東京湾――
黒煙がゆっくりと晴れていく。
マランのexcidium(壊滅)が直撃した海面は、大きく抉れ、巨大な渦を生み出していた。
誰もが息を呑む。
「……終わったか。」
グランが静かに呟く。
しかし、その瞬間だった。
コツ……。
コツ……。
煙の中から、一人の人影がゆっくりと姿を現す。
オールドマン。
全身は血に染まり、白衣は焼け焦げ、右腕は力なく垂れ下がっている。
明らかに致命傷。
それでも、その足は止まらない。
「……はは。」
「実に、素晴らしい。」
デウスが静かに構え直す。
「まだ立つか。」
「ええ。」
オールドマンは眼鏡を掛け直し、小さく笑った。
「研究者とは……。」
「最後まで結果を見届ける生き物ですから。」
グランの額には汗が流れていた。
Compulsory executor(強制執行)の反動が、精神を蝕み始めている。
それでも笑みは消えない。
「しぶてぇ野郎だ。」
「だったら。」
「もう一度宣言してやる。」
右手を突き出す。
「オールドマン。」
「動くな。」
能力が発動する。
オールドマンの身体が再び拘束される。
膝が震え、身体が軋む。
しかし――。
「……限界ですね。」
オールドマンは静かに笑った。
「あなたの精神も。間宮トオルとの戦いで体力を消耗してますからね。」
グランの頭へ激痛が走る。
「ぐっ……!」
マランが横目で見る。
「反動か。」
「まだ問題ない。」
そう言いながらも、グランの呼吸は荒くなっていた。
デウスが一歩前へ出る。
静かな足取り。
誰もが、その背中を見つめる。
「オールドマン。」
「最後に聞く。」
「白銀の核で何をするつもりだ。」
オールドマンは微笑む。
「知りたいですか。」
「能力の始まりを。」
「……。」
「人類は。」
「知らなくていい真実まで知ろうとしてしまう。」
デウスは答えない。
その沈黙が答えだった。
その頃
GENESIS内部。
「レイ!!」
一仁が咆哮する。
崩壊した床を蹴り、一気に距離を詰める。
レイも正面から迎え撃つ。
ドォォォォォン!!!
拳がぶつかる。
衝撃で周囲の壁が崩れ落ちる。
(ソウヤ。)
『分かってる。』
『もう決着をつける。』
レイの瞳が鋭く光る。
一仁も笑う。
「来い!!」
二人は再び激突した。
東京湾
アメスは静かに目を閉じていた。
「……。」
デウスが横目で見る。
「どうした。」
「嫌な予感がします。」
「地下ではありません。」
「オールドマンです。」
その言葉に、デウスは視線を向ける。
オールドマンは、拘束されたまま笑っていた。
「あなた方は。」
「私を止められても。」
「もう止まりません。」
「何?」
グランが眉をひそめる。
その瞬間。
ドクン――!!
白銀の核が、これまでで最大の鼓動を響かせた。
東京湾全体が大きく揺れる。
ハルシオン。
イーゼル。
護衛艦隊。
すべての艦が軋み始める。
ベルトが叫ぶ。
「総員、衝撃に備えろ!」
フランは白銀の光を見つめたまま、小さく呟く。
「……間に合わない。」
オールドマンは最後の力を振り絞り、デウスへ視線を向ける。
「覇者の使徒。」
「あなたなら。」
「この先を見届けられるでしょう。」
「……。」
「私は。」
「ここまでです。」
その言葉を最後に。
オールドマンは静かに目を閉じた。
立ったまま、ゆっくりと前へ倒れていく。
ドサッ……。
東京湾は静まり返る。
誰も口を開かない。
Azを築き上げ、GENESIS計画を完成目前まで導いた男――オールドマン。
その生涯は、ここで幕を閉じた。
しかし。
デウスは倒れたオールドマンではなく、GENESISの地下から放たれる白銀の光を見つめていた。
「終わっていない。」
その一言と同時に――
地下深部で、白銀の核の外殻が完全に砕け散った。
まるで、遥か昔から眠っていた何かが、ついに世界へ姿を現そうとしているかのように。
第119話完
