Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

暗黒の精神世界。

ソウヤとレイの拳が激突する。

ドォンッ!!

衝撃で黒い空間がひび割れる。

レイが笑う。

「悪くねぇ。」

「でも、その程度じゃ俺には勝てねぇ。」

一瞬でソウヤの懐へ潜り込む。

ドゴッ!!

腹部へ重い一撃。

ソウヤは吹き飛ばされる。

「ぐっ……!」

地面を転がる。

立ち上がろうとするが、身体が動かない。

レイはゆっくり歩いてくる。

「お前は守ることばっか考えてる。」

「だから弱い。」

ソウヤは息を整える。

「違う。」

「守ることは弱さじゃない。」

レイは鼻で笑う。

「甘いな。」

「敵はお前が待ってくれるほど優しくねぇ。」

現実世界。

ソウヤの身体から黒と青、二つのオーラが噴き出す。

床に亀裂が走る。

タジが後ずさる。

「マジで建物壊れるぞ!」

柚季は能力で周囲を浮遊しながら距離を取る。

「今までで一番危険だわ…。」

結衣はソウヤの手を握ったまま離れない。

「ソウヤ……。」

「帰ってきて。」

その声は精神世界にも微かに届いていた。

ソウヤが顔を上げる。

「……結衣?」

レイが眉をひそめる。

「チッ。」

「外の声か。」

ソウヤは立ち上がる。

「一人じゃない。」

「俺には仲間がいる。」

レイは少しだけ笑った。

「だから面白い。」

その時。

精神世界に一本の斬撃が走る。

ザァァン!!

黒い空間が裂ける。

ソウヤとレイが同時に振り向く。

裂け目の向こうに立っていたのは――

イレイダ。

「……来られないはずじゃ。」

ソウヤが驚く。

イレイダは静かに答える。

「普通ならな。」

「だが、お前の暴走で精神と現実の境界が薄くなった。」

「だから一瞬だけ入れた。」

レイは口元を吊り上げる。

「へぇ……。」

「面白い女だ。」

イレイダは愛刀を構える。

「勘違いするな。」

「俺はお前を倒しに来たんじゃねぇ。」

「ソウヤを連れ戻しに来ただけだ。」

レイは笑う。

「今はまだ引いてやる。」

「だが覚えとけ、ソウヤ。」

「俺は消えない。」

「お前が俺を必要とする時は必ず来る。」

黒い霧となってレイの姿は消えていく。

精神世界が崩壊を始める。

イレイダがソウヤへ手を伸ばす。

「行くぞ。」

ソウヤはその手を掴む。

目を開ける。

能研・訓練室。

結衣が涙ぐみながら笑う。

「……おかえり。」

ソウヤは小さく頷く。

「心配かけた。」

タジが大きく息を吐く。

「生きた心地しなかったぞ!」

柚季も安心したように微笑む。

「でも、一つ分かった。」

ソウヤが顔を上げる。

「レイは敵じゃない。」

「あなたの中にいる、もう一人の人格。」

「どう向き合うかは、あなた次第。」

イレイダは窓の外を見つめる。

「……時間がねぇ。」

タジが聞き返す。

「何が?」

イレイダは振り返らずに言う。

「近いうちに、本物の敵が動く。」

その言葉と同時に、遠く離れた場所で一人の男が静かに目を開く。

その男の周囲には、禍々しい能力の波動が渦巻いていた。

まだ名前は明かされない。



しかし、その存在だけで空気が震える。



「……そろそろ始めるか。」