東京湾
砕けたGENESISの残骸が海へ沈んでいく。
海上には、グランと間宮トオルだけが立っていた。
間宮の白衣は血で赤く染まり、呼吸も乱れている。
それでも彼は笑っていた。
「さすがですね……グラン。」
「あなたほど解析し甲斐のある能力者はいませんでした。」
グランは無言だった。
Compulsory executorによる反動。
精神は確実に蝕まれている。
それでも赤い瞳は、間宮だけを見据えていた。
「終わりだ。」
拳を握る。
間宮も能力を発動する。
Ability Research(能力研究)
「最後まで……研究させてもらいます。」
二人が同時に踏み込もうとした、その時だった。
コツ……
コツ……
コツ……
静かな足音が海上へ響く。
二人の間へ、一人の男が歩いてくる。
黒いローブ。
顔の半分を覆う深いフード。
「……。」
間宮の表情が固まった。
「あなたは……。」
グランも僅かに眉を動かす。
男は静かに口を開いた。
「久しぶりだな。」
「間宮トオル。」
「オールドマン……。」
その名を聞き、マランもペインも息を呑んだ。
イレイダたちも遠くから視線を向ける。
デウスだけは表情を変えない。
「やっと姿を現したか。」
オールドマンはグランを一瞥すると、すぐに間宮へ視線を戻した。
「よくここまで研究を進めた。」
「おかげでGENESISは完成した。」
間宮は苦笑する。
「完成……ですか。」
「ですが、あなたの計画は止められました。」
「本当に?」
オールドマンは静かに微笑む。
「お前はまだ分かっていない。」
「GENESISは、始まりに過ぎない。」
その言葉に、間宮の瞳が揺れる。
「……まさか。」
「私も。」
「実験の一部だったのですか。」
「その通り。」
冷酷な一言だった。
間宮は肩を震わせる。
「私はAzのために……。」
「能力者の未来のために……。」
「何百人もの能力者を研究してきた。」
「全て……。」
オールドマンは淡々と告げる。
「お前は、私の計画の駒。」
その瞬間。
間宮の顔から笑みが消えた。
「……そうですか。」
「なら。」
Ability Research。
周囲の海面へ無数の解析式が展開される。
「最後の研究対象は。」
「あなたです。」
ドォン!!
間宮が飛び出した。
能力解析。
戦闘解析。
身体能力の補正。
今まで培った全てを使い、オールドマンへ拳を放つ。
しかし。
オールドマンは避けない。
間宮の拳が届く寸前。
「遅い。」
その一言だけだった。
次の瞬間。
ズドォォォッ!!
間宮の身体が海面へ叩きつけられる。
「がはっ!」
誰も見えなかった。
何をされたのか。
どんな能力なのか。
一切分からない。
グランだけが目を細める。
「……。」
間宮は血を吐きながら立ち上がる。
「今の……は。」
「解析……できない。」
もう一度飛び込む。
今度は背後。
死角。
それでも。
「無意味だ。」
ドゴォォォン!!
間宮が再び吹き飛ぶ。
肋骨が砕ける音が響く。
マランが思わず呟く。
「何も見えなかった……。」
ペインも顔をしかめる。
「あいつ……能力を使ってんのか?」
デウスは静かに答えた。
「使っている。」
「だが、お前たちには理解できん。」
海上
間宮は膝をついた。
「……なるほど。」
「最後まで。」
「研究できませんでしたか。」
オールドマンは目の前まで歩み寄る。
「お前は優秀だった。」
「しかし。」
「研究者は、研究対象を超えることはできない。」
間宮は静かに笑った。
「一つだけ……。」
「聞かせてください。」
「あなたの目的は……何です。」
オールドマンは少しだけ空を見上げた。
「世界を。」
「完成させること。」
その答えに、間宮は目を閉じる。
「……そうですか。」
「なら。」
「私は。」
最後の力を振り絞り、グランを見る。
「グラン。」
「……。」
「あなたは。」
「絶対に……。」
言葉が途切れる。
力尽きた間宮の身体が、静かに海へ倒れた。
東京湾が静まり返る。
Az最高の研究者。
間宮トオル。
その生涯は、誰にも理解されないまま幕を閉じた。
オールドマンは振り返ることもなく歩き出す。
その背中へ、グランが低く告げた。
「逃がさん。」
Compulsory executor――。
能力を発動しようとした瞬間。
「やめておけ。」
デウスの声が響く。
グランが睨み返す。
「邪魔をするな。」
「今のお前が能力を重ねれば。」
デウスは静かに言い放つ。
「お前の精神が先に壊れる。」
グランは黙る。
事実だった。
だが、それでも拳を握る。
その時。
オールドマンがゆっくりと振り返った。
「安心してください。」
「私は逃げません。」
「ここからが。」
「本当の実験開始です。」
その言葉と共に、東京湾を包む空気が再び重く沈んでいく。
戦いは、新たな局面へと動き始めていた。
第110話 完
