転生したらHP10000だった。


 三人の“星の精霊”様たちは、口を揃えて『タタングに聞いて~』と言われる。
 本当に詳しくはわからないんだって。
 アーツ魔法ってことは、私にもアルド兄様みたいにアーツ魔法が使えるかもってことだよね?
 めちゃくちゃ気になるんだけれどー!!
 い、いや、でもまずはグレン王子!
 母様に手を引かれて一階の関係者通路に入る。
 え、こっち入っていいの? と困惑していたら演者控室に迷うことなく入っていく。

「ルイシス! 素晴らしい演奏だったわ! 母様はあなたを本当に誇りに思います!」
「わあ! 母様っ!」
「にいさま、かっこよかった!」
「イリヤ……」

 母様に続いて抱き締める。
 そうだね、グレン王子にも会いたいけれど、優先すべきは頑張ったルイシス兄様だよね。
 でもグレン王子も気になる。
 いやいや、ルイシス兄様にジュジュ様のこと伝えなきゃ!

「ルイシスにいさまです!」

 頭を撫でてもらってから、体を離して宙に浮かぶジュジュ様にルイシス兄様を紹介する。
 兄様も母様も表情が「?」って感じだけれど、兄様に加護がもらえるかもしれないんだからその方がいいよね?

「イリヤ? 天井になにかあるの?」
「ジュジュさまがね」
「え? な、なに? 誰……?」
「ジュジュさま!」
『そうですわよ! [学問]の精霊よ! 言っておやりなさい、イリヤ!』
『はいはーい! [季節]の精霊ロクサーナのワタシもいマース! ルイシスに加護あげたいデース!』
「がくもんのほしのせいれいのジュジュさまと、きせつのほしのせいれいのロクサーナさま! ルイシスにいさまのえんそうだいすきなんだって! ルイシスにいさまにかごをあげたいっていっているの! こころのせいれい、ローゼクリスさまもいっぱいぱちぱちしてたよ! すてきだって! にいさまのえんそう、すばらしいって! いっぱいほめてくれてるよ!」

 できるだけわかりやすく伝えることができた、と胸を張る。
 三人の星の精霊様のことを紹介もできたし、ルイシス兄様に加護をあげたがっていることも教えられたし!
 でも、母様とルイシス兄様は顔を見合わせるばかり。
 あれ、私なんか変なこと言った?

「星の精霊様、が……三人……?」
「そう! [がくもん]のせいれい、ジュジュさま。[きせつ]のせいれい、ロクサーナさま。[こころ]のせいれいローゼクリスさま! ジュジュさまとロクサーナさまがルイシスにいさまのえんそうですっごくかんどうしたから、にいさまにかごをあげたいんだって」
「か、加護って、イリヤが星の精霊にいただいた加護ってこと……?」

 ん? 兄様はなんだか怯えているように見える。
 母様も。
 なんで?

『イリヤに与えた加護とは違う加護よ。ルイシスが望むならルイシスの望む形の加護を与えるわ。希望、または願いを聞いてほしのだけれど?』
「えっと、ルイシスにいさまがのぞむかたちのかごをあげたいんだって。どんな加護がいい? って、聞いて、って言ってるの」

 母様とルイシス兄様が顔を青くする。
 なんでぇ?

「なにか、だめなの……?」
「イ、イリヤには、難しいかもしれないのだけれど……僕に星の精霊様の加護をいただくのは、その……万が一国外に公演にお誘いいただいた時など……陛下がお許しくださらないことに、なるかもしれないんだよ」
「そ、そうね。お気持ちはとても、光栄なのだけれど……」

 思わず宙に浮かぶ三人の精霊様を見上げてしまう。
 なんか困るらしいよ。

『そう、残念ですわ。また演奏会をする時は呼んでくださいませね。加護はご迷惑になるようですから、代わりに祝福を与えますわ』
『ワタシもデース。ただのファンなので、そんなに深刻にとらえないでくださいデース』
「えっと、かごがいらないならまたえんそうかいをするときに、またはよんで、だって」
「まあ! 星の精霊様たちがそこまで仰ってくださるなんて……!」
「お許しくださるの?」

 不安そうな兄様とは正反対に、母様は口元に指先をあてがい、感涙。
 許すもなにも、ジュジュ様もロクサーナ様もにっこにっこ。
 お二人とも演奏が聴ければいいって言ってるよ、と改めて伝えると、ルイシス兄様も安心したように朗らかに微笑んだ。

『きゃー! イケメン!』
『ちゅきっ!』

 そしてこの反応である。
 精霊様もイケメンには激弱なんだなぁ。

「あ。……でも、その、イリヤ。星の精霊って、もしかしてイリヤに加護を与えてくださっている四神と対なす存在? い、いるのかい? そこに?」
「うん」
「はっ! ……と、いうか、イリヤ、あなたは星の精霊様の姿が見えたり、声が聞こえるの?」
「うん」
「なんてことなの……!」
「ど、どうしよう、母様」

 あれ? 母様の反応が、私がHP10000とわかった時の反応なんだけれど?
 え? まさか? まさか、また?

「イリヤ、なにかだめなのこ、した?」
「そ、そんなわけないでしょう! 星の精霊様の姿を見て、お声を聞けるなんて……! ……ええと……そ、そうね……簡単に言うと……」

 母様、かなり困り果てながらも教えてくれようとしたが、扉がコンコン、とノックされる。
 廊下から女性の声で「ルイシス様、皆様がお待ちです」と告げられた。
 皆様がお待ち……?

「そうだった。星の精霊様たちのお話をお伺いしたいところですが、本日の演奏会を開催してくださった皆様にご挨拶へ行かなくてはいけません。また、演奏会の際はお越しください。誠心誠意全力で僕の音楽をご堪能いただきたい」
『きゃー!』
『絶対来マース!』

 ………………アイドル?