Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

能研本部・訓練室。

訓練を終えたソウヤは、一人で椅子に座り込んでいた。

静かな部屋。

誰もいない。

右手を見つめる。

「……また、あの声だ。」

拳を握る。

「俺は……何なんだ。」

その頃。

結衣は廊下でイレイダを見つける。

「イレイダさん。」

イレイダは足を止める。

「どうした。」

「ソウヤのことです……。」

「様子がおかしいんです。」

イレイダは少しだけ目を閉じた。

「分かってる。」

「今はまだ、自分と戦ってる最中だ。」

「手を出すな。」

「……はい。」



訓練室。



ソウヤは再び能力を使おうとしていた。

「はぁっ!」

空間がわずかに歪む。

しかし──

(……弱い。)

頭の中に声が響く。

ソウヤが固まる。

(その程度か。)

「またお前か……。」

(俺を使え。)

「断る。」

(お前じゃ勝てない。)

(アリスにも。)

(誰にも。)

ソウヤは耳を塞ぐ。

「黙れ!」

その瞬間。

視界が真っ暗になる。

気が付くと、そこは何もない黒い空間だった。

床も空も存在しない。

ただ黒だけが広がる世界。

「……ここは?」

後ろから声がした。

「よう。」

ソウヤが振り返る。

そこに立っていたのは──

自分だった。

いや。

瞳は深紅。

笑みは冷たく、不敵。

制服も黒を基調としている。

「やっと会えたな。」

「俺は──レイ。」

「お前が……。」

「俺の中にいた……。」

レイは笑う。

「正解。」

「俺はずっとお前を見てた。」

「弱いよな、お前。」

ソウヤは睨む。

「俺は俺だ。」

「お前なんか必要ない。」

レイは肩をすくめる。

「強がるな。」

「俺がいなきゃ、お前は何も守れない。」

その頃、現実世界。

ソウヤは突然動かなくなる。

結衣が駆け寄る。

「ソウヤ!」

反応がない。

タジが焦る。

「おい!フリーズしてるぞ!」

柚季も表情を変える。

「精神世界に引き込まれてる……。」

イレイダだけは冷静だった。

「予想通りだ。」

タジが振り向く。

「助けないのかよ!」

「助けられねぇ。」

「これはあいつ自身が越える壁だ。」

「他人は入れない。」

精神世界。

レイが一歩近づく。

「俺を受け入れろ。」

「そうすれば、お前はもっと強くなれる。」

ソウヤは首を振る。

「力だけならいらない。」

「仲間を守れるなら、それで十分だ。」

レイは笑みを消した。

「……甘い。」

その瞬間。

黒い衝撃波が放たれる。

ソウヤは吹き飛ばされる。

現実世界。

ソウヤの体から黒いオーラが漏れ始める。

空間が震える。

タジが青ざめる。

「また暴走かよ……!」

結衣はソウヤの手を握る。

「お願い……戻ってきて。」

イレイダは一歩前へ出る。

静かに愛刀へ手を添える。

「……最悪の場合。」

「私が斬る。」

その一言で全員が息をのむ。

イレイダの表情に迷いはなかった。

精神世界。

ソウヤは立ち上がる。

傷だらけになりながらも、レイを見据える。

「俺は逃げない。」

「お前にも。」

「俺自身にも。」

レイは口元を吊り上げる。

「……そう来なくちゃ面白くねぇ。」

黒い空間が激しく揺れ始める。

二人は同時に地面を蹴る。

拳と拳が激突した瞬間──

つづく。