転生したらHP10000だった。


 ともかく私に加護を与えてくれた星の精霊は、この世界の創造神たる女神ブロントズウェール様に力を与えるほどの存在らしい。
 しかし、四体いる顕現していない星の精霊についての詳細は女神神社でないとわからない。
 私はいったい、なにに加護をもらったの?
 そして、私に加護をくれたのはローゼクリス様じゃないんだ?
 よく、わからない。
 もっと調べないといけないのか。

「かあしゃま……」
「ああ、イリヤ。大丈夫よ。今日はもう休みなさい。父様もそのうち帰ってくるから」
「とうしゃま、まだかえってこない?」
「陛下や王妃様もいるところでグレン王子が狙われたからね。父様も首謀者の調査に参加しているんだ。きっとすぐに一番悪いやつを捕まえて帰って来られるよ」
「う、うん」

 ブロッサ兄様が頭を撫でてくる。
 私のHPは、普通の成人男性よりも多い。
 チラリと見上げると、にっこり微笑まれてまた優しく頭を撫でてくれる。
 気持ち悪いとは思われていない。
 HP10000なんて異常なのに、家族は誰も気味悪がらないんだ。
 それが、本当に嬉しい。

「ともかく、旦那様には連絡だけして後日女神神社に調べにいきましょう。怪我は治ったけれど、出血によって失った血はゆっくりとしか戻らないのだから」
「そうですね。賛成です」
「イリヤ、ゆっくり休むんだよ。血をいっぱい出して、今のイリヤの体は弱っているんだから」
「はぁい」

 やはり調べなければならないらしい。
 私これからどうなってしまうんだろう……。
 家族とは絶対に、はなれたくないよ。


 ◇◆◇◆◇


「お熱が下がりましたね」
「うん。もう大丈夫」
「いけません。熱が出たばかりなのですよ。お食事をしっかり摂って、またお休みください」
「でも、体力が有り余っていて眠れないよぉ」
「横になって安静にしているだけで大丈夫ですよ」

 鑑定士さんに調べてもらったその晩に、私は熱を出した。
 熱は失血によるところが大きいらしく、急速に傷が治癒されたことで体が大急ぎで失った血を生産しているから、らしい。
 HPが多いので、傷さえ治ればオッケーかと思っていたら弊害のようなものはあるんだなぁ。
 血は大事だよね。
 それに、女神様が私が痛い思いをしないように、苦しい思いをしないようにとHPを10000にしてくれたのは嬉しい。
 嬉しいけれど、体力が有り余りすぎて休めと言われましても状態!
 熱があったはずなのに、今すぐ起き上がってランニングできそう!
 私、いける! 働ける! って感じ!
 これまでもそうだったけれど、私の不眠ってこの有り余るHPのせいだったんだ。
 原因はわかったけれど、解決法はわからない。
 やっぱり頭を疲れさせるのが一番いいのか?
 だとしたらベッドの中にいて暇だから、と言って勉強させてもらおうかな。

「サリィ、おべんきょーしたい」
「なにをおっしゃっているのですか!? 熱が下がったばかりですよ!?」
「でもひまなの。えっと、それに……おうじさまの、こんにゃくしゃになったし……?」

 と、サリィを見上げながら言うとまるで電撃を受けたかのように後ずさる。
 な、なに? なんか変なこと言った?

「お嬢様……お嬢様は……もう、そこまでお考えで……!?」
「え? でも、おうじさまのこんにゃくしゃって、いっぱいおべんきょーするんでしょ?」

 自分が王子様のお嫁さんなんて務まるのかわからない。
 でも、グレンを独りぼっちにしておけなかった。
 グレンは過去の――前世の私。
 王様も王妃様もグレンが狙われているのを……なんとなく、知っている気がするんだ。
 グレンを見下ろす二人の眼差し、すごく冷たかった。
 前世の母と母の再婚相手みたいな。
 でも一国の国王と王妃様がなんで一人息子を見殺しにしようとするの?
 普通に考えてそんなことありえないよね?

「素晴らしいお考えです! お嬢様! ええ、ええ! その通りですわ! ですが、お勉強するにしてもやはり体調が万全でなければ。頭に入ってくるはずのものも入ってこなくなりますわ」
「う、うん。でも、ひまなの。だったら、なにかおはなしして」
「それならば構いませんよ」

 元気にはなっているんだよ。
 熱が下がったから余計。
 過保護すぎるのも困りものだなぁ。
 枕元にサリィが座って「どんなお話がいいでしょうか?」と聞いてくるので「おうじさまのこんにゃくしゃって、なにをおべんきょーしたりいいの?」と聞いてみる。
 今後の勉強の方針にするつもりだ。

「そうですね……お嬢様にはまだ早いかもしれませんが、王子妃というのはいずれ国母――王妃様になる存在。王を支える存在なのです。ですから、陛下の地盤となる、国内外のことを学ぶとよろしいかと。たとえば、国内外の貴族のこと。外交は基本的に王妃様や王子妃の仕事になりますね。他にも国内で国民に必要な支援を施したり、貴族の悩みを聞いて解決するなど王妃様にしかできないことは多岐に渡ります。覚えることもたくさんありますが、なにより必要なのは気品と知識、そして人との接し方。奥様を参考にして、しっかり覚えていきましょうね」
「みんなと友だちになるってこと?」
「まあさすがお嬢様! その通りです!」

 それが一番難しそうなんだけれど。