Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

GENESIS外郭

轟音。
崩壊。
爆炎。
戦場全体が、二人の戦いに巻き込まれていた。
レイが地面を蹴る。
「――ッ!」
一歩で数十メートル。
崩れ落ちる鉄骨を踏み台にし、一仁の懐へ飛び込む。
「速い!」
一仁が崩壊を放つ。

periculum(崩壊)

レイの足元から大地が消える。
しかしレイは空中で身体を捻り、落下する瓦礫を蹴ってさらに加速した。
ドゴォォォン!!
拳が一仁の腹部へ突き刺さる。
「がっ……!」
一仁が数十メートル吹き飛び、GENESIS外壁へ激突する。
壁面が崩れ落ちる。
しかし。
「まだまだだ。」
一仁は笑っていた。
身体を起こす。
「やっぱりお前との戦いは面白い。」
レイは無言。
視線だけは一仁から外さない。
その殺気は、一切揺らがなかった。
ソウヤの意識。
暗い精神世界。
ソウヤは、自分の身体を通して戦いを見ていた。
(レイ……。)
返事はない。
(一仁って……。)
(俺らのこと、何かを知ってるいのか。)
しばらく沈黙が続く。
ようやくレイが答えた。
「……今は聞くな。」
(でも。)
「生き残ったら話す。」
それ以上は語らなかった。
ソウヤは拳を握る。
(絶対、生き残れ。)
レイは小さく笑った。
「当たり前だ。」

千太たち
戦場から距離を取りながら、二人を見守る。
千太は未来を見続けていた。
しかし。
「……。」
見えない。
レイと一仁。
二人の未来だけが、激しく揺らいでいた。
マリアが尋ねる。
「どうです?」
「読めない。」
「能力でも?」
「未来が変わり続けてる。」
マダラが低く呟く。
「互角か。」
「いや。」
千太は首を振る。
「違う。」
「二人とも、まだ本気じゃない。」
全員が息を呑んだ。
「一仁。やはり、ヴァルカマンの悪魔と呼ばれるだけの強さだ...」
千太がボソッと呟いた。

東京湾
ハルシオン。
イーゼル。
二隻の巨大戦艦が海上を支配していた。
ベルソルトの指揮するイーゼルが前方で敵を迎撃する。
『左舷主砲、撃て!』
ズドォォォォン!!
砲撃が一直線にAz艦隊を貫いた。
ベルトが笑う。
「相変わらず景気がいい。」
フランは静かにレーダーを見つめている。
「……。」
「艦長?」
「敵じゃない。」
「え?」
「別の反応だ。」
レーダーには映らない。
それでもフランは感じていた。
構造物を支配する能力者だからこそ分かる。
空間そのものが僅かに歪んでいる。
「これは……。」

第七収容区画
結衣が最後の負傷者を治療し終える。
その場へ座り込んだ。
「はぁ……。」
イレイダが笑う。
「よく頑張った。」
「イレイダだって。」
「私はまだ動ける。」
「無理しない。」
「結衣に言われるとはな。」
二人が苦笑する。
その横でネリクマだけが立ち止まった。
「……。」
アリスが見る。
「また?」
「うん。」
ネリクマは空を見上げる。
「近づいてる。」
「何が?」
「分からない。」
「でも。」
「怖い。」
イレイダが驚く。
ネリクマが「怖い」と口にするのは珍しかった。

グランと間宮
間宮との戦闘。
間宮は血を流しながら立ち上がる。
「あなたでも感じるでしょう。」
グランは無言。
「世界の外側。」
「……。」
「何かがこちらを見ています。」
グランは静かに空を見た。
「なら。」
「来ればいい。」
間宮は笑う。
「あなたらしい。」

名取家 地下祭壇
石板の亀裂がさらに広がる。
惣一は眉一つ動かさない。
夢幻が呟く。
「封印が……。」
「違う。」
惣一が否定する。
「封印はまだある。」
「向こう側が近づいているだけだ。」
刹那が刀を握る。
「こちらへ来るのですか。」
「いずれ。」
「だが。」
「まだではない。」

異空間
七人は裂け目の前に立ち続けていた。
現世が見える。
GENESIS。
東京湾。
名取家。
全て。
ペルムが笑う。
「面白い時代だ。」
ゲヴォンは静かにレイを見つめている。
「……。」
ゼゥテルも同じ方向を見る。
「人格転移。」
ネフィが小さく呟く。
「珍しい器だ。」
マコンは穏やかに微笑む。
「まだ幼い。」
マオンが続ける。
「だが可能性はある。」
シェフィルは東京湾へ視線を向けた。
「破壊。」
「支配。」
「崩壊。」
「役者は揃っている。」
ゼゥテルは静かに目を閉じる。
「もうすぐ。」
その言葉と同時に。
異空間全体が大きく揺れた。
ゴォォォォ……
裂け目がさらに広がる。
現世との境界が、少しずつ薄くなっていく。
誰も慌てない。
ただ一人。
ペルムだけが口元を吊り上げた。
「……待ちきれんな。」
ゼゥテルが静かに言う。
「待て。」
「現世が我らを必要とした時。」
「その時、初めて降りる。」
七人は再び静寂へ戻る。

しかし。

裂け目から零れ落ちた七つの光が、ゆっくりと現世へ降り始めていた。
まだ誰も、その光の意味を知らない。

だがデウスだけは静かに目を閉じ、小さく呟く。

「……いよいよか。」

彼の視線は、異空間へ向けられていた。

第99話 完