転生したらHP10000だった。


 お部屋に戻ってからお着替え。
 ずっと旅の服だったから、部屋着に戻ったらドッと疲れがきた。
 サリィに「湯浴みしますか?」と聞かれたけれど、もうとにかく眠い。
 体力有り余っている私がこんなに眠いなんて。
 精神的に疲れた、ってことなんだろう。
 
「ねたい」
「かしこまりました。ゆっくりとお休みください」
 
 普段の部屋着から寝間着にまた着替えさせてもらい、そのままベッドに入る。
 本当はちゃんとお風呂に入ってからの方がいいんだろうけれど、サリィが気を遣ってベッドに入れて布団をかけてくれた。
 そのままいつの間にか眠ってしまう。
 目を覚ましたのは翌朝。
 サリィといつものメイドたちがあくせく寝室を動き回っている。
 桶に入った水で顔を洗い、メイドがタオルで顔を拭いて、みんなが私の寝間着を脱がせて余所行きのワンピースドレスを着せられた。
 なんでこんなに派手めなワンピースドレス?
 首を傾げたけれど、サリィには変な微笑み。
 まあ、なんかあるんでしょう。
 朝食は部屋で食べますか、食堂で食べますか、と聞かれたので食堂で! と答える。
 だって久しぶりに家族の顔を見ながらご飯を食べたい。
 みんなでご飯を食べて、そんで今日はグレン王子に手紙を書こう。
 王家に報告に行かなきゃいけないって昨日シーニャンさんが言ってたもんね。
 そのあたりもどうなったのか、父様や母様に聞いてみよう。
 というわけで食道に下りる。
 扉を開けてもらい、食堂に入ると私以外の家族が勢揃い。
 みんなの顔を見たら嬉しくなって、はしたないとわかっていてもテーブルの方に駆けてしまう。
 
「と」
「「「「「イリヤァアアア!」」」」」
 
 父様、母様、兄様、と呼ぼうとした。
 と、までは言えた。
 でも、全員立ち上がって全力ダッシュで私の方へと走って来たからなにも言えなくなった。
 あとびっくりしたのはみんなの顔。
 顔の穴から出るすべての液体が垂れ流しになっている。
 そのまま抱きついてくるから本当にびっくりした。
 泣くかと思った、私が。
 でも、みんなにそれだけ心配されたのだ。
 
「心配したあああ!」
「よく無事に! よく無事にぃ!」
「よかった、よかったぁぁぁぁ! よく無事に帰って来てくれたイリヤー!」
「パパは、パパは心配で、心配でっ! 生きた心地がしなかったよおおおおっ」
「イリヤァ、よかった、よかった! お兄ちゃんはイリヤが無事で、本当にっ」
「よく、帰って、来ましたね……イリヤ! 無事で、本当に……よかった……!」
 
 ――と、泣きじゃくっているのだもの。
 熱い。
 みんな本気で泣いて、心配してくれて、背中熱くなってて。
 私、こんなに誰かに心配されたことがない。
 ううん、心配されたことなんてなかった。
 これが、多分、本当に、2普通の……家族。
 目を閉じる。
 私の胸も熱い。
 
「イリヤも……イリヤも、とうしゃまとかあしゃまと、にいしゃまたちに、ずっと……あいたかった……。……あいたかったぁ!」
 
 自分でも信じられないぐらいに、溢れた。
 私の心、実はずっと我慢していたみたい。
 そうだ、私、やっぱり家族と一緒にいたかったの。
 私の憧れの“家族”。
 父様も母様も兄様たちも、みんな私の家族。
 前世では得られなかった、私を愛してくれる……“家族”!
 私だけの家族。
 私のほしかった家族!
 私はずっとずっと、私のことを愛してくれる家族がほしかった。
 私の、私の……私だけの!
 
「イリヤっ」
「うん、うん、兄様たちもそうだよ!」
「本当によく頑張ったわね……イリヤ」
「うわあああん! うわあああぁんっ!」
 
 自分でも制御できないほどに涙が止まらない。
 感情が暴走している。
 お腹が空いているのに、今は泣きたい。
 私、寂しかったんだ。
 家族と離れたくなかったんだ。
 二週間のはずだけれど、その間本当に本当に寂しかった!
 だからまた、家族のところに帰って来れて嬉しい!
 嬉しい、嬉しい、嬉しい!
 私、家族がこんなに大好きだったなんて!
 
「ひっく、ひっく……ひっく」
「よしよし、仕事のある父様の代わりに兄様たちがイリヤの話をいっぱい聞いてあげるからね」
「くそう! パパもイリヤとお話ししたい!」
「早く出勤してくださいませ」
 
 やっと落ち着いて来た頃、私よりやばい顔をしていたはずの家族はいつもの家族に戻っていた。
 唯一父だけ拗ね散らかしながら出勤。
 そうか、もうそんな時間になっているのか。
 あれ? 父様、ご飯食べたのかな?
 ご飯食べたところ見てないんだけれど。
 
「ああ、イリヤ。こんなに泣いて、目が真っ赤だわ。これではシーニャン様に会わせられない。今日もアルドがお相手するから大丈夫よ。ゆっくり休みましょうね」
「んんんん……みんなとごはんたべる」
「「「食べましょう!」」」
「お、俺もイリヤとご飯食べたいのに……!」
 
 シーニャンさんは敷地内の離れにいるらしく、アルド兄様は昨日から食事を離れで取っているそうだ。
 アルド兄様はシーニャンさんからの信頼が厚く、かなり上機嫌になっているらしい。
 母様は「もしかしたらもしかしてなのかしら」となぜか嬉しそうに頬に手を当てていた。
 なんだろうか、もしかしたらもしかして、って?