東京湾――
白銀の光は少しずつ収まり始めていた。
海面の中央。
崩壊したGENESISの残骸の上空に、一つの白い結晶が静かに浮かんでいる。
拳ほどの大きさ。
それだけだった。
だが、その小さな結晶から放たれる気配は、この場にいる誰よりも圧倒的だった。
デウスは目を細める。
「……。」
アメスも静かに見つめる。
「これが……。」
「能力の始まり。」
デウスは小さく首を振る。
「いや。」
「始まりを知る鍵だ。」
「能力そのものではない。」
グランが前へ歩く。
「そんな石ころ一つで世界が変わるってか?」
デウスは視線を向けない。
「触れるな。」
「理由は?」
「死ぬ。」
その一言だった。
グランは鼻で笑う。
「脅しか。」
しかし、マランだけは動かなかった。
結晶から放たれる異様な気配を感じ取っていた。
「……グラン。」
「近付くな。」
「珍しく忠告か。」
「今回は聞け。」
マランの声には、これまでにない緊張があった。
ハルシオン艦橋。
フランも結晶を見つめる。
「structūra imperiumでも……。」
能力を発動する。
しかし。
「……動かない。」
能力が一切作用しない。
ベルソルト(ベルト)が驚く。
「艦長ですら?」
「構造物じゃない。」
「いや。」
「構造そのものが違う。」
フランは静かに能力を解除した。
「初めて見る。」
その頃。
GENESIS内部
施設は限界を迎えていた。
「急げ!」
イレイダが最後尾で瓦礫を弾き飛ばす。
結衣たちは負傷者を支えながら出口を目指す。
一方。
レイと一仁。
二人だけは立ち止まっていた。
「まだ終わらねぇ!」
一仁が笑う。
レイは静かに拳を握る。
(ソウヤ。)
『……やるぞ。』
『これで決着だ。』
二人の意識が完全に重なる。
「来い!!」
一仁が飛び込む。
レイも真正面から迎え撃った。
ドォォォォォン!!
激突。
その衝撃で、最後の支柱が砕け散る。
東京湾
アメスは結晶を見つめたまま、小さく呟く。
「何も感じません。」
デウスは静かに答えた。
「それでいい。」
「感じられる者の方が危険だ。」
その瞬間だった。
ネリクマが突然膝をつく。
「……っ!」
「ネリクマ!」
マランも顔をしかめる。
「またか……。」
二人だけが、結晶に呼応するように身体を震わせていた。
デウスはその様子を見ても驚かなかった。
「やはり。」
アメスが振り返る。
「知っていたのですか。」
「予想していた。」
「……?」
「適合率が高い者ほど、結晶に反応する。」
ネリクマは苦しそうに胸を押さえる。
「何……これ。」
頭の中へ。
知らない景色が流れ込んでくる。
空一面を覆う眩い光。
世界中へ降り注ぐ"天の光"。
そして。
それを見上げる、遥か昔の人々。
断片的な光景。
誰の記憶なのかも分からない。
マランも同じ映像を見ていた。
「……昔の。」
「記憶?」
その時。
結晶が再び淡く輝く。
デウスの表情が変わる。
「まずい。」
アメスも構える。
「何が起きます!」
デウスは短く答えた。
「共鳴だ。」
「能力者を選び始める。」
東京湾にいた全能力者が、一斉に結晶へ視線を向けた。
静かだった結晶は、まるで意思を持つかのように淡く脈動を始める。
そして、その光はゆっくりと東京湾全体へ広がっていく――。
第121話 完
白銀の光は少しずつ収まり始めていた。
海面の中央。
崩壊したGENESISの残骸の上空に、一つの白い結晶が静かに浮かんでいる。
拳ほどの大きさ。
それだけだった。
だが、その小さな結晶から放たれる気配は、この場にいる誰よりも圧倒的だった。
デウスは目を細める。
「……。」
アメスも静かに見つめる。
「これが……。」
「能力の始まり。」
デウスは小さく首を振る。
「いや。」
「始まりを知る鍵だ。」
「能力そのものではない。」
グランが前へ歩く。
「そんな石ころ一つで世界が変わるってか?」
デウスは視線を向けない。
「触れるな。」
「理由は?」
「死ぬ。」
その一言だった。
グランは鼻で笑う。
「脅しか。」
しかし、マランだけは動かなかった。
結晶から放たれる異様な気配を感じ取っていた。
「……グラン。」
「近付くな。」
「珍しく忠告か。」
「今回は聞け。」
マランの声には、これまでにない緊張があった。
ハルシオン艦橋。
フランも結晶を見つめる。
「structūra imperiumでも……。」
能力を発動する。
しかし。
「……動かない。」
能力が一切作用しない。
ベルソルト(ベルト)が驚く。
「艦長ですら?」
「構造物じゃない。」
「いや。」
「構造そのものが違う。」
フランは静かに能力を解除した。
「初めて見る。」
その頃。
GENESIS内部
施設は限界を迎えていた。
「急げ!」
イレイダが最後尾で瓦礫を弾き飛ばす。
結衣たちは負傷者を支えながら出口を目指す。
一方。
レイと一仁。
二人だけは立ち止まっていた。
「まだ終わらねぇ!」
一仁が笑う。
レイは静かに拳を握る。
(ソウヤ。)
『……やるぞ。』
『これで決着だ。』
二人の意識が完全に重なる。
「来い!!」
一仁が飛び込む。
レイも真正面から迎え撃った。
ドォォォォォン!!
激突。
その衝撃で、最後の支柱が砕け散る。
東京湾
アメスは結晶を見つめたまま、小さく呟く。
「何も感じません。」
デウスは静かに答えた。
「それでいい。」
「感じられる者の方が危険だ。」
その瞬間だった。
ネリクマが突然膝をつく。
「……っ!」
「ネリクマ!」
マランも顔をしかめる。
「またか……。」
二人だけが、結晶に呼応するように身体を震わせていた。
デウスはその様子を見ても驚かなかった。
「やはり。」
アメスが振り返る。
「知っていたのですか。」
「予想していた。」
「……?」
「適合率が高い者ほど、結晶に反応する。」
ネリクマは苦しそうに胸を押さえる。
「何……これ。」
頭の中へ。
知らない景色が流れ込んでくる。
空一面を覆う眩い光。
世界中へ降り注ぐ"天の光"。
そして。
それを見上げる、遥か昔の人々。
断片的な光景。
誰の記憶なのかも分からない。
マランも同じ映像を見ていた。
「……昔の。」
「記憶?」
その時。
結晶が再び淡く輝く。
デウスの表情が変わる。
「まずい。」
アメスも構える。
「何が起きます!」
デウスは短く答えた。
「共鳴だ。」
「能力者を選び始める。」
東京湾にいた全能力者が、一斉に結晶へ視線を向けた。
静かだった結晶は、まるで意思を持つかのように淡く脈動を始める。
そして、その光はゆっくりと東京湾全体へ広がっていく――。
第121話 完
