Psycer Brain ─ 神に抗え。その力で運命を変えろ。

夕方。

街の外れ。

古びた雑居ビルの前で、ソウヤたちは立ち止まる。

「……ここ?」

タジが疑うように言う。

「見た目はな」

柚季が軽く肩をすくめる。

「中は別物よ」

ソウヤは建物を見上げる。

(……知ってる)

来たことなんてないはずなのに。

妙な既視感。

「入るわよ」

地下に降り扉が開く。

中は——

白い廊下。

無機質な光。

整いすぎた空間。

「うおぉぉ!!」

タジがテンションを上げる。

「完全に研究施設じゃん!!」

「静かにして」

ソウヤは一歩踏み出す。

その瞬間。

“帰ってきたような感覚”。

(なんだよ、これ……)

「遅い」

不意に、声。

振り向く。

そこにいたのは——

淡い青の長髪。

静かな海のような色。

そして。

海軍帽。

制服は整っているが、どこか異質。

「あなたが一之瀬ソウヤ」

落ち着いた声。

「……誰だ」

「私は、イレイダ・レイスだ。少年よ..よろしく」

短く名乗る。

「ここに出入りしてるだけの人間」

淡々とした口調。

「管理者じゃない」

「でも」

一拍。

「中のことは全部知ってる」

タジが小声で言う。

「いやそれ実質ボスじゃね?」

「違う」

即答。

「私は関与しない」

「……は?」

「観測するだけ」

その言葉。

少しだけ空気が冷える。

柚季が腕を組む。

「相変わらずね」

結衣は少し安心したように言う。

「でも、イレイダがいると安定するから」

ソウヤはイレイダを見る。

(……なんだこいつ)

視線が合う。

一瞬だけ。

時間が止まったような感覚。

「……やっぱり」

イレイダが小さく呟く。

「反応してる」

「何がだよ」

「別に」

すぐに視線を外す。

「気にしなくていい」

絶対に“気にしろ”って言い方。

「案内する」

歩き出す。

廊下を進む。

モニター。

装置。

閉ざされた部屋。

「ここは何なんだ」

ソウヤが聞く。

「能力者が勝手に集まってる場所。我々は能力研究所と呼んでいる。通称:能研。」

「勝手に?」

「そう」

「誰が作ったかも、曖昧」

その言葉。

ソウヤの心臓が跳ねる。

(……なんだそれ)

「でも機能してる」

「だから使われてる」

合理的な答え。

でも。

どこかおかしい。

「次」

扉の前で止まる。

「訓練室」

扉が開く。

広い空間。

床に刻まれたライン。

“境界”。

「ここなら壊しても問題ない」

ソウヤの呼吸が少し重くなる。

「ソウヤ」

燕が言う。

「ここで制御を覚える」

「逃げ場はないわよ」

柚季。

「いや圧が強いって!」

タジ。

その中で。

イレイダだけが静かに立っている。

ソウヤを見ている。

じっと。

「……ねえ」

不意に言う。

「あなた」

一歩だけ近づく。

「ここ、知ってるでしょ」

心臓が止まりかける。

「……知らねえよ」

即答。

でも。

イレイダは少しだけ笑う。

「そう」

「ならいい」

完全に“分かってる顔”。

ソウヤは一歩前に出る。

「……やる」

覚悟。

その瞬間。

“ピシッ”

空間が軋む。

イレイダの目が細まる。

「やっぱり」



小さく呟く。



「面白い」