転生したらHP10000だった。


「シーニャン嬢、あまり質問責めにしてはなにも答えられませんよ」
「そうですわ。今着いたばかりのようですし、まずはお宿に案内いたしましょう」
「あ、そ、そうか。すまなかったな」
 
 モーリスさんと、近くにいた女の子と似た格好のお婆さんが女の子を引き離す。
 アルド兄様のことも知っているようだし、兄様のお友だちなのかな?
 それにしては兄様よりも私に年が近いように見えるけれど。
 
「そうだ、まだ名乗っていなかったな。私はシーニャン。巫女見習いなのだ」
「しーにゃんしゃま」
「お姉さまと呼んでもいいぞ」
「しーにゃんおねーしゃま?」
 
 思ったよりもフレンドリー!
 それに、巫女見習いってことは朱雀様のケンゾクなんだよね?
 すごーい!
 ところで、なんでものすごくニコーーー! としたんだろう?
 
「ふ、む、むふふふふふ……」
「シ、シーニャン様?」
「な、なんでもないぞ。ン、んふふふふふ。んふふ……。よしよし、イリヤは素直だな。よし、シーニャンが村を案内してやるからな。最初は宿屋だったか? 一緒に行こうな」
「はい!」
 
 さすがは巫女見習い!
 私よりもちょっとだけしか歳が違わなさそうなのに、しっかりしているんだなぁ。
 私はこんなふうに「案内してあげる」なんて言えないかも。
 そうか、お姉ちゃんになるとこんなふうに相手に気を使えるようになるものなのね。
 淑女教育でも『些細なことに気がつくように、相手をしっかりと見て考えましょう』って教わるもん。
 きっと淑女って母様やシーニャンさんみたいな人のことを言うんだね。
 お手本にしよう! シーニャンさんが嫌がらなければ!
 
「ここがイオの里の宿屋だぞ。どうだ? なかなか綺麗だろう?」
「これって……たけ?」
「そうだ。よく知っているな」
 
 宿屋の壁は竹。
 表も中も、全部竹でできているみたいだ。
 ええ、竹って建物を作る時に使ってもいいの?
 
「竹は成長が早く、強度も凄まじいのだ。カビができたらすぐに取り換えられるようになっているし、色々便利なのだぞ」
「すごーい! しーにゃんおねーしゃまはたてものにもくわしーんですね! すごい!」
「ん、んふふふふふ」
 
 私も興味がないことも積極的に学んでみようかな。
 なんか、こういうふうに解説を入れられるの、かっこいい!
 私もこういう解説やってみたい!
 
「この子にお部屋を手配してほしいのだ」
「かしこまりました。二階の藤の間にどうぞ」
「お、お嬢様、お待ちください!」
「あ、サリィ」
 
 忘れていたわけではないが、馬を馬留に停めて駆けつけてきた。
 サリィの後ろからモーリスさんもやってくる。
 サリィは小走りだけれど、モーリスさんは一歩がデッカいからあっという間に追いついてきた。
 
「シーニャン嬢、イリヤ嬢の使用人を置いて行かないでくれや。俺も一応護衛として雇われているんだしよぉ」
「あ、そうなのか」
「俺に興味がなさすぎるだろうが」
 
 サリィとモーリスさんの後ろには、シーニャンさんの侍女らしい人たちが数人ついてきた。
 宿屋はそれほど広いわけではないので、受付前はみっちみち。
 それでもなんとか二階の藤の間というところに辿り着く。
 おお、二階も竹の壁。
 なんかいい匂い。
 襖を開けると、畳のいい匂い!
 めっちゃ和だ!
 なんか、懐かしい!
 
「イリヤはどうして朱雀領に来たのだ?」
 
 部屋に入るなり、疑問が我慢できなくなったのか覗き込んでくる。
 振り返ってサリィを見ると、首を横に振られた。
 全部は話してはダメ、ってことね。
 
「イリヤのごかごのこと、すざくしゃまにおききしたいことがあるのです」
「加護のこと? ……なるほど?」
「アルドにいしゃまもほんとうはとちゅうまでいっしょだったのですが、くにによびもどされて、かわりにモーリスさまがごえいしてくださったんでしゅ」
「そうなのか」
 
 座布団を差し出され、流れるようにそれに座る。
 座布団、ふわふわだ。
 なんか、なんかこういうの、知っている!
 温泉旅館みたいなところにあるやつだ!
 
「珍しい加護なのだな。なるほど……」
「あ、はい。だから、だいみこしゃまにおあいできるように、このむら、このさと? の、みこしゃまにおあいできるように、えっと……イリヤはなにをしたらいいでしょうか?」
 
 温泉旅館、行ったことないからテンションあがっちゃったけらど、本来の目的を思い出す。
 シーニャンさんなら、この村の巫女様と知り合いかな?
 見習いならもしかしたら知り合いかも。
 あわよくば取次? とかしてくれないかな?
 ん? 仲介? 仲人? あれ? なんていうんだっけ?
 うーん、私まだまだ勉強足りない。
 言葉たまにわからなくなるな。
 前世と合わせていっぱい生きているはずなのに、まだ馬鹿なのつらい。
 
「そうね……。とりあえず、明日、里の人間に挨拶をして回りなさい。この里は外の世界から来た者が最初に辿り着く場所。人が多いけれど、時間をかけてでも全員に自己紹介をするの。相手の顔や名前を把握する必要はないわ。あなたのことを知ってもらうのよ。それをすれば、誰が巫女なのかわかるはず」
「みこしゃまをさがすの?」
「そうよ。それが始まり。そして、それさえ乗り越えればこの先も朱雀領にでやっていける」
 
 なるほど、それがやり方……ルールなのだろう。
 兄様も朱雀領にはルールがあると言っていた。
 
「わかりました! がんばります!」
「うむ! がんばりなさい!」