Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

東京湾

海面へ降り立った七柱。
誰一人、能力を発動していない。
それでも、世界中の能力者たちは身動き一つ取れなかった。
まるで世界そのものが、彼らを迎え入れているようだった。
ゼゥテルが静かに周囲を見渡す。
その視線は、戦場全体を一瞬で見通す。

グラン。
レイ。
フラン。
イレイダ。
惣一。
マラン。
ネリクマ。
デウス。
そしてGENESIS。

全てを確認すると、小さく頷いた。
「……これが現代か。」
その一言だけで、デウスは静かに頭を下げる。
「はい。」
「時代は大きく動きました。」
ペルムは一歩前へ出る。
豪快に笑いながら一仁を見る。
「お前。」
一仁が笑い返す。
「俺か?」
「なかなか暴れるじゃねぇか。」
一仁は肩を回す。
「褒め言葉として受け取っとく。」
「ははは!」
ペルムは大きく笑う。
「面白ぇ人間だ!」
ゼゥテルが静かに言う。
「ペルム。」
「言葉には慎め。」
ペルムは肩を竦め、一歩下がった。
ネフィは静かにGENESISを見つめていた。
「あまりにも多くの命が削られました。」
その一言に、結衣は胸を締め付けられる。
収容されていた能力者たち。
助けられなかった者たち。
GENESISで命を落とした者たち。
ネフィは静かに目を閉じた。
「……眠りなさい。」
その言葉と共に、GENESIS全域を包んでいた重苦しい空気が、ほんの少しだけ和らいだ。
シェフィルは東京の街へ目を向ける。
「それでも人は前へ進む。」
マコンは優しく微笑む。
「だから私たちは見守ってきたのです。」
マオンも頷く。
「命は、何度倒れても立ち上がる。」

ハルシオン
ベルトが思わず息を吐く。
「何なんだ……。」
フランは七柱を見つめたまま答える。
「覇者の集い...」
「存在そのものが世界の理に近い。」
「だから能力を使わなくても、周囲へ影響を与える。」
ベルトは苦笑した。
「勝てる気がしませんね。」
「……戦う相手ではない。」
フランは短くそう答えた。

GENESIS外郭
一仁がレイを見つめる。
「続きはどうする?」
レイは拳を下ろしたまま答える。
「今は戦わない。」
「そうか。」
一仁も拳を下ろした。
「なら次は全力だ。」
レイは無言だった。
その視線は再びゲヴォンへ向く。
ゲヴォンもまたレイを見ている。
長い沈黙。
やがてゲヴォンが静かに口を開いた。
「……成長したな。」
その一言。
レイの瞳が僅かに揺れる。
ソウヤも内側で驚く。
(知り合いなのか……。)
レイは答えなかった。

名取家地下祭壇
惣一が静かに空を見上げる。
「始まりましたか。」
夢幻が尋ねる。
「惣一さん。」
「彼らは敵ですか。」
惣一は首を横へ振る。
「分からない。」
「ただ一つだけ確かなことがある。」
刹那が続ける。
「世界は今日から変わる。」
惣一は静かに頷いた。

東京湾
全員の視線がゼゥテルへ集まる。
ゼゥテルは一歩前へ出る。
穏やかな表情のまま、静かに語り始めた。
「現世の能力者たちよ。」
その声は大きくない。
しかし世界中へ届く。
「我らは敵ではない。」
「味方でもない。」
「ただ、見届ける者。」
全員が耳を傾ける。
「これより先。」
「お前たちは己の運命を選ぶことになる。」
「力に溺れる者。」
「力を守るために使う者。」
「そして――」
ゼゥテルの視線が、一人ずつ能力者たちを見渡していく。

グラン。
レイ。
惣一。
フラン。
イレイダ。
マラン。
ネリクマ。

静寂。

そして最後に。
「その結末を。」
「我ら覇者の集いが見届けよう。」

七柱は静かに現世へ降り立ったまま、誰一人動かない。
しかし、その宣言は能力者たち全員の心へ深く刻まれた。

世界は今、新たな時代へ足を踏み入れたのである。

第102話 完