世界中で風が止まった。
東京湾。
GENESIS。
名取家地下祭壇。
ハルシオン。
イーゼル。
誰もがその異変を感じていた。
しかし――
その原因を知る者は、まだ一人しかいない。
デウスだけだった。
異空間
現世とは重ならない場所。
時間も空間も意味を持たない、静寂だけが支配する世界。
どこまでも白く。
どこまでも黒い。
上下の感覚すら曖昧な空間。
そこには巨大な円卓が置かれていた。
七つの椅子。
その全てに人影が座っている。
誰一人として口を開かない。
沈黙。
それが何百年も続いていたかのような静けさ。
その時だった。
一人の男が静かに目を開く。
「…………。」
それだけで異空間全体が震えた。
隣に座る人物が口を開く。
「現世が騒がしい。」
別の人物が笑う。
「デウスか。」
「いや。」
「デウスだけじゃない。」
また別の人物。
「門が揺れ始めている。」
再び沈黙。
七人全員が、
まるで同じ景色を見ているように現世へ視線を向けていた。
そして。
一人が静かに呟く。
「……選ばれるか。」
誰が。
とは言わなかった。
GENESIS地下
ソウヤたちは最深部へ向かって走り続ける。
瓦礫を飛び越え、
崩壊した通路を駆け抜ける。
タジが端末を睨んだ。
「あと三百メートル!」
「地下エネルギーがさらに増えてる!」
千太が顔をしかめる。
「嫌な未来しか見えない。」
「見えるだけマシだ。」
マダラが前を向いたまま言う。
「進むぞ。」
その時。
ゴゴゴゴゴ……
天井が軋む。
崩壊。
「上!」
バスティーユが瓦礫を受け止める。
ドォン!!
巨大なコンクリート片を力任せに押し返した。
「急げ!」
全員が再び走り出す。
第七収容区画
結衣が最後の負傷者を治療し終える。
「これで最後……。」
その場へ座り込む。
イレイダが肩を貸した。
「もう限界だろ。」
「少しだけ。」
苦笑する結衣。
アリスも隣へ座る。
「今回は頑張りすぎ。」
「ありがと。」
その様子を見ていたネリクマ。
上の空だった見ていた。
「……近い。」
イレイダが振り返る。
「何が。」
「分からない。」
「でも。」
ネリクマが拳を握る。
「何かが来る。」
「こっちへ。」
東京湾
ハルシオン。
イーゼル。
二隻は並走を続ける。
ベルトが通信を開いた。
「ベルト。」
「聞こえるか。」
返答。
『こちらイーゼル。』
『全砲門展開済み。』
『護衛位置へ入ります。』
戦艦イーゼル。
ゆっくりとハルシオン前方へ出る。
「頼もしい。」
フランは短く頷いた。
「ベルソルト。」
通信越しに声を掛ける。
「前は任せる。」
『了解。』
『ハルシオンへは一発も通さない。』
その返答だけで十分だった。
二隻は完全な連携陣形を組む。
その瞬間。
レーダーが赤く染まった。
「敵!」
「Az残存部隊!」
海中から無数の兵器が浮上する。
だが。
ベルソルトは落ち着いていた。
『イーゼル。』
『全砲門開放。』
ズドォォォォォン!!
巨大な主砲が火を吹く。
先頭集団が一瞬で消し飛んだ。
ベルトが笑う。
「相変わらず派手だ。」
フランは敵を見たまま呟く。
「だが。」
「本命は別だ。」
グラン
間宮が笑う。
「見えていますか。」
グランは答えない。
視線は空。
「異空間。」
間宮がその言葉を口にした瞬間。
グランの目が鋭くなる。
「貴様。」
「知っているのか。」
間宮は肩を竦めた。
「研究者ですから。」
「世界の裏側くらいは。少々ですが。」
ドゴォォン!!