黒煙がゆっくりと晴れていく。
マランのexcidium(壊滅)が直撃した海面は、大きく抉れ、巨大な渦を生み出していた。
誰もが息を呑む。
「……終わったか。」
グランが静かに呟く。
しかし、その瞬間だった。
コツ……。
コツ……。
煙の中から、一人の人影がゆっくりと姿を現す。
オールドマン。
全身は血に染まり、白衣は焼け焦げ、右腕は力なく垂れ下がっている。
明らかに致命傷。
それでも、その足は止まらない。
「……はは。」
「実に、素晴らしい。」
デウスが静かに構え直す。
「まだ立つか。」
「ええ。」
オールドマンは眼鏡を掛け直し、小さく笑った。
「研究者とは……。」
「最後まで結果を見届ける生き物ですから。」
グランの額には汗が流れていた。
Compulsory executor(強制執行)の反動が、精神を蝕み始めている。
それでも笑みは消えない。
「しぶてぇ野郎だ。」
「だったら。」
「もう一度宣言してやる。」
右手を突き出す。
「オールドマン。」
「動くな。」
能力が発動する。
オールドマンの身体が再び拘束される。
膝が震え、身体が軋む。
しかし――。
「……限界ですね。」
オールドマンは静かに笑った。
「あなたの精神も。間宮トオルとの戦いで体力を消耗してますからね。」
グランの頭へ激痛が走る。
「ぐっ……!」
マランが横目で見る。
「反動か。」
「まだ問題ない。」
そう言いながらも、グランの呼吸は荒くなっていた。
デウスが一歩前へ出る。
静かな足取り。
誰もが、その背中を見つめる。
「オールドマン。」
「最後に聞く。」
「白銀の核で何をするつもりだ。」
オールドマンは微笑む。
「知りたいですか。」
「能力の始まりを。」
「……。」
「人類は。」
「知らなくていい真実まで知ろうとしてしまう。」
デウスは答えない。
その沈黙が答えだった。
その頃
GENESIS内部。
「レイ!!」
一仁が咆哮する。
崩壊した床を蹴り、一気に距離を詰める。
レイも正面から迎え撃つ。
ドォォォォォン!!!
拳がぶつかる。
衝撃で周囲の壁が崩れ落ちる。
(ソウヤ。)
『分かってる。』
『もう決着をつける。』
レイの瞳が鋭く光る。
一仁も笑う。
「来い!!」
二人は再び激突した。
東京湾
アメスは静かに目を閉じていた。
「……。」
デウスが横目で見る。
「どうした。」
「嫌な予感がします。」
「地下ではありません。」
「オールドマンです。」
その言葉に、デウスは視線を向ける。
オールドマンは、拘束されたまま笑っていた。
「あなた方は。」
「私を止められても。」
「もう止まりません。」
「何?」
グランが眉をひそめる。
その瞬間。
ドクン――!!
白銀の核が、これまでで最大の鼓動を響かせた。
東京湾全体が大きく揺れる。
ハルシオン。
イーゼル。
護衛艦隊。
すべての艦が軋み始める。
ベルトが叫ぶ。
「総員、衝撃に備えろ!」
フランは白銀の光を見つめたまま、小さく呟く。
「……間に合わない。」
オールドマンは最後の力を振り絞り、デウスへ視線を向ける。
「覇者の使徒。」
「あなたなら。」
「この先を見届けられるでしょう。」
「……。」
「私は。」
「ここまでです。」
その言葉を最後に。
オールドマンは静かに目を閉じた。
立ったまま、ゆっくりと前へ倒れていく。
ドサッ……。
東京湾は静まり返る。
誰も口を開かない。
Azを築き上げ、GENESIS計画を完成目前まで導いた男――オールドマン。
その生涯は、ここで幕を閉じた。
しかし。
デウスは倒れたオールドマンではなく、GENESISの地下から放たれる白銀の光を見つめていた。
「終わっていない。」
その一言と同時に――
地下深部で、白銀の核の外殻が完全に砕け散った。
まるで、遥か昔から眠っていた何かが、ついに世界へ姿を現そうとしているかのように。
第119話完