砕けたGENESISの残骸が海へ沈んでいく。
海上には、グランと間宮トオルだけが立っていた。
間宮の白衣は血で赤く染まり、呼吸も乱れている。
それでも彼は笑っていた。
「さすがですね……グラン。」
「あなたほど解析し甲斐のある能力者はいませんでした。」
グランは無言だった。
Compulsory executorによる反動。
精神は確実に蝕まれている。
それでも赤い瞳は、間宮だけを見据えていた。
「終わりだ。」
拳を握る。
間宮も能力を発動する。
Ability Research(能力研究)
「最後まで……研究させてもらいます。」
二人が同時に踏み込もうとした、その時だった。
コツ……
コツ……
コツ……
静かな足音が海上へ響く。
二人の間へ、一人の男が歩いてくる。
黒いローブ。
顔の半分を覆う深いフード。
「……。」
間宮の表情が固まった。
「あなたは……。」
グランも僅かに眉を動かす。
男は静かに口を開いた。
「久しぶりだな。」
「間宮トオル。」
「オールドマン……。」
その名を聞き、マランもペインも息を呑んだ。
イレイダたちも遠くから視線を向ける。
デウスだけは表情を変えない。
「やっと姿を現したか。」
オールドマンはグランを一瞥すると、すぐに間宮へ視線を戻した。
「よくここまで研究を進めた。」
「おかげでGENESISは完成した。」
間宮は苦笑する。
「完成……ですか。」
「ですが、あなたの計画は止められました。」
「本当に?」
オールドマンは静かに微笑む。
「お前はまだ分かっていない。」
「GENESISは、始まりに過ぎない。」
その言葉に、間宮の瞳が揺れる。
「……まさか。」
「私も。」
「実験の一部だったのですか。」
「その通り。」
冷酷な一言だった。
間宮は肩を震わせる。
「私はAzのために……。」
「能力者の未来のために……。」
「何百人もの能力者を研究してきた。」
「全て……。」
オールドマンは淡々と告げる。
「お前は、私の計画の駒。」
その瞬間。
間宮の顔から笑みが消えた。
「……そうですか。」
「なら。」
Ability Research。
周囲の海面へ無数の解析式が展開される。
「最後の研究対象は。」
「あなたです。」
ドォン!!
間宮が飛び出した。
能力解析。
戦闘解析。
身体能力の補正。
今まで培った全てを使い、オールドマンへ拳を放つ。
しかし。
オールドマンは避けない。
間宮の拳が届く寸前。
「遅い。」
その一言だけだった。
次の瞬間。
ズドォォォッ!!
間宮の身体が海面へ叩きつけられる。
「がはっ!」
誰も見えなかった。
何をされたのか。
どんな能力なのか。
一切分からない。
グランだけが目を細める。
「……。」
間宮は血を吐きながら立ち上がる。
「今の……は。」
「解析……できない。」
もう一度飛び込む。
今度は背後。
死角。
それでも。
「無意味だ。」
ドゴォォォン!!
間宮が再び吹き飛ぶ。
肋骨が砕ける音が響く。
マランが思わず呟く。
「何も見えなかった……。」
ペインも顔をしかめる。
「あいつ……能力を使ってんのか?」
デウスは静かに答えた。
「使っている。」
「だが、お前たちには理解できん。」
海上
間宮は膝をついた。
「……なるほど。」
「最後まで。」
「研究できませんでしたか。」
オールドマンは目の前まで歩み寄る。
「お前は優秀だった。」
「しかし。」
「研究者は、研究対象を超えることはできない。」
間宮は静かに笑った。
「一つだけ……。」
「聞かせてください。」
「あなたの目的は……何です。」
オールドマンは少しだけ空を見上げた。
「世界を。」
「完成させること。」
その答えに、間宮は目を閉じる。
「……そうですか。」
「なら。」
「私は。」
最後の力を振り絞り、グランを見る。
「グラン。」
「……。」
「あなたは。」
「絶対に……。」
言葉が途切れる。
力尽きた間宮の身体が、静かに海へ倒れた。
東京湾が静まり返る。
Az最高の研究者。
間宮トオル。
その生涯は、誰にも理解されないまま幕を閉じた。
オールドマンは振り返ることもなく歩き出す。
その背中へ、グランが低く告げた。
「逃がさん。」
Compulsory executor――。
能力を発動しようとした瞬間。
「やめておけ。」
デウスの声が響く。
グランが睨み返す。
「邪魔をするな。」
「今のお前が能力を重ねれば。」
デウスは静かに言い放つ。
「お前の精神が先に壊れる。」
グランは黙る。
事実だった。
だが、それでも拳を握る。
その時。
オールドマンがゆっくりと振り返った。
「安心してください。」
「私は逃げません。」
「ここからが。」
「本当の実験開始です。」
その言葉と共に、東京湾を包む空気が再び重く沈んでいく。
戦いは、新たな局面へと動き始めていた。
第110話 完
