GENESIS――中央制御区画
ドォォォォォォォン!!
地下最深部から伝わる振動が施設全体を揺らした。
照明が明滅する。
壁面の配線から火花が散り、各所で警報が鳴り響く。
《WARNING》
《UNKNOWN ENERGY DETECTED》
《LOWEST LAYER LOCK ERROR》
《PLEASE EVACUATE》
赤い文字がモニターを埋め尽くしていく。
「またか……!」
ソウヤが体勢を立て直す。
タジは必死に端末を叩いていた。
「違う!」
「今までのエネルギー反応じゃない!」
「解析できねぇ!」
「何だこれ!」
能力データベース。
Azの全記録。
どれとも一致しない。
数値そのものがエラーを吐き続けている。
千太が目を閉じる。
Foresighter――先見の明。
未来を読む。
その瞬間。
「ぐっ……!」
鼻から血が流れた。
「千太!」
マリアが支える。
千太は震えていた。
「未来が……。」
「見えない。」
「いや……。」
「見えてる。」
「でも全部壊れる。」
未来が無数に枝分かれする。
数億。
数兆。
そして全てが途中で途切れていた。
まるで、その先を何者かが見せないように。
デウスだけが静かに地下を見つめる。
「始まったか……。」
ソウヤが振り向く。
「デウス。」
「何が始まった。」
「説明しろ!」
デウスは目を閉じたまま答えた。
「世界はもう止まらない。」
GENESIS・第七収容区画
燕たちは救出した能力者を避難させていた。
結衣は最後の負傷者へ能力を使う。
Healer(回復)
傷口が塞がる。
しかし、その度に結衣自身の呼吸が荒くなる。
イレイダが肩へ手を置いた。
「休め。」
「まだ……。」
「まだ助けられる。」
イレイダは笑う。
「お前まで倒れてしまう。」
結衣も苦笑した。
「そうだったね。」
その時だった。
ネリクマが足を止める。
「……。」
イレイダが振り返る。
「どうした。」
ネリクマは沈黙する。
「呼ばれてる気がする。」
「誰に?」
「分からない。」
「でも……。」
小さく首を振る。
「嫌な感じじゃない。」
「なのに怖い。」
イレイダの表情も変わる。
今まで見たことがないネリクマだった。
GENESIS外郭
レイと一仁。
二人は再び激突する。
ドゴォォォォォン!!
衝撃で外壁が崩れる。
一仁が笑う。
「最高だ。」
「お前ほど戦える奴は久しぶりだ。」
レイは一歩も引かない。
「まだ終わらせる気はない。」
「なら。」
一仁が両腕を広げる。
「もっと壊そう。」
periculum(崩壊)
周囲数百メートルが一斉に崩れ始める。
レイが踏み込もうとした瞬間――
ドクン。
地下から鼓動が響いた。
レイの足が止まる。
一仁も止まる。
「……。」
「何だ?」
レイは上を見た。
その表情から余裕が消える。
東京湾
ハルシオン。
イーゼル。
二隻の巨大戦艦はGENESISへ向け進路を取る。
ベルトがレーダーを見る。
「敵がいない。」
副長も驚く。
「全兵力が地下へ?」
フランは頷く。
「そうだ。」
「Azも焦っている。」
ベルトが尋ねる。
「地下に何があるんのですか。」
フランは静かに答える。
「それを知るために行く。」
しかし、その直後。
艦橋全体が小さく揺れた。
ゴォォォォ……
ハルシオンだけではない。
イーゼルも。
海そのものが共鳴していた。
ベルトが目を見開く。
「海が……鳴いてる。」
フランは空を見上げた。
厚い雲。
何もない。
それでも。
「……来る。」
その一言だけを呟いた。
東京湾・別地点
グランは間宮を見下ろしていた。
Compulsory executor
未だ複数の命令は継続中。
頭痛は激しさを増している。
それでも。
グランは異変を感じていた。
「間宮。」
「はい?」
「貴様は知っているな。」
間宮は笑う。
「いえ。」
「嘘をつけ!」
「嫌です。」
ドゴォォォン!!
