Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

能研・正門前。

静寂。

イレイダとグランが向かい合う。

周囲ではペイン、ラルゴ、アランダ、ネネが距離を取り、その戦いを見守っていた。

ソウヤたちも固唾をのんで見つめる。

グランが静かに笑う。

「なるほど。」

「噂以上の実力だ。」

イレイダは愛刀の柄に手を添えたまま答える。

「世間話をしに来たのか?」

「違う。」

グランは一歩前へ出る。

「お前を試しに来た。」

タジが小声で言う。

「イレイダなら勝てるでござるよな……?」

柚季は首を横に振った。

「油断しちゃダメ。」

「あの人はマスタークラウンの統帥。」

「一番警戒すべき相手よ。」

グランが静かに右手を上げる。

「イレイダ。」

「一つだけ質問だ。」

「お前は仲間を守るためなら、自分を犠牲にできるか?」

イレイダは即答した。

「ああ。」

「当然だ。」

グランは笑う。

「そうか。」

その瞬間。

空気が変わった。

グランの瞳が妖しく輝く。

「なら――」

ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「イレイダ、お前は一分間、この場から一歩も動けない。」

世界が静まり返る。

ソウヤは何が起きたのか分からなかった。

しかし。

イレイダの足が地面に縫い付けられたように動かない。

「……。」

無言で力を入れる。

それでも動かない。

「なっ!?」

タジが目を見開く。

「本当に止まってるでござる!?」

柚季も驚きを隠せない。

「これが……強制執行-Compulsory executor-。」

グランは淡々と言う。

「俺が宣言したことは必ず実行される。」

「それが俺の能力。」

イレイダは小さく息を吐く。

「厄介だな。」

「だが――」

全身に力を込める。

地面に亀裂が走る。

バキバキバキッ!!

それでも一歩も動けない。

グランの額に汗が滲む。

(さすがだ。)

(能力で縛っていても、この力……。)

ペインが笑う。

「今だ!」

ラルゴが巨大な拳を振り上げる。

アランダの人形が一斉に襲い掛かる。

「イレイダ!」

結衣が叫ぶ。

ソウヤも飛び出そうとする。

しかし。

「待て!」

柚季が止める。

「あれはイレイダが何とかする!」

イレイダは動けない。

だが。

静かに愛刀を抜いた。

「動けねぇなら。」

「届く範囲で斬る。」

刀身が青白く輝く。

能力が収束していく。

「――斬光破断。カイザーインパルスッ!!」

刀が振り下ろされた。

次の瞬間。

巨大な斬撃が一直線に走る。

ズガァァァァン!!

大地が裂ける。

空間そのものが切り裂かれた。

ペインは咄嗟に跳び退き、ラルゴは腕で防御する。

アランダの人形は一瞬で消し飛んだ。

「うおおおっ!?」

タジが叫ぶ。

「動けなくても斬撃は飛ばせるのかよ!」

グランも少しだけ目を見開く。

「……予想以上だ。」

イレイダは静かに言う。

「足は止められても。」

「刀までは止められねぇ。」

グランは口元を上げた。

「面白い。」

「だが、俺の目的は戦うことじゃない。」

その視線がソウヤへ向く。

「一之瀬ソウヤ。」

「お前は、いずれ俺のもとへ来る。」

ソウヤは睨み返す。

「ふざけるな!」



その時。



ネネが胸を押さえた。

「グラン……。」

「もう限界……。」

グランは能力の反動でわずかにふらつく。

(精神が……削られる。)

それでも笑みを崩さない。



「今日はここまでだ。」

ペインが舌打ちする。

「もう終わりかよ。」

アランダは壊れた人形を抱え、ラルゴは無言で踵を返す。

ネネはアランダの手をぎゅっと握った。



グランは最後にイレイダを見る。

「また会おう。」

「次は、お前を止めるだけでは済まない。」



黒い霧が立ち込める。

次の瞬間、マスタークラウンの五人は姿を消した。

静寂が戻る。

イレイダの拘束も解ける。

刀を静かに納めると、ソウヤの方を向いた。

「……見ただろ。」

「これがマスタークラウンだ。」

ソウヤは拳を握り締める。

「ああ。」

「絶対に負けない。」

しかしイレイダは首を横に振る。

「今のお前じゃ勝てねぇ。」

「もっと強くなれ。」

その言葉は厳しかった。



だが、その瞳にはソウヤへの期待も宿っていた。