転生したらHP10000だった。


「改めて言うが、あくまでも魔力が安定する十歳以降に使いなさい。ただ、身につけておけば魔道具へ自然にHPが蓄積されていく。そしてこの魔道具は蓄積されたHPを、任意の者へ与えることができる。まあ、だから周囲の者のHPが可視化できるのだが」
「……どういうこと?」
「ええと、つまりこちらの魔道具はお嬢様のHPを少しずつ吸収、蓄積。つまり、貯めることができるのです。そして貯めたHPはお嬢様があげたい、と思った人にあげることができるのですよ」
「ええ!? すごい!」
「はい。それにとても珍しい色の魔石ですね」
 
 覗き込むサリィ。
 確かに。
 家にある魔石ってランプの黄色と、トイレやお風呂の時の水色の魔石くらい。
 
「そうだろうな。これはハーピードラゴンの心臓から取れた魔石だ。非常に珍しい」
「はーぴーどらごん」
 
 って、魔獣?
 ドラゴンいるの、この世界!?
 
「どんなドラゴンなの?」
「とにかく体力が多い。数十年前のスタンピードの時のボスで、討伐に一週間以上かけて倒したそうだ。過去最長のスタンピードを起こした魔獣として記録に残っているよ」
「そ、そのような魔石で作られた魔道具なのですか!?」
 
 サリィがすっごく驚いている。
 なんかやっぱりすごいシロモノなのか。
 え……それって、じゃあ……。
 
「すっごくたかそう」
「そ、そうですね。値段が気になってしまいますね」
「はっはっはっ! 値段か! 買ってきたものではないさ。父の父が若い頃にスタンピードに参加し、トドメを差して褒賞としていただいたものなんだよ。父の父は騎士ではないがスタンピードの際は貴族であるが故に討伐に参加をした。それが貴族の責務であったからな」
 
 とのこと。
 なんで騎士に所縁があるわけでもない我が家の父の父――私からすると祖父は、義務として参加したらしい。
 戦闘が得意なわけではないが、後方支援のために。
 けれど、スタンピードのボスはHPの多いハーピードラゴンだったため想定以上に戦闘が長引き、先陣を切ったメイジス公爵家の侯爵や騎士たちが疲弊してしまった。
 メイジス公爵家や騎士団長が疲弊したり怪我をしたりして前線にいられなくなってオーヴェン公爵家、アジュール公爵家、ジング公爵が指揮官を引き継ぎ、そしてやっぱり怪我で動けなくなってしまう。
 最終的に一番弱かったオルヴァーニュ家が指揮官を引き継ぎ、祖父は「王に出ていただくことになるかもしれぬ」と死を覚悟したそうだ。
 そりゃあ強い人たちが軒並みやられてしまったあとだもん、そう思うよねぇ。
 でもさすがに一週間以上戦い続けていたので、ハーピードラゴンも弱っていたらしく、祖父の放った魔法でついに息絶えた。
 当時の王様はそれを大層喜んで賞賛して、ハーピードラゴンの心臓から出た魔石を褒美に与えたそうだ。
 祖父は『自分が戦いに参加する前に多くの騎士、他の公爵家が死力を尽くしたからです』と言って辞退しようとしたがトドメを差したのが祖父だからと言ってほぼ押しつけられたそうな。
 当時の王様、多分テンパってたんだろうな、というのが父の見解。
 そうか、そうだよね。
 守ってくれる見方がバッタバッタと倒れていって、いよいよ自分がそんな魔獣と戦うことになるって寸前で祖父が倒してくれたら嬉しくなっちゃうか。
 でも実際戦線維持をしてくれた人たちの気持ちとしては『俺たちも頑張ったのに』って思うよね。
 結局祖父は王様に進言して予算を削りだして参加した騎士に平民貴族関係なく報奨金を出し、他の公爵家にも勲章を王から直接贈るように式典を企画。
 そうしなければ敵が溢れかえっていた、とのこと。
 祖父、相当気を遣ったんだろうな。
 私にはシレっと言っていたけれど、その騎士に出された報奨金も人一人が一年生きていられる金額を家族の人数分だったらしいよ。
 よくそんな予算があったもんだとおもったけれど、ジング公爵家と話し合って貯蓄分と翌年の予算から出したんだって。
 それをやった祖父の手腕がすごい。
 
「と、まあそういう事情で値段らしいものはない。歴史がある魔道具というわけでもないが、今後家宝の一つとして継いでいくものではあった。だから、イリヤが持っていて構わない。むしろ、イリヤが持っていた方がいいものだろう。父様が持っていても疲れてしまうからなぁ」
「そうなの? 本当にいいの?」
「いいよ。でも、もう一度言うが魔力が安定する十歳頃まで付与はしてはいけないよ。持っているだけにしなさい。サリィに聞いているだろうけれど、十歳になるまで魔力は不安定で魔道具に魔力を通すと爆発してしまうからね。それが約束できるのなら、グレン王子を我が家の離れに療養させるのは父様がなんとかするから」
「わかった! やくそくする!」
 
 グレン王子を助けられるなら、やってみせる。
 魔法使うとかよくわからないし。
 いつか使えたらいいな、って思っているけれど、持っているだけならそれでオッケイ!
 
「よろしい。では、しっかり身につけておくように」
「はあい!」
 
 手を挙げてできるだけいい返事。
 父様が去ったあと、サリィが肩を落として溜息を吐く。
 
「お嬢様のサイズに合わせてネックレスの鎖を調整されてから渡すなんて」
「んえ?」
「なんでもございません。よかったですね」
「うん!」