Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

東京湾

空が鳴いた。
ゴォォォォォ……
それは雷ではない。
爆発でもない。
空間そのものが軋む音だった。
戦っていた全員が、ほぼ同時に空を見上げる。
レイと一仁。
激突寸前だった二人の拳が止まる。
「……。」
一仁が眉をひそめた。
「何だ?」
レイは何も答えない。
ただ空を見ていた。
ソウヤの意識の中でも、得体の知れない圧迫感が広がる。
(レイ……。)
「……来たか。」
レイの声は静かだった。
しかし、その表情からは余裕が消えていた。

グランと間宮
グランも動きを止める。
間宮も空を見る。
「始まりましたか。」
「……。」
グランは何も言わない。
ただ赤い片目で空を見据えていた。

戦艦ハルシオン
フランが艦橋中央で空を見上げる。
「空間が……。」
ベルトもモニターを見る。
「観測不能の重力反応!」
「違います!」
「空間そのものが裂けています!」
フランが静かに命じる。
「全艦。」
「戦闘停止。」
「え?」
「今は撃つな。」
その声には、今までになかった緊張があった。
戦艦イーゼル。
ベルソルトも砲撃を止めた。
「……。」
「艦長?」
「静かにしろ。」
巨大な戦艦の艦橋が静まり返る。

誰もが空だけを見ていた。

名取家 地下祭壇
惣一が静かに目を閉じる。
「来た。」
刹那も夢幻も息を呑む。
祭壇が共鳴している。
ドクン……
ドクン……
まるで心臓の鼓動のようだった。

GENESIS 内部
イレイダたちも立ち止まる。
ネリクマが空を見上げる。
「……。」
マランも同じ方向を見る。
二人だけが理解できない感覚に包まれていた。
デウスだけは静かに目を閉じる。
「ようやくか。」

その瞬間。

空が割れた。

バキィィィィィィン!!

青空に一本の亀裂。
その亀裂は一瞬で広がる。
まるで巨大なガラスが砕けるように。
誰も声を出せない。
そこは空ではなかった。
空の向こう側。
白とも黒ともつかない世界。

異空間。

その世界が現世へ姿を現した。
静寂。
風が止まる。
波が止まる。
誰も動かない。

そして――

異空間の縁から、一つの人影が現れた。
黒い外套。
ゆっくりと空中を歩く。
その後ろから。
二人。
三人。
四人。
五人。
六人。
七人。
七つの人影が現れた。
誰も慌てない。
誰も殺気を放たない。
ただ静かに現世を見下ろしている。
その姿は、人間というより神話そのものだった。
デウスがゆっくり片膝をつく。
それを見た間宮が目を見開く。
「まさか……。」
覇者の使徒であるデウスが。
誰かに敬意を示した。
その事実だけで十分だった。

異空間
七人の中央。
静かに立つ一人が口を開く。
「…………。」
その声は小さい。
しかし世界中へ響いた。
誰にも意味は分からない。
それでも全能力者の心臓が震えた。
デウスが静かに呟く。
「……お待ちしておりました。」
七人はゆっくりと一歩踏み出す。
異空間から現世へ。
まるで重力を無視するように。
空から静かに舞い降りていく。
その姿を見上げながら、
グランが初めて小さく笑った。
「面白い。」
レイも空を見つめる。
その瞳は、七人の中のある人物から離れない。
ゲヴォン。
再生の神格者。
ゲヴォンもまた、レイだけを静かに見つめ返していた。
何も語らない。
だが二人の間には、過去を知る者同士にしか分からない空気が流れていた。
そして。
ゼゥテルがゆっくりと現世へ降り立つ。
その足が東京湾の海面へ触れた瞬間。
波紋が世界中へ広がった。
誰一人、能力を使っていない。
ただ立っただけ。
それだけで世界が震えた。
ゼゥテルは静かに周囲を見渡す。

グラン。
レイ。
マラン。
ネリクマ。
フラン。
惣一。
イレイダ。

能力者たち全員へ視線を向ける。
そして、穏やかに告げた。

「……久しいな。」

その一言だけだった。
しかし、その言葉には何千年という時を越えた重みがあった。

こうして――
歴戦の能力者たち。
能力を授けた存在。
神覚者集団。

『覇者の集い』

七柱が、ついに現世へ姿を現した。

第100話 完