転生したらHP10000だった。


 一週間後、アルド兄様の馬に乗せられて人生初のピクニック!
 場所は王都郊外の草原。
 王都、めっちゃでっかい。
 そして私が住んでいたのは王都の中心街、貴族街というらしい。
 広すぎて空き地がちらほら。
 でも、その空地も高位貴族の所有地なんだって。
 今のところ使い道がないから、放っておかれているらしい。
 そしてそんな広大な貴族街を出ると今度は平民街という貴族街の数倍の町が広がっている。
 王都ってこんなにでっかかったんだ、と本当に驚いた。
 王都を出るのに一時間くらいかかった気がする。
 でも、王都の城壁を出たらそこは見渡す限りの草原。
 なんて……なんて清々しい空気……!
 
「くうき、おいしい! いいにおい! くさのにおい! つちのにおい!」
「うんうん。いいだろう? 王都の外! 俺も初めて王都の外に出た時に同じことを思ったんだ。で、王都にいるのがものすごく狭苦しく感じるようになったんだ」
 
 アルド兄様を見上げる。
 まるでその時のことを懐かしむように目を細め、微笑む。
 アルド兄様は王都の外が好きなんだ。
 
「国境はキナ臭いし、自分よりも強い魔獣と戦わなきゃいけないこともあるけどね。それでもやっぱり自由になった感じがしていいんだよ。さ、俺の話はこの辺にして、お弁当に最適なところへ行こうか。街道沿いに小川が流れているところがあるんだけれど、すごく綺麗なんだよ」
「おがわ!」
 
 アルド兄様おすすめの場所ならきっと間違いないだろう。
 護衛と侍女の馬車を引き連れ、兄様が手綱を握る馬の颯爽とした足取り。
 すごい、見渡す限り草原。
 少しすると、水の流れる音がする。
 アルド兄様に「見てごらん」と促された方を見ると、本当に小川が流れている場所。
 
「この小川はもう少し上った先にあるグランジューレの湖から流れているんだよ。もっと王都の近くに行くと整備されて水道として運用される」
「みずうみ? みてみたい!」
「さすがにグランジューレの湖はもっとイリヤが大きくなってから出ないとダメだよ。グランジューレの湖に行くには暗愚の森を通らなければいけないんだ。暗愚の森にはランク2~3の魔獣が出る。護衛をつけていても、ちょっと危ない」
「あぶないの? らんく2と3の魔獣はいっぱいつよい?」
「ランクで言えば低ランクだけれど、低ランクは数が多い……群れで襲ってくる場合が多いんだ。いっぺんにいっぱいの魔獣に襲われたら、弱くっても危ないんだよ。イリヤが自分の身を自分で守れるようにならないと連れていけない」
「いっぱいはこわいね」
「そうだよ。いっぱいは怖いし危ないんだ」
 
 多勢に無勢ってことか。
 それじゃあ無理か。
 でも、むしろそれなら目標ができた!
 いつか自分を鍛えて暗愚の森を通り、グランジューレの湖っていうところに行ってみよう!
 きっとすごく綺麗な場所なんだろうなぁ。
 
「お嬢様、アルド様、シートを敷きました。お弁当にいたしましょう」
「「はーい」」
 
 サリィがお弁当を準備してくれて、兄様の馬から下りる。
 私のことはぬいぐるみかなにかのように両脇に手を入れてひょいと持ち上げられて、運ばれる。
 サリィたち使用人が早起きして作ってくれたお弁当。
 毎日部屋で食べているものよりも簡単なもののはずなのに、やっぱりこういう開けた場所で食べるおかげかいくらでも食べられそう。
 
「うーん、やっぱり外で食べる飯は美味いなー」
「むーーー!」
「イリヤもそう思う? もしかしたらイリヤは俺と同じ性質なのかもなぁ。そうだとしたら、ちょっと可哀想だけれど」
「ごっくん。……どーして?」
 
 私可哀想? なにが?
 本気でわからないが、アルド兄様に言わせると「女の子冒険者になれないだろう?」と言われる。
 女の子って冒険者になれないんだ……?
 
「もしも俺と同じ性質なのだとしたら、冒険者になれないってすっごく悲しいと思うよ」
「うーん?」
「まだイリヤにはわからない、か。まあ、俺の考えすぎかもしれないしね。ブロッサ兄さんやルイシス兄様のような性質なら問題ないから大丈夫」
「うん?」
 
 確かに、私はこの世界に生まれてまだ五年。
 この世界のことをまだよく知らない。
 でも、この世界のことも家族のこともどんどん好きになっている。
 お弁当を食べたあと、兄様に草花について教えてもらう。
 王都の近くにも薬草が多く生息しており、王都の薬師や駆け出し冒険者はこういった校外に薬草を摘みに来るらしい。
 
「これはデュアナの花。傷薬の材料になる」
「きれいなおはな!」
 
 小さな白い花弁。
 真ん中に紫色の線が入っている。
 これが傷薬になるの?
 
「イリヤにもつくれる?」
「うーん、どうかな? 魔力量や魔力属性にもよるからなぁ」
「それってどうやったらわかりゅの?」
「十歳になると魔力量や魔力属性が安定してくるんだ。誕生日を過ぎたら国民の誰しもが女神神社で調べてもらうんだよ」
「めがみじんじゃ」
 
 神社!? 神社なの!? 神社があるの!?
 なんか想像していたのと違った。
 ドレスや冒険者とかがある世界だから、教会とかなのかと思ったら神社なんだ。
 まあ、でも私の前世と少し似てるところがあるのは安心感があるかも。