Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

東京湾――。

GENESISが海の底へ沈んでから数時間。
夜が明け始め、朝日が静かに海を照らしていた。
ハルシオンの甲板では、結衣が負傷者の治療を続けている。
「大丈夫?」
「少し痛むけど……平気です。」
燕が小さく笑う。
セツナも容体は安定し、ようやく落ち着きを取り戻していた。
タジは回収したGENESISのデータを解析している。
「……やっぱりだ。」
ソウヤが振り返る。
「何か分かったのか?」
「オールドマンの研究データはほとんど消去されてる。」
「でも一つだけ残ってた。」
タジはモニターを全員へ見せた。
そこに記されていた最後の文章。
『GENESIS計画は失敗ではない。次の時代への序章である。』
イレイダが眉をひそめる。
「序章……?」
「どういう意味だよ。」
タジは首を横に振った。
「そこまでは分からない。」
「でも、オールドマンは自分が負けることまで想定してた。」
その場に静寂が流れる。

同じ頃。

名取家
惣一、刹那、夢幻の三人は石板の前に立っていた。
石板は再び沈黙している。
惣一は静かに言う。
「役目を終えたようだな。」
夢幻が尋ねる。
「東京湾へ向かいますか?」
「ああ。」
「だが、もうGENESISとの戦いは終わっている。」
刹那が小さく呟く。
「次は……。」
惣一は振り返る。
「奴らだ。」
その一言で、二人の表情が引き締まった。

一方その頃。

世界のどこか。
長い通路の先にある円卓の間。
そこには、マスタークラウンの幹部たちが集結していた。
グランは円卓の中央へ立つ。
「オールドマンは死んだ。」
「Azも消えた。」
誰一人として動揺しない。
グランはゆっくりと辺りを見回す。
「これより。」
「マスタークラウン最終作戦を開始する。」
空気が変わる。
マランは腕を組んだまま黙って聞いている。
「世界中へ散っている能力者を狩る。」
「能研。」
「名取家。」
「NWO。」
「邪魔になる組織は全て消す。」
ペインが笑う。
「ようやく全面戦争か。」
グランはゆっくりと頷く。
「もう隠れる必要はない。」
「この世界は。」
「能力者によって支配される。」
その言葉に、円卓の全員が立ち上がる。

ハルシオン
突然、艦橋の警報が鳴り響いた。
ビーッ!ビーッ!
ベルトがレーダーを見る。
「艦長!」
「世界各地で能力反応が同時発生!」
フランの表情が変わる。
「同時にか!?」
「はい!」
「日本だけではありません!」
「ヨーロッパ、アメリカ、ロシア、中国……。」
「世界中です!」
タジも自分の端末を確認する。
「そんな馬鹿な……。」
「能力者同士の戦闘が一斉に始まってる!」
ソウヤは拳を握る。
「まさか……。」
その瞬間。
ハルシオンのメインモニターが突然切り替わる。
ノイズが走る。
ザザッ――。
映し出されたのは、一人の男。
グランだった。
『聞こえるか。』
世界中の通信網を乗っ取り、その声が響く。
『能力者たちよ。』
『今日より。』
『世界は新しい時代へ入る。』
『逃げても無駄だ。』
『我々、マスタークラウンが――』
グランの赤い瞳が画面越しに光る。

『世界を支配する。』

通信はそこで途切れた。
静まり返る艦橋。
誰も口を開けない。
イレイダが刀の柄を握る。
「……ふざけやがって。」
ソウヤは静かに前へ出た。
その瞳には迷いがなかった。
「行こう。」
「ここからが、本当の戦いだ。」
遠く離れた場所では、グランが静かに笑う。

「さあ始めよう。」

「最後の戦争を。」

こうして――
マスタークラウンとの全面戦争が幕を開けた。

第125話 完