重い足取りで一条を連れて化学室に戻るも、頭には何も入って来ない。
チューしたかったなー……。
チャイムが鳴っても一条はまだノートを取っているが、一人で帰ってこい。
一条を残し、明翔、颯太、柳とさっさと化学室を出る。
角を曲がり少し歩いたところで、颯太が舌を出して頭をコツンとやる。
「あっ! 筆箱忘れてきちゃった! 取って来るねっ」
テテッと颯太が走っていく。
「かわいい……」
明翔と柳がほっこりしているが、わざとである。
颯太は強引に「かわいい」を演出するため半年に一回くらい、わざと忘れ物をする。
だが、今日の颯太は突然本気の走りを見せた。
「一条! 危ない!」
颯太の声と同時に、その姿は角の向こうに消えた。
「何かあったんだ!」
「優!」
角を曲がると、お相撲さんかくらい体の大きな男子が廊下をドスドス揺らしている。
「ごめん!」
おそらくこの男子が一条とぶつかりそうにでもなっていたのだろう。
男子は後ろを振り返りながら謝っていた。
一条はというと、さすが颯太。
小さいながらに一条の正面に壁となって守っている。
一条が呆然と颯太の頭をなでる。
「どうしてだろう。男に正面に立たれているのに、違和感がない……。むしろ、頭をなでたくなる」
……え?
教室では、赤い顔をした颯太と一条がぎこちなくも楽しそうに笑う。
「まさか、あの二人がカップリング成立するとはな」
「あれが優の理想のBLなのかな」
「かわいいショタの漢×男装の国宝級腐女子。そりゃ理想のBLに出会わなかったはずだ」
「良かったな、優」
「偉いじゃん。素直に祝福できるの」
頭をポンポンするとニッコリ笑う明翔がかわいい。
だから、わざとらしくため息をつく柳には知らん顔をする。
「佐藤くんと桃恋占いをやり直せなかったから……」
「高崎くんにはやっぱり、呂久村くんがお似合いだよね……」
同時にため息をついた黒岩くんと柳の目が合う。
「黒岩くん……。黒岩くんとはほとんど話したことはなかったけど、迷惑でなければ隣に座ってもいいかい?」
「イケメンメガネ王子が?! い、いいよ。どうぞ」
は?!
びっくりして思わず振り返る。
柳が黒岩くんの手を両手で握っている。
明翔の視界にも入ったようで、二人を指差した。
「あっちも成立したみたいだね」
「マジかよ。無理くりすぎるだろ。BL最終回か」
「深月、BL読むの?」
「読まない! ゆりの本チラチラ見たせいで気になってコソッと読んだりしてない!」
「そうなんだ。俺、優のせいで腐男子化しちゃってんだよね。興味あるなら好きなBL教えたかったんだけど」
「明翔のお気に入りなら、一個くらい聞いてみよっかな」
マジか。
共通の趣味ができそうかも。めっちゃうれしい。
ただ、それがBLってのはどうなんだ。
「はー。席替え嫌だなあ」
「マジで。これ以上大正解の席なんかねえもん」
明翔が言うから思わず同調したのに、明翔の目が輝く。
「俺と近いから? 俺と近いのが大正解なの?」
「え。あ、まあ」
うれしそう……。
明翔は素直にストレートに、自分の機嫌を取るのが上手い。
「席くらい離れても、別にどうってことねえけどな」
それに比べて、俺は素直じゃなさすぎる。
「また深月の近くになれますように!」
パンッと大きな音を立てて明翔が拝む。
隣の西郷と淀橋が頬杖をついている。
「いいなー、呂久村だけー」
「明翔、俺たちも願ってよ。四人で移動しよー」
「西郷と淀橋が近くになりますように!」
「俺らの話は適当にしか聞いてねえのな」
チャイムが鳴る。
工藤先生が教室に入ってくる。
あー……席替えが始まってしまう……。
「秋の体育大会に向けて、実行委員を決める! 席替えは延期だ!」
「よっしゃあ!」
自分でもびっくりしちゃうほどの大声。
更には立ち上がり、拳握ってガッツポーズまでしてる。
「あはは! すごい喜び方」
前の席から明翔が振り返って笑う。
カーッと顔に血流が巡ってくるのを感じる。
「違うから! また実行委員やれるのがうれしいだけ!」
「そんなわけある?」
「明翔もやるぞ! 春夏連覇だ!」
「お! いいね! 二年一組、優勝あるのみ!」
「おー!」
チョロくて助かる。
明翔の熱量につられて、クラス全体がすでに一致団結である。
秋の体育大会は春の体育祭よりも大規模に行われる。
初めて感じるワクワク感。
やっと俺の高校生活が始まった気がする。
チューしたかったなー……。
チャイムが鳴っても一条はまだノートを取っているが、一人で帰ってこい。
一条を残し、明翔、颯太、柳とさっさと化学室を出る。
角を曲がり少し歩いたところで、颯太が舌を出して頭をコツンとやる。
「あっ! 筆箱忘れてきちゃった! 取って来るねっ」
テテッと颯太が走っていく。
「かわいい……」
明翔と柳がほっこりしているが、わざとである。
颯太は強引に「かわいい」を演出するため半年に一回くらい、わざと忘れ物をする。
だが、今日の颯太は突然本気の走りを見せた。
「一条! 危ない!」
颯太の声と同時に、その姿は角の向こうに消えた。
「何かあったんだ!」
「優!」
角を曲がると、お相撲さんかくらい体の大きな男子が廊下をドスドス揺らしている。
「ごめん!」
おそらくこの男子が一条とぶつかりそうにでもなっていたのだろう。
男子は後ろを振り返りながら謝っていた。
一条はというと、さすが颯太。
小さいながらに一条の正面に壁となって守っている。
一条が呆然と颯太の頭をなでる。
「どうしてだろう。男に正面に立たれているのに、違和感がない……。むしろ、頭をなでたくなる」
……え?
