者になる。それが条件」
「っ!?」
「……ご懐妊は間違いありませんの?」
「先日お医者様からまず間違いないとお聞きしましたわ」
「でも、生まれてみなければ男児かどうかはわからないでしょう? イリヤを婚約者にするのは気が早いのでは?」
母様がそう言い返すと、キッと母様を睨みつける王妃様。
赤ちゃんの性別ってもうわかるの?
『まだわからないわよ。だってまだお腹の中の赤ちゃんの性別が定まっていないもの』
『この、人間の母親の一部にいる絶対に男児が生まれてくるって思ってるのなんなのデース?』
『さあ?』
ですよね。
「それに、この国は女性でも王になれますでしょう? なぜそれほどまでにグレン王子を蔑ろになさるの? 母親としてそこまでグレン王子を疎むのはなぜなのですか? いい加減お可哀想ですわ。他の貴族が王妃様たちをどうおっしゃっているのかご存じですか? グレン王子に対するその態度、問題視されておりますわよ?」
「っ……それは……!」
「お育てになるおつもりがないのでしたら、わたくしにお任せなさい。わたくしがなんとかいたします。王妃様は新たに生まれてくる御子のことに注力なさればよろしあのです!」
はっきり告げる母様に、王妃様は舌打ちした。
……王妃様が舌打ち……!?
「そうね。あなたにあげるわ」
「王妃様」
「新しく生まれてくるこの子に、きっと守護神様は御加護を与えてくださるはずだもの……! “コレ”がいなくったって大丈夫。それに、あなたも外から援軍を連れてきてくれるでしょう? 神の加護も持たないあんな蛮族の国に、我が国が負けるわけがないわ! 朱雀の加護を持つアルド・オルヴァーニュもいるのだしね!」
アルド兄様……!
あ、あれ? でも、アルド兄様は――。
「残念だけれど、アルドはオルヴァーニュ公爵家から除名していますわ。この国の命令にあの子は従う義務を持たない」
「……!? なんですって!? なによ、それ!? 知らないわよ!?」
「陛下は許可を出してくださいましたわ。ご存じでないのなら、陛下との会話不足ですわよ」
「っ……!」