拳が炸裂する。
間宮が海面を転がる。
それでも笑みは消えない。
「あなたでも知らないことがある。」
「面白いでしょう?」
グランは返事をしなかった。
ただ空を見上げる。
雲がゆっくり渦を巻き始めていた。
名取家地下祭壇
巨大な石門の奥。
惣一。
刹那。
夢幻。
三人は最奥へ足を踏み入れる。
そこには何もなかった。
ただ一つ。
円形の祭壇だけ。
そして。
祭壇中央には古代文字。
惣一が静かに読む。
「……そういうことか。」
刹那が尋ねる。
「惣一様?」
「この祭壇は封印ではない。」
夢幻も気付く。
「門……ですか。」
惣一は頷いた。
「現世と、それ以外を繋ぐための。」
その瞬間。
祭壇全体が淡く発光する。
ゴォォォォォ……
夢幻が低く呟いた。
「誰かが……向こう側から触れた。」
三人の空気が変わる。
しかし。
何も現れない。
まだ。
その時ではない。
中央制御室
ソウヤがデウスへ歩み寄る。
「一つだけ教えろ。」
「この異様な力に関係する奴は敵か。」
デウスは静かに答えた。
「分からない。」
「……は?」
「敵にもなる。」
「味方にもなる。」
「全ては、その選択次第。」
ソウヤは納得できない。
「そんな答えがあるか!」
レイが口を開いた。
「ソウヤ。」
「今は地下へ向かえ。」
「答えはそこにあるかもしれない。」
ソウヤは拳を握る。
「ああ。」
「行くぞ!」
全員が地下最深部へ向かって走り出す。
その時だった。
世界中で同時に――
風が止まった。
海が静まり返る。
鳥が飛ぶことをやめる。
雲の流れが止まる。
誰にも理由は分からない。
ただ。
世界そのものが息を潜めた。
まるで。
何かを迎え入れる準備を始めるかのように。
そして。
デウスだけが誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。
「……まさか。」
その言葉は風に消えた。
しかし、現世のどこかではなく――
遥か異空間の彼方で、
静かに世界を見つめる存在たちがいた。
まだ誰も、その姿を知らない。
だが、その時は確実に近づいていた。
第95話 完
ドォォォォォォォン!!
地下最深部から伝わる振動が施設全体を揺らした。
照明が明滅する。
壁面の配線から火花が散り、各所で警報が鳴り響く。
《WARNING》
《UNKNOWN ENERGY DETECTED》
《LOWEST LAYER LOCK ERROR》
《PLEASE EVACUATE》
赤い文字がモニターを埋め尽くしていく。
「またか……!」
ソウヤが体勢を立て直す。
タジは必死に端末を叩いていた。
「違う!」
「今までのエネルギー反応じゃない!」
「解析できねぇ!」
「何だこれ!」
能力データベース。
Azの全記録。
どれとも一致しない。
数値そのものがエラーを吐き続けている。
千太が目を閉じる。
Foresighter――先見の明。
未来を読む。
その瞬間。
「ぐっ……!」
鼻から血が流れた。
「千太!」
マリアが支える。
千太は震えていた。
「未来が……。」
「見えない。」
「いや……。」
「見えてる。」
「でも全部壊れる。」
未来が無数に枝分かれする。
数億。
数兆。
そして全てが途中で途切れていた。
まるで、その先を何者かが見せないように。
デウスだけが静かに地下を見つめる。
「始まったか……。」
ソウヤが振り向く。
「デウス。」
「何が始まった。」
「説明しろ!」
デウスは目を閉じたまま答えた。
「世界はもう止まらない。」
GENESIS・第七収容区画
燕たちは救出した能力者を避難させていた。
結衣は最後の負傷者へ能力を使う。
Healer(回復)
傷口が塞がる。
しかし、その度に結衣自身の呼吸が荒くなる。
イレイダが肩へ手を置いた。
「休め。」
「まだ……。」
「まだ助けられる。」
イレイダは笑う。
「お前まで倒れてしまう。」
結衣も苦笑した。
「そうだったね。」
その時だった。
ネリクマが足を止める。
「……。」
イレイダが振り返る。
「どうした。」
ネリクマは沈黙する。
「呼ばれてる気がする。」
「誰に?」
「分からない。」
「でも……。」
小さく首を振る。
「嫌な感じじゃない。」
「なのに怖い。」
イレイダの表情も変わる。
今まで見たことがないネリクマだった。
GENESIS外郭
レイと一仁。
二人は再び激突する。
ドゴォォォォォン!!
