Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

東京湾――

GENESISが海へ沈み、白銀の結晶もその役目を終えた。
静寂が戻った海を、ハルシオンとイーゼルがゆっくりと航行している。
ソウヤは甲板から海を見つめていた。
「終わった……。」
その言葉に、イレイダが隣へ立つ。
「いや。」
「まだ終わってはいない。」
ソウヤも静かに頷いた。
「ああ。」
「これからだ。」

ハルシオン艦橋
フランは東京湾全域の戦況データを確認していた。
ベルトが報告する。
「GENESIS関連施設は全て機能停止。」
「Azの反応も完全に消失しました。」
「そうか。」
フランはモニターを閉じる。
「一つの時代が終わった。」

しかし、その瞬間。

艦橋内へ警報が鳴り響く。
ビーッ!ビーッ!
ベルトがレーダーを確認する。
「通信です!」
「発信元不明!」
モニターが切り替わる。

そこへ映し出されたのは――

グラン。

世界中の通信網が同時に乗っ取られる。

テレビ。
携帯電話。
街頭ビジョン。
病院。
警察。
軍。

すべての画面へ、グランの姿が映し出された。

「世界中の能力者へ告ぐ。」

低く響く声。
その表情には狂気と確信が宿っている。
「Azは滅びた。」
「だが。」
「我々の目的は終わらない。」
グランはゆっくりと立ち上がる。
「今日、この時刻をもって。」
「マスタークラウンは全面行動を開始する。」

場面は変わる。

巨大な地下要塞。

円卓を囲む五つの影。
グランを除く、マスタークラウンの幹部たちだった。
最初に笑ったのは――
ペイン。
金髪をかき上げ、不敵に笑う。
「また遊べるってこと?」
「退屈だったんだよねぇ。」
「I'll send it to the world in an instant.」
「一瞬で、あの世へ送ってやる。」

マランは壁にもたれたまま目を閉じている。
その表情に笑みはない。

巨体がゆっくりと立ち上がる。
ラルゴ。
二メートル五十センチを超える身体。
天井に届きそうなほどの巨体が低い声で呟く。
「また……始まる。」
「全部……壊す。」
その拳を握るだけで床が軋んだ。

その隣。

無数の人形を従えた女性。
アランダ。
妖艶な笑みを浮かべながら、人形の髪を優しく撫でる。
「ふふ……。」
「また新しいお友達が増えそうね。」
彼女の背後に立つ人形たちも、まるで生きているように首を傾げた。

部屋の隅。
小柄な少女が静かに座っている。
右目は眼帯で隠されていた。
ネネ。
「……。」
何も話さない。
ただ、隣に立つマランだけを見つめている。
マランは小さく息を吐いた。
「頼む。」
ネネは静かに頷く。
「……うん。」
眼帯の奥で能力が静かに発動する。

Mental operatore(精神操作)。

暴れようとするマランの力が少しずつ落ち着いていく。
グランはその様子を横目で見て笑った。

「準備は整ったな。」

能力研究所
その頃、ソウヤたちも帰還していた。
久しぶりに戻った拠点。
しかし、誰一人として安堵してはいない。
タジが世界中のニュースを映し出す。
「見てくれ。」
各地で能力犯罪が同時多発。
襲撃。
爆破。
暴動。
どの映像にも、一つの紋章が残されていた。
王冠の紋章。
イレイダが舌打ちする。
「マスタークラウンか。」
結衣は静かに拳を握る。
「もう始まってる……。」
ソウヤは画面を見つめたまま呟く。
「向こうから来るなら。」
「俺たちも迎え撃つ。」
その瞳には、迷いはなかった。
遠く離れた地下要塞。
グランは円卓へ手を置く。
「最初の標的を告げる。」
全員が静かに視線を向ける。
グランはゆっくりと笑った。

「――能力研究所。」
「能研を潰す。」

その宣言と同時に、マスタークラウンの幹部たちは一斉に立ち上がる。

こうして――
能研壊滅作戦が、静かに幕を開けた。

第126話 完