Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

ドクン――。
ドクン――。

GENESIS地下深部
白銀の核の鼓動は、東京湾全域へと響き渡っていた。
海面は激しく波打ち、夜空を貫く白銀の光はさらに強さを増していく。

しかし、その異変を前にしても――

東京湾では、五人の視線が一人へ集中していた。

オールドマン
「……やはり。」
「この程度では終わりませんか。」
オールドマンは口元の血を拭い、静かに笑う。
その姿を見たグランは、ゆっくりと前へ歩き出た。
「なら、遊びは終わりだ。」
狂気に満ちた笑み。
その瞳には、いつもの余裕ではなく、本気の殺意が宿っていた。
「オールドマン。」
「お前に宣言する。」
その場の空気が一変する。

Compulsory executor――強制執行。

グランが右手を突き出す。
「──膝をつけ。」
その一言だった。
ズンッ!!
世界そのものが命令を受けたかのように、オールドマンの両膝が地面へ叩きつけられる。
「……ッ!」
地面が砕ける。
オールドマンは歯を食いしばりながら立ち上がろうとする。
しかし身体が命令を拒めない。
「これが……強制執行。」
アメスが静かに呟く。
グランは笑う。
「俺の宣言は覆せねぇ。」
「宣言を撤回するか、俺が死ぬまでな。」
その額には、青筋が浮かび始めていた。
能力の反動が、すでに精神を蝕み始めている。
「今だ。」
デウスが静かに一歩踏み出す。
その瞳は、まるで世界そのものを見つめているかのようだった。
「……。」
誰も言葉を発しない。
デウスは右手をゆっくり掲げる。
そして。
ただ一言だけ告げた。

Conclusion the world order――世界結論。

「止まれ。」
その瞬間。
東京湾の時間が止まったかのような静寂が訪れる。
波が止まる。
風が止まる。
オールドマンの動きも完全に止まる。
「……!」
デウスは能力を完全には解放していない。
それでも、その一言だけで世界そのものが命令へ従った。
覇者の集いは、上空から静かにその様子を見守っている。
ゼゥテルが目を閉じる。
「まだ力を抑えているか。」
誰も動かない。
彼らは傍観者。
ただ、その結末を見届けるだけだった。
「終わりだ。」
マランが前へ出る。
その瞳から、いつもの冷静さが消えていた。
「もう二度と。」
「立ち上がるな。」
右手を前へ突き出す。
漆黒の力が腕へ集まり始める。
空気が軋む。
海面が沈む。
フランはハルシオン艦橋から、その異常な力を感じ取った。
「……まずい。」
ベルトが息を呑む。
「あれが。」
「マランの……。」
マランは静かに能力名を告げる。

excidium――壊滅。

黒い光が拳へ凝縮されていく。
「まだ抑えている。」
フランは小さく呟いた。
「本気ではない。」
それでも。
周囲数百メートルの海面が陥没し始める。
能力の余波だけで空間が震えていた。
マランは拳を握り締める。

「終わりだ。」

ドォォォォォォォン!!!
黒い衝撃が一直線に放たれる。
オールドマンへ直撃。
海面が真っ二つに裂ける。
巨大な爆発が東京湾を包み込んだ。

同じ頃。

GENESIS内部
ドクン――!!
白銀の核が、これまでで最も大きく脈打つ。
レイと一仁は同時に動きを止めた。
「……!」
「何だ、この気配。」
タジが端末を握る手を震わせる。
「球体の亀裂が……!」
「一気に広がってる!!」
イレイダが地下を見つめる。
「もう時間がねぇ……!」
レイは拳を握り直した。
(ソウヤ。)
『分かってる。』
『ここも終わらせるぞ。』
地下では決着の時が迫り、
東京湾では、世界最強クラスの能力者たちがオールドマンを追い詰める。

しかし――

爆煙の向こうから聞こえたのは、静かな笑い声だった。

「……見事です。」
「ですが。」
「まだ、私は終わりません。」

その声に、デウスの表情がわずかに険しくなる。

オールドマンはなお立っていた。

そして、その背後では白銀の光がさらに強く輝き始めていた。

第118話 完