衝撃で外壁が崩れる。
一仁が笑う。
「最高だ。」
「お前ほど戦える奴は久しぶりだ。」
レイは一歩も引かない。
「まだ終わらせる気はない。」
「なら。」
一仁が両腕を広げる。
「もっと壊そう。」
periculum(崩壊)
周囲数百メートルが一斉に崩れ始める。
レイが踏み込もうとした瞬間――
ドクン。
地下から鼓動が響いた。
レイの足が止まる。
一仁も止まる。
「……。」
「何だ?」
レイは上を見た。
その表情から余裕が消える。
東京湾
ハルシオン。
イーゼル。
二隻の巨大戦艦はGENESISへ向け進路を取る。
ベルトがレーダーを見る。
「敵がいない。」
副長も驚く。
「全兵力が地下へ?」
フランは頷く。
「そうだ。」
「Azも焦っている。」
ベルトが尋ねる。
「地下に何があるんのですか。」
フランは静かに答える。
「それを知るために行く。」
しかし、その直後。
艦橋全体が小さく揺れた。
ゴォォォォ……
ハルシオンだけではない。
イーゼルも。
海そのものが共鳴していた。
ベルトが目を見開く。
「海が……鳴いてる。」
フランは空を見上げた。
厚い雲。
何もない。
それでも。
「……来る。」
その一言だけを呟いた。
東京湾・別地点
グランは間宮を見下ろしていた。
Compulsory executor
未だ複数の命令は継続中。
頭痛は激しさを増している。
それでも。
グランは異変を感じていた。
「間宮。」
「はい?」
「貴様は知っているな。」
間宮は笑う。
「いえ。」
「嘘をつけ!」
「嫌です。」
ドゴォォォン!!
拳が炸裂する。
間宮が海面を転がる。
それでも笑みは消えない。
「あなたでも知らないことがある。」
「面白いでしょう?」
グランは返事をしなかった。
ただ空を見上げる。
雲がゆっくり渦を巻き始めていた。
名取家地下祭壇
巨大な石門の奥。
惣一。
刹那。
夢幻。
三人は最奥へ足を踏み入れる。
そこには何もなかった。
ただ一つ。
円形の祭壇だけ。
そして。
祭壇中央には古代文字。
惣一が静かに読む。
「……そういうことか。」
刹那が尋ねる。
「惣一様?」
「この祭壇は封印ではない。」
夢幻も気付く。
「門……ですか。」
惣一は頷いた。
「現世と、それ以外を繋ぐための。」
その瞬間。
祭壇全体が淡く発光する。
ゴォォォォォ……
夢幻が低く呟いた。
「誰かが……向こう側から触れた。」
三人の空気が変わる。
しかし。
何も現れない。
まだ。
その時ではない。
中央制御室
ソウヤがデウスへ歩み寄る。
「一つだけ教えろ。」
「この異様な力に関係する奴は敵か。」
デウスは静かに答えた。
「分からない。」
「……は?」
「敵にもなる。」
「味方にもなる。」
「全ては、その選択次第。」
ソウヤは納得できない。
「そんな答えがあるか!」
レイが口を開いた。
「ソウヤ。」
「今は地下へ向かえ。」
「答えはそこにあるかもしれない。」
ソウヤは拳を握る。
「ああ。」
「行くぞ!」
全員が地下最深部へ向かって走り出す。
その時だった。
世界中で同時に――
風が止まった。
海が静まり返る。
鳥が飛ぶことをやめる。
雲の流れが止まる。
誰にも理由は分からない。
ただ。
世界そのものが息を潜めた。
まるで。
何かを迎え入れる準備を始めるかのように。
そして。
デウスだけが誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。
「……まさか。」
その言葉は風に消えた。
しかし、現世のどこかではなく――
遥か異空間の彼方で、
静かに世界を見つめる存在たちがいた。
まだ誰も、その姿を知らない。
だが、その時は確実に近づいていた。
第95話 完
