ドォォォォォォォン――――!!
GENESISが最後の悲鳴を上げる。
巨大施設が音を立てながら崩壊し、黒煙が東京湾の空を覆い尽くしていく。
海面へ落下する無数の瓦礫。
その中心で――
コツ……
コツ……
コツ……
誰かが歩いていた。
崩れ落ちる鉄骨も、吹き荒れる爆風も、その人物を避けるように流れていく。
黒いローブ。
深く被られたフード。
その姿を見た瞬間、燕の瞳が大きく揺れた。
「……オールドマン。」
イレイダも即座に刀を抜く。
「生きてやがったか。」
北条セツナが震える声で呟いた。
「……あの人です。」
「私を……。」
「何度も実験台にした人。」
燕が姉を守るように一歩前へ出る。
「もう……。」
「二度と好きにはさせません。」
オールドマンは静かに笑った。
「北条燕。」
「実に興味深い成長です。」
「能力向上。」
「精神力。」
「家族への執着。」
「どれも素晴らしい研究材料でした。」
燕の怒りが爆発する。
「研究材料じゃありません!」
「姉さんは人です!!」
能力が発動する。
Ability improver(能力向上)
全身へ力が満ちる。
飛び出そうとした、その瞬間――
「待て。」
低い声。
デウスだった。
燕が足を止める。
「邪魔をしないでください!」
デウスは首を横に振る。
「違う。」
「今のお前では勝てん。」
オールドマンも微笑んだ。
「その通りです。」
「今のあなた程度では。」
「私には届かない。」
その言葉を聞いた瞬間――
ドンッ!!
海面が爆ぜる。
ソウヤの身体が、一仁を殴り飛ばしていた。
人格転移――transmigratio。
今、この身体を動かしているのはレイ。
一仁が海上を滑りながら笑う。
「よそ見とは余裕だな。」
ソウヤの身体が静かに構える。
(ソウヤ)
『レイ。』
(レイ)
『何だ。』
『オールドマンがいる。』
『分かっている。』
『あいつも気になるけど、一仁は放っておけない。』
レイは静かに答える。
『まず目の前の敵を倒す。』
『それが戦場だ。』
ソウヤは小さく息を吐いた。
『分かった。』
二人の意識は完全に一致する。
一仁が笑う。
「独り言か?」
返事はない。
次の瞬間。
レイが主導するソウヤの身体が消えた。
「!!」
一仁が振り返る。
遅い。
ドゴォォォォォン!!
拳が腹へ突き刺さる。
さらに。
膝。
回し蹴り。
肘。
怒涛の連撃。
一仁が吹き飛ばされる。
「ははっ!」
「やっぱ最高だ!」
一仁も崩壊能力を全開にする。
periculum(崩壊)
二人を中心に、大地が再び崩れ始めた。
一方。
覇者の集いは静かに戦場を見つめていた。
ゼゥテル。
シェフィル。
ネフィ。
マオン。
マコン。
ゲヴォン。
ペルム。
そしてデウス。
その隣に立つアメスが、オールドマンを見据える。
女神のような穏やかな表情。
しかし瞳だけは鋭かった。
「あなた。」
「裁かれる覚悟はありますか?」
オールドマンは小さく笑う。
「審判ですか。」
「面白い。」
「では。」
「あなたは私を有罪と判断しますか?」
アメスは一歩前へ出た。
「私は。」
「善悪では裁きません。」
静かに右手を掲げる。
「世界の秩序を乱す者を裁くだけです。」
空気が一変した。
デウスが横目でアメスを見る。
「まだだ。」
「……。」
アメスは能力を解かない。
しかし、その足は止めた。
「承知しました。」
デウスがゆっくりと前へ出る。
オールドマンと向かい合う。
「久しいな。」
オールドマンは肩をすくめる。
「何年ぶりでしょう。」
「覇者の使徒。」
デウスの目が細くなる。
「貴様の計画は終わりだ。」
「終わり?」
オールドマンは笑う。
「何を勘違いしているのです。」
その声には、これまでとは違う確信があった。
「GENESISは失敗ではありません。」
「ここまで来るための準備です。」
デウスの表情が僅かに変わる。
「……準備だと?」
オールドマンは崩壊したGENESISを振り返る。
「能力者。」
「覇者。」
「Az。」
「全てを一つの戦場へ集める。」
「それが私の目的でした。」
その言葉に、その場の全員が息を呑む。
グランも。
マランも。
イレイダも。
フランも。
ネリクマも。
そして、人格転移したソウヤの身体を操るレイも――。
オールドマンはゆっくりと両腕を広げる。
「さあ。」
「舞台は整いました。」
「ここからが、本当の始まりです。」
その瞬間。
東京湾全域に、新たな警報が鳴り響いた。
《WARNING――UNKNOWN DIMENSION REACTION》
誰も知らない反応。
しかしデウスだけは、その表示を見て静かに呟く。
「……遅かったか。」
その言葉の意味を知る者は、まだ誰もいなかった。
