Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

能研・応接室。


名取惣一、千藤院刹那、夜鳴鵺夢幻を迎え、能研の主要メンバーが集まっていた。


ソウヤ、結衣、タジ、柚季、そしてイレイダ。


重苦しい空気の中、最初に口を開いたのは惣一だった。

「まず訂正しておこう。」

「私は君たちを助けに来たわけではない。」

ソウヤたちは顔を見合わせる。

「では、どうして……?」

惣一は静かに答えた。

「確認するためだ。」

「君が、本当に"鍵"なのかを。」

タジが小声で呟く。

「最近『鍵』って言われすぎじゃない?」

柚季も苦笑する。

「確かにね。」

惣一はソウヤを見つめる。

「君の中には二つの人格だけではない。」

「もっと深い"何か"が眠っている。」

ソウヤは息を呑む。

(レイ以外にも……?)

イレイダが口を開く。

「そこまでだ。」

「今話すにはまだ早い。」

惣一は静かに頷いた。

「そうだな。」

「まだ時ではない。」



その頃――



能研の広い訓練場。



刹那が静かに木刀を構えていた。

「お姉様。」

「少し、お手合わせ願えますか。」

イレイダは帽子をかぶり直す。

「いい。」

「ただし本気は出すな。」

刹那は微笑む。

「もちろんです。」

その様子をソウヤたちは見学していた。

夢幻が説明する。

「刹那さんは全国剣道・柔道優勝。」

「能力がなくても日本屈指の実力者です。」

ソウヤは驚く。

「そんな人が……。」



開始の合図。



一瞬だった。

キィン!!

木刀同士がぶつかる。

火花が散る。

刹那の剣は鋭く、美しい。

無駄がない。

だが。

イレイダはさらにその上をいく。

最小限の動きで全てを受け流す。

「まだ甘い。」

一歩踏み込む。

刹那の木刀が弾き飛ばされた。

カラン…。

勝負あり。

わずか十数秒だった。

刹那は悔しそうに笑う。

「……まだ届きませんか。」

イレイダは木刀を返す。

「剣はいい。」

「だが、迷いがある。」

刹那は黙って頷いた。

ソウヤが夢幻に聞く。

「イレイダって、そんなに強いの?」

夢幻は真剣な表情になる。

「ええ。」

「名取家でも、イレイダさんと真正面から戦いたがる人はほとんどいません。」

その時だった。

惣一が静かに立ち上がる。

「なら。」

「私が相手をしよう。」

場の空気が変わる。

イレイダも初めて少しだけ表情を変えた。

「……本気か。」

「もちろん。」

惣一は一歩踏み出す。

その姿が、ふっと消えた。

「え?」

ソウヤたちが目を見開く。

次の瞬間。

惣一はイレイダの真後ろに立っていた。

「……速い。」

イレイダが振り返る。

しかし惣一はもうそこにはいない。

右。

左。

空中。

屋根の上。

まるで瞬間移動を繰り返しているようだった。

夢幻が説明する。

「神足通。」

「惣一さんの能力です。」

「距離という概念に縛られません。」

惣一は微笑む。

「イレイダ。」

「君なら、これをどう攻略する?」

イレイダは帽子のつばを押し上げる。

「簡単だ。」

「捕まえればいい。」

その瞬間、空間拘束が発動。

しかし惣一の姿は拘束範囲の外へ移動していた。

「……。」

イレイダは少しだけ笑う。

「面白ぇ。」

惣一も微笑む。

「君もね。」



二人が構えた、その時。

夢幻の携帯端末が鳴る。



表情が一変する。

「惣一さん!」

「マスタークラウンの動きです!」

惣一は端末を見る。

そこには一つの映像。

街中で能力を暴走させる能力者。

そして、その近くには――

ペインの姿が映っていた。

惣一は静かに振り返る。

「訓練は終わりだ。」

「実戦になる。」

ソウヤも立ち上がる。

「俺も行きます!」

イレイダはソウヤを見つめ、小さく頷いた。

「……行くぞ。」


能研の新たな任務が始まる。