転生したらHP10000だった。


 数日後、お城に招かれて私はサリィと母様と着飾って登城した。
 カルレットさんからの招待状。
 そしてルイシス兄様からも招待状が来ている。
 お城なんか久しぶりだなぁ。
 で、なんか馬車ロータリーにめっちゃ馬車がある。
 前に来た時に比べて、なんか……すごい。
 馬車の数もそうだけれど、着飾っている貴族のご婦人がめっちゃいる。
 私も飾られているから人のことは言えないんだけれどね。
 なんかすっごい。
 それに子どもの数もすごい。
 一人の奥さんが二人、三人連れている。
 男の子だったり女の子だったり。

「演奏会にご来場の方はこちらへ。小宮殿の方で行われます」
「ありがとう。ところで、グレン殿下は出席なさるのよね?」
「そうお聞きしております」

 前を歩いていた奥さんが城の使用人に大声で聞いている。
 使用人も笑顔で答えていた。
 よかった、じゃあ今日こそグレン王子に会えるんだ……!

「ちょっと! 今日は本当にグレン王子が出席されるのでしょうね?」
「は、はい。そうお伺いしております」
「伺っているでは困るのよ! うちの子を王子に紹介するのよ! ちゃんと確認してきてちょうだい!」
「か、かしこまりました。確認してまいります」

 お?
 なんか斜め後ろでは別の二人連れのお母さんもお城の使用人を捕まえて問い詰めている。
 と思うと入り口で招待状の確認をしている騎士にも「今日はグレン王子の顔見せと聞いているのだけれど、本当かしら?」と詰め寄る子連れご婦人。
 お、おお……すごい!
 あちこちで使用人が掴まっている。
 そしてみな一様に「グレン王子は今日、本当に演奏会に現れるのか」という質問をしていた。

「王妃様が隠しすぎた弊害ね」

 母様が扇で口許を隠し、冷ややかな声で呟く。
 よくわからないけれど、みんなグレン王子に会いたかったんだね!
 グレン王子にいっぱい友達ができたらいいなぁ。

「さ、行きましょう。イリヤ」
「はぁい、母様」

 それにしてもどの家も侍女を連れてきているからすごい人数だなぁ。
 各家が連れてきた使用人は小宮殿に入ると別室に待機となるらしく、サリィとは一時離れる。
 招待状を母様が受付に渡すと、「ルイシス様の……」と驚いた表情をされた。
 そして案内されたのは二階のボックス席。
 母様がそれに対して頬に手を当てる。

「まあ。王妃様ったら考えたわね」
「え? なに?」
「グレン王子も恐らく二階のボックス席でしょう。ボックス席にいたら挨拶にも行けないわ。これで『出席はした』と言い訳もたつ、ということよ。どうしてそんなにグレン王子を人に会わせたくないのかしらね?」
「いまからさがしにいって、あいさつできないの?」
「間違って他の方の席に入ると恥をかくのよ。ボックス席は基本的に他の誰かに邪魔をされないように、音楽や観劇を楽しむための席なの。……隣の小宮殿ならボックス席がないから、てっきりそっちで行われると思ったのだけれど」

 え? ん?
 え!? もしかして……!?

「グレンおうじ、きててもみんなにあえない!? イリヤもあえない!?」
「今から使用人に聞いて案内してもらえるか聞いてみましょうか? 一階席が埋まる前なら多少時間があると思うもの」
「いく、いく」
「わかったわ」

 母様が手を引いて案内された私たちのボックス席から出ようとする。
 しかし、カーテンを開けた先の廊下にいた騎士が「間もなく開演ですのでお席にお戻りください。お飲み物は今、小間使いが持ってまいりますので」と言い出す。
 部屋から出るなってこと?
 グレン王子を探しに行くなってこと!?

「王妃様とグレン王子、主催のカルレット様にご挨拶に行くだけよ。案内してくださる?」
「ジザックス嬢のところへでしたらご案内いたします。王妃様はお怪我をされている殿下を心配されて、挨拶は遠慮してほしいと」
「あら、演者の母として(・・・・・・・)も、挨拶しておきたいと言っているのよ。わたくしなにかおかしなことを言っているかしら?」

 多分私とグレン王子の婚約話は公表されてないから、それは言っちゃダメなんだっけ。
 母様がにっこり微笑むと、騎士が目を泳がせる。
 そして消えそうな小声で「上にお聞きしてまいります」と立ち去った。
 もう一人の騎士が「中でお待ちください。お呼びします」というが、振り返った母様はやっぱり笑顔で「騎士であるあなたはご存じでないでしょうけれど、王妃様にはわたくしからそろそろお小言を申し上げねばと思っていたの」と言い放つ。
 え、あ、あ……。

「…………かしこまりました」

 顔が笑っているのに……こわい……!
 騎士もそれを察してか、頭を下げてから正面を向いてこっちを一切見なくなる。
 こ、これは……母様怒っている……!?

「かあさま、おうひさまになにかいうの?」
「ええ、言うわ。さすがにね。守護神様のご加護があるのは陛下だもの。でも、さすがの陛下も王妃様の行いにはなにも言えないはずよ。だっていい加減にしていただかないと。グレン王子の従者も決まらない。来年には殿下の社交界デビューもあるのに、お友達もいないなんて王家がなにを言われるかわからないのかしら? 今でさえ、開始前から城の使用人に問い詰めるご婦人ばかりだったのよ? うちだけではないの。王妃様たる立場の方が一体いつまでもなにをしているのかしら? 演奏会は、音楽を通して交流する場なのよ? なんで引きこもろうとしているのかしら」

 怒涛の不満ががががが。
 母様から止まらない文句が……!