転生したらHP10000だった。


 なんとかしないと。
 助けないと!
 でも、お城は簡単に入れない。
 前にお城に行った時も三階には行けなかった。
 サリィとカルレットさんを見上げる。
 私には思いつかない、なにか、グレン王子を助ける方法を……お願い、教えてほしい!
 私みたいに、死なないでほしい……!

「…………ルイシス様を巻き込むことはできますか?」
「へ?」
「カルレット様……?」
「方法がまったくないわけではありませんの。ですが、それにはルイシス様のお力をお借りした方が確実だと思いますわ」
「ルイシス様のお力を?」
「ええ。ルイシス様は現在学生寮にいらっしゃるので、わたくしが学園でお声がけして協力をお願いしてもよろしいかしら?」
「は、はい! イリヤもルイシスにいさまにおてがみかきます! カルレットさまにおちからじょえしてくださいって!」
「イリヤさんのお願いがあれば、なおさら聞いてくださりそうですわ。お願いいたしますわね」

 サリィは困惑顔。
 私はそれに気づかず、立ち上がって「きょうはもうかえって、にいさまにおてがみかいてきます!」と帰る気になっていた。
 それをサリィに止められる。

「お待ちください、お嬢様。詳しくお聞きしてからでないといけませんわ。お嬢様がグレン王子に会うために、なにをするのか。ちゃんとお聞きしておきましょう」
「あ、そうか!」
「そうですわね。わたくしの計画を一応お聞きになってからでもいいと思いますわ。と言っても、別段おかしなことをするつもりはございませんのよ。ルイシス様に、演奏会をしていただくの」

 手を合わせて、微笑みながら言うカルレットさん。
 演奏会!
 ルイシス兄様は音楽も絵画も芸術系ならなんでもござれな人!
 当然、その名前は国の内外に有名!
 なんかとにかくすごいらしいよ、うちのルイシス兄様!

「こう言ってはなんだけれど、ルイシス様は多くの“ファン”をお持ちなのですわ。その中には王妃様もおりますの。第一段階として、わたくしが主催となって演奏会を城で開催できないか打診してみますわ。その時に、社交界前の令息と令嬢もご一緒に、とお声がけしますの。すでにイリヤさんが婚約者に決まっておりますが、それは正式に公表されていないのですよね?」
「はい。さすがにまだ、お二人とも幼すぎますから……」

 サリィが頷く。
 そうなの?
 私とグレン王子の婚約って世間一般ではまだ公表されてないの?
 あれ? でも私は婚約者なんだよね?
 え? どういうこと?

「王子と歳の近い貴族はそれを知らないので、婚約者は無理でも側室の立場を狙って多くの貴族が演奏会で王子にお目通りを、と願うはずです。もちろん、その“場”はわたくしが作りますわ。やはり手回しが必要ですの。待っていてくださいませんか?」
「っ……でも……」
「時間がないのですわよね? ですが、城で王子殿下のご無事を確認するには手回しは必須ですの。わたくしを信じて待っていてはくださいませんか?」
「お嬢様」

 サリィもカルレットさんに賛成らしい。
 時間がないのだけれど……。

「ぶじが……グレンおうじがちゃんと“生きて”るのなら、いいんです。生きているって、わかるだけでいいです……! イリヤあえなくてもだいじょうぶ。グレンおうじがいきてるってわかったらそれだけでいいです!」
「イリヤさん……」

 会ってお誕生日おめでとうって言いたいけれど、それよりもまず、なによりもグレン王子が“生きてる”って、無事でいるって知りたい。
 会えなくてもいいから。
 とにかくまずは、生きてるって知りたい。

「おねがいします、カルレットさま。グレンおうじが“生きている”か、どうか、それだけでもしらべられませんか?」
「っ……そこまで緊急、ということですの?」
「おねがいします……!」
「カルレット様」
「わかりましたわ。まさか、とは思いますけれど……今日中に調べます。任せてくださいませ」
「おねがいします……!」

 頭を下げる。
 グレン王子、生きていて。
 お願い、それだけでもいいから!
 サリィに肩を抱えられ、その日は家に帰る。
 カルレットさんはすぐに城に行ってくれると言っていた。
 騎士団長のお父さんに会いに行くと言えば、登城に許可はいらないらしい。
 そして騎士団長さんなら、王子様に会う口実はいくつもある。
「だから安心してくださいませ」と言ってくれた。
 それでも、その日はずっと不安。
 ご飯も喉を通らない。
 あんまりにも私が落ち込んでいたから、父様にも母様にもブロッサ兄様にも心配された。
 アルド兄様とルイシス兄様は学生寮。
 それも寂しくて、しょんぼりとした?

「旦那様、実は」

 私の代わりにサリィが事情を話してくれた。
 グレン王子の身の安全だけでも知りたいの。
 それをカルレットさんに依頼した、とサリィが言うと父様が眉を寄せる。

「イリヤの加護が、グレン王子の危機を感知しているということか?」
「イリヤお嬢様ご本人はわかっておられませんが、カルレット様はそう受け取られたようで」
「確かに、神の加護の中にはそういったものがあると聞いたことがあるな。しかし……王子殿下の身が危険というのがよくわからない。確かに最近またよくお怪我をされたと聞いていたが……」

 困惑の父様と母様。
 父様たちはグレン王子が怪我をしていること、知ってたの……!?
 教えてくれたらよかったのにー!