Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

東京湾

崩壊したGENESISの地下深部から、低く重い振動が響き続ける。
ゴゴゴゴゴ……
誰もが戦いの手を止め、その音へ視線を向けた。
「……まだ何かあるのか。」
イレイダが刀を握り直す。
タジは急いで端末を操作する。
「おかしい……!」
「GENESISのメインシステムは停止してる!」
「なのに地下から別のエネルギー反応が……!」
「施設の動力じゃない!」
デウスだけは静かだった。
「やはり残っていたか。」
ソウヤの身体の主導権はレイにある。
レイが低く尋ねる。
「知っているのか。」
「……少しだけだ。」
「Azですら全容は知らない。」
オールドマンも地下を見つめている。
その表情には、初めて興味が浮かんでいた。
「やはり存在していたのですね。」
「"核"が。」

一方。

レイと一仁の戦いは止まらない。
ドォォン!!
拳と拳が激突する。
一仁が崩壊を放つ。

periculum(崩壊)

周囲の瓦礫が一斉に崩れ始める。
しかしレイは、その瓦礫を足場にして加速する。
「そんな動き……!」
ドゴォッ!!
腹部への拳。
一仁が吹き飛ぶ。
海面へ激突する直前、崩壊で衝撃を相殺する。
「ハァ……。」
一仁が笑う。
「やっぱり面白ぇ。」
レイは一切表情を変えない。
(ソウヤ。)
『聞こえてる。』
(まだ交代するな。)
『分かった。』
二人の意識は完全に重なっていた。

その頃。

ハルシオン艦橋。
ベルソルト(ベルト)がレーダーを見つめる。
『艦長!』
『地下反応が急激に増大しています!』
フランは静かにGENESISを見つめる。
「……構造が変わる。」
「地下そのものが動き始めている。」

その瞬間。

通信が入る。
『こちらイーゼルよりハルシオンへ。』
戦艦イーゼル。ベルトより。
『全艦、ハルシオン防衛陣形へ移行完了。』
『こちらでも地下反応を観測しました。』
フランが短く頷く。
「イーゼルは左舷を守れ。」
『了解。』
二隻の巨大戦艦が東京湾を挟み込むように展開する。
その周囲では残存艦隊も一斉に陣形を組み直した。

収容区画
燕はセツナを支えていた。
「歩けますか。」
「……うん。」
制御装置は壊れた。
しかし長期間の拘束で身体は衰弱している。
結衣がすぐに駆け寄る。
「任せて。」

Healer(回復)

温かな光がセツナを包む。
「ありがとう……。」
燕の目に安堵の涙が浮かぶ。
だがネリクマだけは地下を見ていた。
「……来る。」
イレイダが振り返る。
「何が。」
「分からない。」
「でも。」
「嫌な感じ。」

その隣。

マランも同じ方向を見つめていた。
「まただ……。」
デウスの忠告が頭をよぎる。
『互いの能力を正面からぶつけるな。』
その意味はまだ分からない。
しかし胸騒ぎだけが消えなかった。

オールドマンがゆっくり地下へ歩き始める。

「どこへ行く。」

グランが低く言う。

オールドマンは振り返らない。

「最後の確認です。」
「長年追い求めた答えが。」
「すぐそこにあります。」

アメスが一歩前へ出る。

「行かせません。」

その瞬間。

十メートル以内へオールドマンが踏み込んだ。
空気が震える。

The Last Judgementer(最終審判)

アメスの瞳が紅く染まる。
「あなたに審判を下します。」
世界が静まり返る。
デウスが静かに目を閉じた。
「始まるか……。」
オールドマンは微笑む。

「覇者の使徒。」
「その能力。」
「ぜひ研究させていただきたい。」

次の瞬間――

アメスの右手が静かに前へ伸びる。

東京湾に、新たな覇者同士の戦いの幕が上がろうとしていた。

第112話 完