「気をつけるっつったって限界がある。何かあってからじゃ遅い。お前に危険が迫った時、泉と瀬川じゃ守りきれない」
「じゃああたしが強くなる。筋トレとか、護身術習いに行く」
「んなことしたって、お前は女だ。気休めにしかならないぞ」
「気が休むならいいじゃん」
「仁愛、これは真剣な——」
「あたしはっ!」仁愛は声を張り上げ、地べたに拳を打ちつけた。
「ずっと消えたかった。死んでないから仕方なく生きてた。ここであんたとっ、みんなと出会ったから、生きていきたいと思うようになったんだよ!」
直巳がギョッとした顔で固まる。仁愛は涙が溢れないように奥歯を噛み締めた。
「に、仁愛……」
「『明るい未来』って何? ここが暗がりみたいに言わないで! あたしにとってはここが一番明るい場所なの!」
「わ、わかったから、泣くな——」
「泣いてない!」
仁愛が叫ぶと同時に、その瞳からポロッと涙が一粒落ちた。直巳がオロオロと両手を彷徨わせ、ズボンの太腿のところのポケットに手を入れる。何も持たずに出してまたオロオロ。
ハンカチは一枚しか持っていないのだろう。その一枚は仁愛の部屋にある。
直巳は困り果てた様子でキョロキョロと周囲を見回し、仁愛の涙を親指の腹でそっと拭った。「でもなぁ」と弱り声で、
「お前がここで暴漢にでも遭ったらと思うと、俺は死んでも死にきれない」
「じゃあ死ななきゃいいじゃん! 『今』まで生きればいいじゃん!」
「んな無茶な……」
「何言われたってあたしはここに来るから! 泉さんと瀬川さんに会って、ここであんたの思い出話をする! 止めたかったら力ずくで止めて!」
「できるならしたいが、俺は……」
涙がボロボロと溢れ出す。仁愛はそれを両手で拭いながら思う。
どうして自分はこんなことを言っているのだろう。ちゃんと笑顔で、『いい子』で彼を送り出そうと思っていたのに。——衝動に身を任せる自分を、冷静な自分が嘲笑う。
「なんっ、あたしっ……こんなこと……」
俯いたところで、ふわっと温かなものに包み込まれた。直巳に抱きしめられていて、背中を大きな手のひらがそっと撫でる。
「泣かないでくれ。お前が泣いてると思ったら、やっぱり、死にきれない」
「じゃああたしが強くなる。筋トレとか、護身術習いに行く」
「んなことしたって、お前は女だ。気休めにしかならないぞ」
「気が休むならいいじゃん」
「仁愛、これは真剣な——」
「あたしはっ!」仁愛は声を張り上げ、地べたに拳を打ちつけた。
「ずっと消えたかった。死んでないから仕方なく生きてた。ここであんたとっ、みんなと出会ったから、生きていきたいと思うようになったんだよ!」
直巳がギョッとした顔で固まる。仁愛は涙が溢れないように奥歯を噛み締めた。
「に、仁愛……」
「『明るい未来』って何? ここが暗がりみたいに言わないで! あたしにとってはここが一番明るい場所なの!」
「わ、わかったから、泣くな——」
「泣いてない!」
仁愛が叫ぶと同時に、その瞳からポロッと涙が一粒落ちた。直巳がオロオロと両手を彷徨わせ、ズボンの太腿のところのポケットに手を入れる。何も持たずに出してまたオロオロ。
ハンカチは一枚しか持っていないのだろう。その一枚は仁愛の部屋にある。
直巳は困り果てた様子でキョロキョロと周囲を見回し、仁愛の涙を親指の腹でそっと拭った。「でもなぁ」と弱り声で、
「お前がここで暴漢にでも遭ったらと思うと、俺は死んでも死にきれない」
「じゃあ死ななきゃいいじゃん! 『今』まで生きればいいじゃん!」
「んな無茶な……」
「何言われたってあたしはここに来るから! 泉さんと瀬川さんに会って、ここであんたの思い出話をする! 止めたかったら力ずくで止めて!」
「できるならしたいが、俺は……」
涙がボロボロと溢れ出す。仁愛はそれを両手で拭いながら思う。
どうして自分はこんなことを言っているのだろう。ちゃんと笑顔で、『いい子』で彼を送り出そうと思っていたのに。——衝動に身を任せる自分を、冷静な自分が嘲笑う。
「なんっ、あたしっ……こんなこと……」
俯いたところで、ふわっと温かなものに包み込まれた。直巳に抱きしめられていて、背中を大きな手のひらがそっと撫でる。
「泣かないでくれ。お前が泣いてると思ったら、やっぱり、死にきれない」