第109話 完
GENESISが最後の悲鳴を上げる。
巨大施設が音を立てながら崩壊し、黒煙が東京湾の空を覆い尽くしていく。
海面へ落下する無数の瓦礫。
その中心で――
コツ……
コツ……
コツ……
誰かが歩いていた。
崩れ落ちる鉄骨も、吹き荒れる爆風も、その人物を避けるように流れていく。
黒いローブ。
深く被られたフード。
その姿を見た瞬間、燕の瞳が大きく揺れた。
「……オールドマン。」
イレイダも即座に刀を抜く。
「生きてやがったか。」
北条セツナが震える声で呟いた。
「……あの人です。」
「私を……。」
「何度も実験台にした人。」
燕が姉を守るように一歩前へ出る。
「もう……。」
「二度と好きにはさせません。」
オールドマンは静かに笑った。
「北条燕。」
「実に興味深い成長です。」
「能力向上。」
「精神力。」
「家族への執着。」
「どれも素晴らしい研究材料でした。」
燕の怒りが爆発する。
「研究材料じゃありません!」
「姉さんは人です!!」
能力が発動する。
Ability improver(能力向上)
全身へ力が満ちる。
飛び出そうとした、その瞬間――
「待て。」
低い声。
デウスだった。
燕が足を止める。
「邪魔をしないでください!」
デウスは首を横に振る。
「違う。」
「今のお前では勝てん。」
オールドマンも微笑んだ。
「その通りです。」
「今のあなた程度では。」
「私には届かない。」
その言葉を聞いた瞬間――
ドンッ!!
海面が爆ぜる。
ソウヤの身体が、一仁を殴り飛ばしていた。
人格転移――transmigratio。
今、この身体を動かしているのはレイ。
一仁が海上を滑りながら笑う。
「よそ見とは余裕だな。」
ソウヤの身体が静かに構える。
(ソウヤ)
『レイ。』
(レイ)
『何だ。』
『オールドマンがいる。』
『分かっている。』
『あいつも気になるけど、一仁は放っておけない。』
レイは静かに答える。
『まず目の前の敵を倒す。』
『それが戦場だ。』
ソウヤは小さく息を吐いた。
『分かった。』
二人の意識は完全に一致する。
一仁が笑う。
「独り言か?」
返事はない。
次の瞬間。
レイが主導するソウヤの身体が消えた。
「!!」
一仁が振り返る。
遅い。
ドゴォォォォォン!!
拳が腹へ突き刺さる。
さらに。
膝。
回し蹴り。
肘。
怒涛の連撃。
一仁が吹き飛ばされる。
「ははっ!」
「やっぱ最高だ!」
一仁も崩壊能力を全開にする。
periculum(崩壊)
二人を中心に、大地が再び崩れ始めた。
一方。
覇者の集いは静かに戦場を見つめていた。
ゼゥテル。
シェフィル。
ネフィ。
マオン。
マコン。
ゲヴォン。
ペルム。
そしてデウス。
その隣に立つアメスが、オールドマンを見据える。
女神のような穏やかな表情。
しかし瞳だけは鋭かった。
「あなた。」
「裁かれる覚悟はありますか?」
オールドマンは小さく笑う。
「審判ですか。」
「面白い。」
「では。」
「あなたは私を有罪と判断しますか?」
アメスは一歩前へ出た。
「私は。」
「善悪では裁きません。」
静かに右手を掲げる。
「世界の秩序を乱す者を裁くだけです。」
空気が一変した。
デウスが横目でアメスを見る。
「まだだ。」
「……。」
アメスは能力を解かない。
しかし、その足は止めた。
「承知しました。」
デウスがゆっくりと前へ出る。
オールドマンと向かい合う。
「久しいな。」
オールドマンは肩をすくめる。
「何年ぶりでしょう。」
「覇者の使徒。」
デウスの目が細くなる。
「貴様の計画は終わりだ。」
「終わり?」
オールドマンは笑う。
「何を勘違いしているのです。」
その声には、これまでとは違う確信があった。
「GENESISは失敗ではありません。」
「ここまで来るための準備です。」
デウスの表情が僅かに変わる。
「……準備だと?」
オールドマンは崩壊したGENESISを振り返る。
「能力者。」
「覇者。」
「Az。」
「全てを一つの戦場へ集める。」
「それが私の目的でした。」
その言葉に、その場の全員が息を呑む。
グランも。
マランも。
イレイダも。
フランも。
ネリクマも。
そして、人格転移したソウヤの身体を操るレイも――。
オールドマンはゆっくりと両腕を広げる。
「さあ。」
「舞台は整いました。」
「ここからが、本当の始まりです。」
その瞬間。
東京湾全域に、新たな警報が鳴り響いた。
《WARNING――UNKNOWN DIMENSION REACTION》
誰も知らない反応。
しかしデウスだけは、その表示を見て静かに呟く。
「……遅かったか。」
その言葉の意味を知る者は、まだ誰もいなかった。
第109話 完
