Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

ゴゴゴゴゴゴゴ……。

GENESISは完全に崩壊を始めていた。
施設全体が海へ沈み込み、天井も床も次々と崩れ落ちる。
「急げ!」
イレイダが先頭に立ち、瓦礫を蹴り飛ばしながら道を切り開く。
その後ろでは結衣が負傷者を支え、燕はセツナの肩を貸して走る。
タジは最後まで端末を抱えたまま叫んだ。
「あと二分!」
「施設が完全に沈む!」
ソウヤは一瞬だけ崩れゆく地下を振り返る。
一仁との戦い。
レイとの共闘。
すべてが、あの場所へ残された。
「……行こう。」
「うん。」
結衣が頷く。
全員が最後の出口へ駆け出した。

東京湾
フランは静かに海面を見つめていた。
「浮上する。」
ベルソルト(ベルト)がレーダーを確認する。
「反応確認!」
「GENESIS出口から複数の生命反応!」
フランの口元がわずかに緩む。
「生きていたか。」

次の瞬間。

海面を突き破り、ソウヤたちが姿を現した。
イレイダを先頭に、結衣、燕、セツナ、タジたちが次々と脱出する。
ハルシオンから救助艇が発進する。
「急げ!」
ベルソルトの指示で、イーゼルからも救助部隊が展開された。
全員が無事に救助艇へ収容されていく。
ソウヤが最後に振り返ると――
ズォォォォォン!!
GENESISは完全に海へ沈み、その姿を消した。
東京湾には静かな波だけが残る。
救助艇がハルシオンへ到着する。
イレイダが甲板へ降り立つと、フランが静かに迎えた。
「ご苦労だった。」
「そちらも。」
二人は短く言葉を交わす。
ベルソルトも駆け寄る。
「無事で何よりです。」
ソウヤは苦笑した。
「何とかね。」
その瞳には、レイの面影がわずかに残っていた。

一方。

デウスは白銀の結晶を見つめていた。
その光は完全に消え、静かに海へ沈んでいく。
アメスが尋ねる。
「追いますか。」
デウスは首を横に振る。
「役目は終わった。」
「もう、あれは世界へ干渉しない。」
アメスもそれ以上は聞かなかった。
二人は静かに踵を返す。

その後方では、異空間から戦場を見届けていた覇者の集いが、一人、また一人と姿を消していく。

ゼゥテル。
シェフィル。
ネフィ。
マオン。
マコン。
ゲヴォン。
ペルム。

誰一人として最後まで口を開かなかった。
彼らは傍観者。
世界の均衡が保たれたことを確認すると、再び異空間へと帰還していった。

フラン一行やNWOたちも皆を見届けたあとに戦場を後にした。

数日後――

遠く離れた場所。
薄暗い巨大な空間。
円卓を囲む複数の人影。
その中央には、静かに座る男。
グラン。
マランも腕を組んだまま壁にもたれている。
重苦しい沈黙を破ったのはグランだった。
「……オールドマンは死んだ。」
誰も驚かない。
ペインが口を開く。
「Azも終わりか。」
アランダも口を開く。
「これで世界の均衡は崩れたわね。」
グランは静かに立ち上がる。
赤い瞳が鋭く光る。
「ここからは。」
「俺たちの時代だ。」
その一言で空気が一変する。
マランは黙ったまま目を閉じる。
心のどこかに、東京湾で見た光景が焼き付いて離れなかった。
ネリクマの姿。
ソウヤたちの戦い。
そして、遥か昔の"天より降りし光"。
何かが変わり始めている。
そう感じていた。
グランは静かに右手を握り締める。

「マスタークラウン。」
「総員招集。」
「能研。」
「名取家。」
「NWO。」
「そして……デウス。覇者の使徒。」
「まとめて潰す。」

その宣言とともに、円卓の空気は殺気へと変わる。

世界最大の組織、マスタークラウン。

その戦いが、静かに幕を開けようとしていた。

第124話 完