教室では、赤い顔をした颯太と一条がぎこちなくも楽しそうに笑う。
「まさか、あの二人がカップリング成立するとはな」
「あれが優の理想のBLなのかな」
「かわいいショタの漢×男装の国宝級腐女子。そりゃ理想のBLに出会わなかったはずだ」
「良かったな、優」
「偉いじゃん。素直に祝福できるの」
頭をポンポンするとニッコリ笑う明翔がかわいい。
だから、わざとらしくため息をつく柳には知らん顔をする。
「佐藤くんと桃恋占いをやり直せなかったから……」
「高崎くんにはやっぱり、呂久村くんがお似合いだよね……」
同時にため息をついた黒岩くんと柳の目が合う。
「黒岩くん……。黒岩くんとはほとんど話したことはなかったけど、迷惑でなければ隣に座ってもいいかい?」
「イケメンメガネ王子が?! い、いいよ。どうぞ」
は?!
びっくりして思わず振り返る。
柳が黒岩くんの手を両手で握っている。
明翔の視界にも入ったようで、二人を指差した。
「あっちも成立したみたいだね」
「マジかよ。無理くりすぎるだろ。BL最終回か」
「深月、BL読むの?」
「読まない! ゆりの本チラチラ見たせいで気になってコソッと読んだりしてない!」
「そうなんだ。俺、優のせいで腐男子化しちゃってんだよね。興味あるなら好きなBL教えたかったんだけど」
「明翔のお気に入りなら、一個くらい聞いてみよっかな」
マジか。
共通の趣味ができそうかも。めっちゃうれしい。
ただ、それがBLってのはどうなんだ。
「はー。席替え嫌だなあ」
「マジで。これ以上大正解の席なんかねえもん」
明翔が言うから思わず同調したのに、明翔の目が輝く。
「俺と近いから? 俺と近いのが大正解なの?」
「え。あ、まあ」
うれしそう……。
明翔は素直にストレートに、自分の機嫌を取るのが上手い。
「席くらい離れても、別にどうってことねえけどな」
それに比べて、俺は素直じゃなさすぎる。
「また深月の近くになれますように!」
パンッと大きな音を立てて明翔が拝む。
隣の西郷と淀橋が頬杖をついている。
「いいなー、呂久村だけー」
「明翔、俺たちも願ってよ。四人で移動しよー」
「西郷と淀橋が近くになりますように!」
「俺らの話は適当にしか聞いてねえのな」
チャイムが鳴る。
工藤先生が教室に入ってくる。
あー……席替えが始まってしまう……。
「秋の体育大会に向けて、実行委員を決める! 席替えは延期だ!」
「よっしゃあ!」
自分でもびっくりしちゃうほどの大声。
更には立ち上がり、拳握ってガッツポーズまでしてる。
「あはは! すごい喜び方」
前の席から明翔が振り返って笑う。
カーッと顔に血流が巡ってくるのを感じる。
「違うから! また実行委員やれるのがうれしいだけ!」
「そんなわけある?」
「明翔もやるぞ! 春夏連覇だ!」
「お! いいね! 二年一組、優勝あるのみ!」
「おー!」
チョロくて助かる。
明翔の熱量につられて、クラス全体がすでに一致団結である。
秋の体育大会は春の体育祭よりも大規模に行われる。
初めて感じるワクワク感。
やっと俺の高校生活が始まった気がする。