拳。
間宮が吹き飛ぶ。
「余計なことを喋るな。」
しかし。
間宮は笑っていた。
「彼らは。」
「もうすぐ動きますよ。」
名取家
祭壇がさらに強く輝く。
夢幻が呪詛を展開する。
刹那が刀を抜く。
惣一だけは動かない。
祭壇を見つめたまま呟く。
「来る。」
「惣一様。」
「現世へ干渉が始まった。」
「まだ門は開かない。」
「だが。」
「向こうは、こちらを見ている。」
その一言に、
刹那も夢幻も息を呑んだ。
異空間
七人は立ち上がらない。
誰も現世へ降りない。
まだ、その時ではない。
しかし。
円卓中央。
静かだった空間へ、
一筋の亀裂が走った。
パキッ……
誰も驚かない。
一人だけが口を開く。
「門が弱まっている。」
別の人物。
「デウスが抑えている。」
「長くは持たない。」
沈黙。
そして。
七人の中心に座る人物が、
初めて静かに言葉を発した。
「……もう少しだ。」
その一言だけで、
異空間全体に波紋が広がる。
誰も逆らわない。
誰も質問しない。
ただ静かに頷く。
彼らはまだ現世へは行かない。
だが。
全員が同じ方向を見ていた。
その視線の先には――
一之瀬ソウヤ。
そして、
グラン。
マラン。
さらに、
ネリクマとマラン。
七人はまだ何も語らない。
だが、
その視線だけが、
これから始まる戦いの幕開けを静かに告げていた。
第96話 完
東京湾。
GENESIS。
名取家地下祭壇。
ハルシオン。
イーゼル。
誰もがその異変を感じていた。
しかし――
その原因を知る者は、まだ一人しかいない。
デウスだけだった。
異空間
現世とは重ならない場所。
時間も空間も意味を持たない、静寂だけが支配する世界。
どこまでも白く。
どこまでも黒い。
上下の感覚すら曖昧な空間。
そこには巨大な円卓が置かれていた。
七つの椅子。
その全てに人影が座っている。
誰一人として口を開かない。
沈黙。
それが何百年も続いていたかのような静けさ。
その時だった。
一人の男が静かに目を開く。
「…………。」
それだけで異空間全体が震えた。
隣に座る人物が口を開く。
「現世が騒がしい。」
別の人物が笑う。
「デウスか。」
「いや。」
「デウスだけじゃない。」
また別の人物。
「門が揺れ始めている。」
再び沈黙。
七人全員が、
まるで同じ景色を見ているように現世へ視線を向けていた。
そして。
一人が静かに呟く。
「……選ばれるか。」
誰が。
とは言わなかった。
GENESIS地下
ソウヤたちは最深部へ向かって走り続ける。
瓦礫を飛び越え、
崩壊した通路を駆け抜ける。
タジが端末を睨んだ。
「あと三百メートル!」
「地下エネルギーがさらに増えてる!」
千太が顔をしかめる。
「嫌な未来しか見えない。」
「見えるだけマシだ。」
マダラが前を向いたまま言う。
「進むぞ。」
その時。
ゴゴゴゴゴ……
天井が軋む。
崩壊。
「上!」
バスティーユが瓦礫を受け止める。
ドォン!!
巨大なコンクリート片を力任せに押し返した。
「急げ!」
全員が再び走り出す。
第七収容区画
結衣が最後の負傷者を治療し終える。
「これで最後……。」
その場へ座り込む。
イレイダが肩を貸した。
「もう限界だろ。」
「少しだけ。」
苦笑する結衣。
アリスも隣へ座る。
「今回は頑張りすぎ。」
「ありがと。」
その様子を見ていたネリクマ。
上の空だった見ていた。
「……近い。」
イレイダが振り返る。
「何が。」
「分からない。」
「でも。」
ネリクマが拳を握る。
「何かが来る。」
「こっちへ。」
東京湾
ハルシオン。
イーゼル。
二隻は並走を続ける。
ベルトが通信を開いた。
「ベルト。」
「聞こえるか。」
返答。
『こちらイーゼル。』
『全砲門展開済み。』
『護衛位置へ入ります。』
戦艦イーゼル。
ゆっくりとハルシオン前方へ出る。
「頼もしい。」
フランは短く頷いた。
「ベルソルト。」
通信越しに声を掛ける。
「前は任せる。」
『了解。』
『ハルシオンへは一発も通さない。』
その返答だけで十分だった。
二隻は完全な連携陣形を組む。
その瞬間。
レーダーが赤く染まった。
「敵!」
「Az残存部隊!」
海中から無数の兵器が浮上する。
だが。
ベルソルトは落ち着いていた。
『イーゼル。』
『全砲門開放。』
ズドォォォォォン!!
巨大な主砲が火を吹く。
先頭集団が一瞬で消し飛んだ。
ベルトが笑う。
「相変わらず派手だ。」
フランは敵を見たまま呟く。
「だが。」
「本命は別だ。」
グラン
間宮が笑う。
「見えていますか。」
グランは答えない。
視線は空。
「異空間。」
間宮がその言葉を口にした瞬間。
グランの目が鋭くなる。
「貴様。」
「知っているのか。」
間宮は肩を竦めた。
「研究者ですから。」
「世界の裏側くらいは。少々ですが。」
ドゴォォン!!
拳。
間宮が吹き飛ぶ。
「余計なことを喋るな。」
しかし。
間宮は笑っていた。
「彼らは。」
「もうすぐ動きますよ。」
名取家
祭壇がさらに強く輝く。
夢幻が呪詛を展開する。
刹那が刀を抜く。
惣一だけは動かない。
祭壇を見つめたまま呟く。
「来る。」
「惣一様。」
「現世へ干渉が始まった。」
「まだ門は開かない。」
「だが。」
「向こうは、こちらを見ている。」
その一言に、
刹那も夢幻も息を呑んだ。
異空間
七人は立ち上がらない。
誰も現世へ降りない。
まだ、その時ではない。
しかし。
円卓中央。
静かだった空間へ、
一筋の亀裂が走った。
パキッ……
誰も驚かない。
一人だけが口を開く。
「門が弱まっている。」
別の人物。
「デウスが抑えている。」
「長くは持たない。」
沈黙。
そして。
七人の中心に座る人物が、
初めて静かに言葉を発した。
「……もう少しだ。」
その一言だけで、
異空間全体に波紋が広がる。
誰も逆らわない。
誰も質問しない。
ただ静かに頷く。
彼らはまだ現世へは行かない。
だが。
全員が同じ方向を見ていた。
その視線の先には――
一之瀬ソウヤ。
そして、
グラン。
マラン。
さらに、
ネリクマとマラン。
七人はまだ何も語らない。
だが、
その視線だけが、
これから始まる戦いの幕開けを静かに告げていた。
第96話 完
